第6話 ユリヤにお願い

 オリ婆さんの屋台の上で積み上げられた様々な樹の実を見て回る。

 

 「まぁオリバさんあんたの所にはこんなちっこいお客がいるのかい」

 

 「ええこの間冒険者と来て、皆で買い物して帰ったんだけどね、又来てくれたのさ」

 

 「妖精って狂暴だって言うじゃない、噛み付いたりしないの」

 

 失礼な婆だね、汚い人族に噛み付いたりしないよ。

 噛み付くならクリーンを掛けてからだけど、牙が無いから歯が立たないかもね。

 それに俺は妖精族で在って妖精じゃねえぞ!

 失礼なな婆だと思っていたらいきなり人を猫の子を掴む様に襟首を掴みに来た。

 掌にきつい雷撃お一発撃つ。

 

 「何すんだいこのちびは」

 

 「あんた犬や猫の子じゃあるまいし、いきなり掴みに行ったらやり返されて当たり前だろ」

 

 「失礼なちびだね全く」

 

 失礼なのはお前だぞ糞婆が、一発で許してやってるんだ消えろ!

 掌に雷撃を乗せて火花を散らすと慌てて後ろに下がる。

 

 「余計な事をするからあんた嫌われたね。この子達も私等と話が通じるんだよ。一度嫌われ攻撃されたら目印が付くから、あんた妖精族に出会ったら気をつけな」

 

 「嫌なちびだね」

 

 「商売の邪魔だからあっちへいっとくれ」

 

 「ふんこんな店二度と買わないからね」

 

 「はいはいそうしておくれ」

 

 《オリ婆さん御免よ》

 

 《気にしなさんな、性格の悪い他人の悪口ばかり言う人だから来なくなれば嬉しいだけさ》

 

 《そうなの、人族って面倒なのね。後何か未だ買ってない実はあるかな》

 

 《この間お嬢ちゃんが色々買っていったからねぇ。そうだあたしの知り合いがこの先で果物を売っているからそこにお行きよ》

 

 《そこ話できる?》

 

 《そうだった、一緒に行ってあげるよ。着いておいで》

 

 《うん、ありがとね》


 「サンニャさん売れてるかい」

 

 「あらオリバ姉さんどうしたの」

 

 「この子がね果物を探しているんだけど家のはあらかた売ったからさ、あんたの所に連れて来たの。ちょっとこの子が額に手を当てるからじっとしてな」

 

 《聞こえる、おれファル。オリ婆さんの友達だよ。人族の珍しい草木の実を探してるの》

 

 「ありゃー凄いねこの子」

 

 「サンニャ頭の中で考えて話かけるんだよ」

 

 「へえーそれで頭の中に声が響くんだね」

 

 《口で言ってもわかんないよ。頭の中で言ってよ》

 

 《えと・・・聞こえるかな》

 

 《そそ聞こえるよ。オリ婆さん有り難ね、又買いに行くからね》

 

 《おお待ってるよ。サンニャまたね》

 

 《オリ婆ちゃん人族同士は口で言わなくっちゃ解んないよ》

 

 「おっとそうだったね。サンニャまたね」

 

 《えとーファルは何が欲しいんだい》

 

 《オリ婆さんの所は仲間が一通り買ったの。ヘニ姉さんの所ではビンワーを買ったよ》

 

 《それじゃウリミーなんてどうかな、一つ500ダーラだけどお金持ってる?》

 

 《大丈夫だよ。はい鉄貨5枚だね。これ小さく切って貰えるかな》

 

 皿に小さく切ってくれたのをかぶりつく。

 

 《うまーってこれ真桑瓜じゃん》

 

 《ウリミー気に入ったかね》

 

 《うん、後6個頂戴。えーと銅貨3枚ね》

 

 《その黄色や緑で曲がったの何かな》

 

 《これはバナーニナってね黄色いのは甘くて美味しいよ。緑色のは焼かなくっちゃ食べられないね。焼くとホクホクした甘さがあるんだよ》

 

 《黄色いのを一つ頂戴、切ってね》

 

 《はいよ黄色いのは一本400ダーラね。緑のは300ダーラだよ》

 

 《はい400ダーラと、んーングングちょっと固いけどさっぱりした甘さがあるね。バナーニナ10本欲しい。えっと4000ダーラだから銅貨4枚ね》

 

 《有り難うね。でもみんな持って帰れるのかい》

 

 《大丈夫だよ。俺達空間収納持ってるからね》

 

 《サンニャ姉有り難うな、又来るからね》

 

 《ファル気をつけて帰るんだよ》

 

 《はーいさよなら》

 

 夕暮れまでホテルでユリヤを待たせて貰うかな。

 

 《ミャル、マリューサママ、ユリヤが帰って来るまで待たせてよ》

 

 《ファルお帰り》

 《あら早かったねファルちゃん》

 

 《はいお土産だよ》

 

 《あらウリミーね、良く熟れて美味しそうだこと》

 

 《此処でユリヤの帰りを待たせて貰って良いかな》

 

 《良いわよユリヤの部屋で待ってれば》

 

 《んあ天井の梁を借りるね》

 

 《んなとこどうするの、あれまぁあんた器用ね。それに用意も良いのね》

 

 《俺達は皆自分のハンモックは持ってるよ。旅をするときや木陰で昼寝するときの為にね》

 

 《へぇー妖精ってそうなの》

 

 《ミャルにも言ったけど俺達は妖精族なの、妖精ってのは別に居るんだよ。俺達よりもっとちっこいの》

 

 《ねっファル妖精は小さくて綺麗って言ってたでしょ、見たことあるなら教えてよ》

 

 《俺の掌くらいの大きさの奴が一番多いかな、淡く光って羽虫みたいな羽根でさ、森の奥の大きな樹に群れてるの》

 

 《見て見たいなぁー》

 

 《まぁ人族が行ける様な所ではないから無理じゃね。それに奴等は樹の少ない所は嫌うからね》

 

 《ファルちゃんウリミー切ったよ、食べるかい》

 

 《ありがとマリューサママ、一切れ食べる》

 

 テーブルの上でマリューサママとミャルの三人でウリミーを食べてお喋り。

 お客さんが来る前にマリューサママはカウンターの奥に行きミャルは片付けてお客さんを迎える準備を始めたので、俺はハンモックで一寝入り。

 

 《ユリヤが帰ってきたら起こしてね》

 

 《はいはいお休みファル》

 

 《ふぁーい》

 

 ◇  ◇  ◇

 

 《ファル起きろ!、起きなきゃ下から突くぞ》

 

 《ふぁユリヤお帰りー、起きるよティアみたいな事言わないでよ》

 

 ユリヤもう一杯やってるね。

 

 《ユリヤ呑むの早くない》

 

 《もう陽も暮れて立派な夜だぞ呑んで何が悪い。お前も呑むか》

 

 《俺達は果物以外は駄目なの。死にたくないから要らないよ》

 

 酒の美味さは知ってるが教えてよやらないよ、ていうかもう少しマシな酒はないのかよ。

 妖精族に産まれてから酒を呑みたい欲求がとんと無いな。

 もし呑めても妖精の酔っ払い飛行なんて、人族に捕まるのが落ちだしな。

 籠の中に放り込まれて見世物か籠の鳥ならぬ籠の妖精っちゃ面白くも何ともない。

 

 《よおユリヤ、クラプの実が一つ銀貨3枚って言ってたよな》

 

 《おおそうだぞ。お前が俺に食わそうとしたクラプは銀貨3枚だ、そこそこ貴重な薬用果実らしいからな。お前の悪戯のお陰で、これが飲めるってもんだ》

 

 《俺が冒険者ギルドに持ち込んでも買って貰えるのか。俺なら森の奥の色々な果実や木の実なんて楽勝だぜ》

 

 ふむ真剣な顔で考え込む、イケメン美丈夫って様になるな。

 

 《それは何とも言えんな、妖精の冒険者登録なんて聞いたことが無い。金が欲しいのか》

 

 《人族の草木の実を手に入れるには金が居るだろう。俺一人が食べるだけなら然したる金額も必要ないが、仲間にも食べさせたいとなると、それ相応の数を買わないとな。8万ダーラも残り少なくなって来たから、冒険者ギルドで果実や木の実を買い取って貰えるなら嬉しいんだ》

 

 《明日俺と冒険者ギルドに行って話してみるか》

 

 《別に冒険者になりたい訳じゃないんだ。買い取って貰えるなら、森の奥の果実や色々な木の実を時々取って来るよ。その中の人族の役に立つ物を売るよ》

 

 もし駄目なら俺がユリヤに半値で売って、ユリヤがギルドに売る様に提案するつもりだけどね。

 マリューサママに断ってユリヤの部屋に泊めて貰い、明日冒険者ギルドで買い取りのガルダさんと相談することで話しが決まった。

 

 クルプとクラプの実が、空間収納に幾つ残っていたはずだ。

 思い出せ無いが5個や10個は有るはずだし、実のなる場所は知っているから無問題だな。

 

 もし売れるなら、豆類は木の枝に大量に実っているし、蔓に成る奴も色々な種類が有るからな。

 まぁ薬草類は俺達妖精族には用がないから、何にも知らないので採取は無理だね。

 

 可能なのは茸類や花や木の葉だけど、馴れるまで手を広げない方が無難だろう。

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