第4話 市場だ♪

 コクコクしているおばさんと少女に手を振り、ユリヤとホテルを出て市場に向かう。

 

 《ファルさっきの実な、クルプって呼ばれている。俺達冒険者が採取してギルドに売ると、一つ銀貨1枚になるんだ。人族の前で迂闊に出すなよ、騒ぎの元だ》

 

 《分かったよ。今度から出すときは、気をつけるよ。そんなユリヤにはこの実をあげよう》

 

 クラプの実を差し出す、見た目はクルプと同じだがヘタが丸い。

 受けとったユリヤが実をしげしげと見つめ、クラプの実か貰っておこう。これは二日酔いの薬になるし、高級薬草扱いで銀貨3枚だ。

 

 《そうなの、人族って変なの》

 

 シュラクが呟くと、皆ウンウン頷いている。

 俺達には苦い実って認識しかないからな。

 そんな物を何故持っているかって、当然悪戯の為だよ、ユリヤに食べさせたかったんだけどね。

 

 《ユリヤ、ティアに触ろうとする奴に、手を出すと手痛い攻撃を受けるから、止めとけと警告してね。俺達が攻撃するのは、捕まえ様としたり攻撃してきた相手だけだぞ。一度反撃した相手には目印が付くから、近づけば何度でも攻撃するんだよ》

 

 《そうなの》

 

 《当たり前だろ。見掛けたら何でも攻撃する人族と違うわ! <ギャ>ほら見ろ後ろからティアを掴もうとした馬鹿がいる。もう二三発喰らわせてやる》

 

 <ギャ 痛ってー グフッ>

 

 「おいおい回りにいる人も気をつけろよ。この可愛い子に触ろうとすると、そいつの様に痛い目を見るぜ」

 

 あーぁ可愛いって言われて、ティアの顔が蕩けているよ。

 

 「妖精は狂暴とか危険とか言われるのは、そいつの様に捕まえ様としたり攻撃するから遣り返されるさ。お前はこれからは妖精達に出会う度に、攻撃されるぞ。妖精が反撃した相手は、目印が付くから分かるらしいからな」

 

 《ユリヤその紅い粒々の実はなんだい?》

 

 「姉さんそのイイチゴの実を一皿くれ」

 

 「はいよ一皿鉄貨5枚ね」

 

 《味見するか?》

 

 《するー》×6

 《アラフ切ってよ》

 《ヨッシャーまかしとき》

 

 「はぁん、このちっこい子魔法でイイチゴの実を切り分けとるがな」

 

 「おう妖精って皆魔法が使えるから結構強いぞ。まぁ風魔法でイイチゴの実を切るとは思わなかったけどな」

 

 《んー之美味しいね》

 《ンンン持って帰る!》

 《もっと切ってよアラフ》

 《ユリヤ六人分、六皿買って持って帰る》

 

 《お前の持ち金は80,000ダーラ在るから、たっぷり買えるぞ》

 

 《あーそれ俺達人族のそれ、使い方知らないんだ。教えてよ》

 

 《イイチゴの実は一皿鉄貨5枚だ。鉄貨10枚で銅貨1枚な銅貨10枚で銀貨1枚・銀貨10枚で金貨1枚だ。お前は銀貨8枚持っているから沢山買えるぞ》

 

 《ダーラって、鉄貨は何ダーラになるの》

 

 《おっ頭良いね、鉄貨は1枚100ダーラだ。銅貨1枚が1.000ダーラ、銀貨1枚10,000ダーラだな》

 

 《じゃイイチゴの実は、一皿500ダーラで合ってるかな》

 

 《合ってるぜ、6皿で3,000ダーラだな》

 

 《有り難う、皆沢山買えるから珍しいのを探せ!》

 

 《ちょっと待て、お前らがばらばらに行っても話が通じないから待て!ファルこのおばちゃんと、話が出来る様にしな》

 

 「姉さんこのちっこいのが頭に手をつけるからじっとしてな」

 

 「なにするんだい」

 

 「ちっこいのと話が出来る様になるんだよ」

 

 《おれファル宜しくな》

 

 「おやちっこいのに丁寧だね。わたしゃオリバだよ」

 

 《んーとね、頭の中で考えて話しかけてよ。人族の言葉は知らないから》

 

 「おやそうかね・・・と」

 《えーとわたしゃオリバだよ、聞こえてる》

 

 《判ったオリバ婆さんで良いのかな》

 

 《ふぉっほっほほそうだよ婆さんだよ》

 

 《じゃオリばあさんだな。ユリヤ他の樹の実が在る所にも行って、話が出来る様にしたいので付き合って。皆はオリばあさんから欲しいもの貰ってティア銀貨2枚渡しとくね》

 

 《ファル色々美味しそうな実の在るところ、探して於いてね》

 

 《ユリヤ次行くぞ》

 

 ちょっと上に上がって周囲を見渡す、あれに見えるは地球の知識では野菜だな。人族の野菜の味見もしたいが俺達食えるかな、今回は果物一本で行くぞ。

 おっと、綺麗に積み上げてるがまさしく果物だな。

 

 《ユリヤこっちだよ。この黄色いの何》

 

 《ビンワーだな、之も結構美味いぞ》

 

 《これは皿に乗ってないぞ》

 

 《ちょっと待て、お前が直接交渉しろ》

 

 「姉さんこのちっこいのが額に手を当てるからじっとしてなよ」

 

 「何するの?」

 

 《よっファルだよ。この黄色い実が欲しいんだ》

 

 「ああビンワーかい」

 

 「姉さん頭の中で考えて話してやらないと通じないよ」

 

 《ほへ・・・えええとビンワーなの》

 

 《これ皿に入ってないけどどうして》

 

 《あへえと一つ鉄貨2枚だ》

 

 《2枚ね、はい》

 

 《之小さく切ってよ、大き過ぎて食べられない》

 

 コクコク頷いて包丁を取りだし小さくしてくれた。

 一切れが未だ大きいので、ナイフで半分にしてかぶりつく、うんま旨すぎる♪

 

 《お姉さん買う買うよ。これ全部なんダーラになるの》

 

 《50個在るから10,000ダーラになるけどお金在るかい。それより持って行けるの?》

 

 《買う銀貨1枚だよね、はい銀貨ね》

 

 一山積まれたビンワーの傍に行き、空間収納にポイポイ放り込んでいきホクホクです。

 

 《有り難うお姉さん名前何、俺ファルね》

 

 《あーヘニヤだ》

 

 《ヘニヤね、じゃヘニ姉さんだな。そっちの青くて大きいのは何かな》

 

 《之は野菜で固いよ、焼いたら中がホクホクになって甘くて美味しいけどね。あんたには大き過ぎるだろ》

 

 《そうだね穴を開けたら、中で寝られそうだもんな》

 

 ユリヤとヘニ姉さんに大笑いされたよ。

 今回は欲ばらずこの辺で引き上げるか、人族の市場に二人知り合いが出来たからよしとしよう。

 

 《ところでユリヤ何時もあのホテルに泊まっているのか》

 

 《そうだがどうした》

 

 《今度一人で来るからティアには内緒にしてて、損にはならないと思うから》

 

 《でもこの話も聞かれてるんだろ》

 

 《大丈夫ユリヤだけに話しかけているから聞かれないよ。皆がいるときに一人に話しかけても、皆に聞こえる様に話すでしょ。今はユリヤだけに話しかけてるからね》

 

 《来ても良いけど、入口から来て女将さんに挨拶しろよ。今朝会ったおばちゃんな》

 

 《判ったそれじゃ俺達は帰るよ。またな》

 

 さっきの店に戻るとティアが、店のテントの縁に腰掛けて、満足そうに話しをしていた。

 

 《ティアお金足りた?》

 

 《ん、全部使ったけど沢山買えたよ。帰って皆に自慢しようね。皆帰るよ》

 

 《オリ婆さん、ヘニ姉さん有り難うね》

 

 それぞれの店の前で手を振り別れを告げて森に向かって飛ぶ。

 良い樹の実が沢山手に入ったし、人間が居るのも判ったから大収穫だぜ。

 二人市場で話せる人間も出来たから万々歳だ。

 今度は一人で来て、ユリヤとギルドに行き、受付のお姉さんと買い取りのおっさんを紹介して貰おうっと。

 

 ◇  ◇  ◇

 

 《ファルあんた何か美味しい実手に入った》

 

 《ああビンワーって樹の実で美味しいのが合ったよ》

 

 《えーそれ食べたい、味見味見しようよ》

 《だね、味見あじみ♪》

 《さすがはファルだね抜け目なし》

 

 《おい美味しい実を見つけるのに。抜け目は関係ないだろ》

 

 《ファル可哀相》

 

 《やかましい! テノ何でそこで可哀相が出て来るんだ。可哀相なのはお前の頭だ!》

 

 《ファル叫んでないで帰るよ。三日も人族の歩きに付き合って退屈だったし》

 

 《人族も飛べば早いのにね》

 

 《ばーかあんなでかい人族がブンブン飛び回ってみろ、危なくて仕方がないぞ》

 

 《人族は地べたを這っているのがお似合いだよ》

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る