俺って妖精?
暇野無学
第1話 俺が妖精さんになってる
《ファル起きなさい。飛行訓練よ、起きなきゃ蹴り落とすからね》
《起きるよ乱暴だねティアは、落ちたら怪我じゃ済まないだろ》
《直ぐに治してあげるわよ、前に訓練もバッチリしたからね》
《まさか俺を実験台にする気じゃないよな》
《起きなきゃそうなるわね》
《ご飯 <ウッワーぁぁぁ> っと殺す気満々だよ。この高さからよく平気で突き落とせるね》
《飛行訓練よ。さっさとご飯を食べないと、皆出て行ってしまって探す羽目になるよ》
《へいへい空を飛ばなきゃご飯も食べられない世界って》
《飛ぶって程の高さじゃないでしょ。そんな低い所を飛んでたら狐に咥えていかれるよ》
何が哀しくて、寝起きにホイホイ突き落とされなきゃならないんだ。
好きでこんなチンチクリンに産まれたのじゃない。
気がついたら幼児プレイの真っ只中、オシメをされて無かったのが唯一の救いだった。
まぁ親と認識した二人は優しいし綺麗だけど、目覚めと俺の意識が混濁して大変だったぜ。
俺は日本人遠野達郎の意識を持ってファルの身体で目覚めた。
精神的パニック状態の俺を奴等は取り囲み魔力を浴びせる。
許容量が多いだの、基本魔法に雷撃と転移に火魔法の3種を保持しているとか寝言を言いやがる。
それが理解出来る様になるのに半年掛かった。
俺は妖精族の子として、この世界に生を受けたらしい。
毎日通勤電車に揺られて会社に行き、仕事に励んでいた筈なのに何時死んだのか不思議だ。
輪廻の輪に入るなら地球の神様の管轄だろう、何故妖精族ってお伽話の様な世界の住人になってるんだ。
しかも食事は草木の実と、魔力の実と呼ばれる水分の多い瓢箪に似た木の実の汁だけだぞ。
肉を喰わせろ!!!
目覚めて半年たち気持ちが落ち着いた所で、いきなり飛行訓練が始まったよ。
生活魔法の使い方と空間収納に物を収める練習もだ。
飛べる様になったら防御結界を張って魔法攻撃訓練ときたね。
新兵並の世界だ(兵役には就いた事無いけど)
全ての訓練が終わるのが産まれて2~3年って、犬猫よりは長いけど妖精族ってシビアだね。
2~3年もすれば一人前の妖精さんの出来上がりだとさ、ふん。
独り立ちの魔力の譲渡では、総勢20人以上の妖精達から魔力お送り込まれるんだ。
パンク寸前に為ったところで、祝福を受け之より一人前として、親や集落の保護を受けずに行動する事が許された。
俺? 俺は優秀でさ2年と11ヶ月ちょいで一人前よ、訓練より遊びが楽しくてさ、幼児返りの所為かね。
でも今まで通り、キュラパパとミュルママの元で生活するけどね。
ティア・・・同じ集落の年上の姐御ですな。
乱暴で傍若無人を絵に書いて、実体化させた奴がティアって事でご理解頂きたい。
何故か俺の姉さん気取りで、何処に居ようとゴキブリの如く湧いて出る奴だ。
俺の家はと言うか集落は、立ち枯れた古木の中に在る、中は空洞になっていてそれぞれが好き勝手に穴を開けて住んでいる。
つまり古木の中は中心部の通路以外は蟻の巣穴に似ている。
俺の家は二部屋で居間と寝室だけだが、寝室にベッドは無いハンモックが吊られている。
妖精族はベッドは殆ど使わない、旅に出ると樹の枝にハンモックを吊り下げて眠る。
旅に出なくても皆外にハンモックを吊るして寝るのが好きだ。
雨が降れば天幕を張ればよしである。
実際俺も一人前と認められた時に旅に必要なハンモックと天幕にナイフ等を贈られた。
それ等は全て空間収納に納めているので何時でも旅立てる。
皆時々魔力の実を求め、遠くへ旅に出たりするからね。
魔力の実はそれぞれの土地により味が変わるから、皆好みの味を求めて採りに行く。
出会った妖精族達は挨拶と共に、自分好みの魔力の実を差し出し自慢しあう。
気に入れば収穫場所を聞き、又教えあう。
俺も最近は自分の好みの味を求めて西に東にとふらふらしている。
食事の草木の実は、収穫時に皆大量に空間収納に納めているので心配は無い。
それに草の実なら小さくて良いが木の実は自分の背丈の3分の1から半分近くもある果物は、そうそう食い尽くせ無い。
言うのを忘れていたが妖精族の身長は約30センチで6等身くらいかな。
何とか幼児体形を脱した感じなのは御愛敬だね。
草木の実と魔力の実が食事なので、妖精族は魔力で出来ていると言っても過言ではない。
皆長寿で魔力量にも依るが、200年位は楽に生きるらしい。
俺は許容量が多いから長生きだと言われた、許容量?って魔力量の事らしい。
変わりに子供は余り産まれないらしい。
まぁ長生きで子供がホイホイ出来たら、レミングみたいに集団自殺する嵌めに為りかねないからね。
子供が産まれると集落全体で育てる様なので、俺は両親とティア主体で育てられたようなものだ。
そのせいで傍若無人で乱暴者のティアを、危険物との認識が薄く被害を受ける事が多々ある。
まぁやられっぱなしって事は無い!
やられたらやり返すのが俺の信条なのは、妖精族に生まれ変わっても変化無し。
勝率は8割かな(ティアの)俺は育てられた弱みが在るからね。
それに女性には優しくと、キュラパパとミュルママに厳しく言われているのもある。
決して俺が弱いからでは無い! 断じて無い!
俺は最近早く飛ぶ事と高く飛ぶことに時間を割いている。
日本人としての記憶では自由自在に空を飛べるなんて夢の様だから、存分に能力を伸ばしたいのだ。
森の中特に茂みを突き抜け幹や枝を躱し、突然現れるカナブンや蜘蛛を蹴り飛ばすスリル。
自称森の暴走族ですハイ。
でも騒音を撒き散らす野蛮な行為はしない、てか飛ぶからって音が出ないしね。
飛ぶのに飽きると魔法攻撃の練習だ、俺は火魔法と雷撃魔法に転移魔法の素養が在るので状況に応じて使い分ける練習だ。
今日も今日とて、低空飛行で茂みの中に突っ込んでいる最中に目の前にティアが現れた。
《ゲッ、ティア》
瞬間俺は森の上空に転移し周囲を見渡し遠くの樹の梢を目指して再度転移する。
本当に奴は俺の後を追う為のセンサーでも持っているのかねぇ。
ファル探知センサー装備のティアなんて冗談じゃねえぞ。
《誰か・・・助けてよ》
《この声はアーチャだな、今度は何だよ》
《アーチャ何やってんの、また狐に咥わえられて涎塗れだよ》
《助けてファル》
《お前咥えられて涎塗れになるの趣味なの》
《違うよー、襲われて防御結界で何とか食べられずに頑張っているのに酷いよー》
《えーと、アーチャお前魔法使えないの?》
《氷と風と水が使えるよ》
《じゃー口の中に氷の塊を撃ち込んでやれよ》
《それって狐さんが可哀相でしょ》
《お前が涎塗れになるのは可哀相じゃないのかな、この間はカマキリに捕まって泣いていたよな。いいから口の中に氷の塊を撃ち込め!、やらないなら俺がお前の尻に雷撃を撃ち込むぞ!》
<グェッ>狐の口の中にでかい氷の塊が見える。
アーチャを放り出して逃げた狐の尻に雷撃を一発撃ち込んでやる。
《じゃーなアーチャ涎塗れの男前になってるぞ》
防御結界で凌いでいるので、死んでないとはいえ付き合い切れないね。
あいつはそのうち猛禽の鷹辺りに襲われて死ぬね、鷹の突撃と爪の一撃は凄いからな。
奴に上空から突撃され蹴り飛ばされると一瞬自分の位置が判らなくなる。
その隙に奴は鋭い嘴で防御結界を突ついて破りに来る獰猛な奴だ。
猛禽らしく掴んでくれたら、防御結界の中から脚の裏を火魔法で炙って焼鳥にしてやるのに。
最近は奴が俺を狙っているのを察知して、上空から俺を蹴りに来た所を狙い、転移魔法で奴の背中に張り付き仕返しをするのが娯楽だ。
この世は弱肉強食の非常な世界、日本の様な甘い砂糖菓子の世界とは無縁の地獄だ。
ムーフッフッフッなーんちゃってね。
まっ人でなしになったけど、妖精の生活も案外悪くない・・・と思う事にしている。
ビールに焼鳥が恋しいよー。
俺が妖精さんになっちゃてるって人選間違いだろ! 神様!!!
俺は酒が美味くて、姉ちゃんが綺麗な世界が好きなんだよー!
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