第11話席替え1

「いいよ、どこの席にするんだい?」

 

「窓側の一番後ろの席を取って置いてくれ、俺はその前に座る」


「分かったよ。あそこは内職がしやすくて、ちょうどいいからよかったよ」


そういやたまに額田は内職をしてるな。まぁ大勢の進学校の生徒の中には授業を聞くより、独学で勉強していた方が成績がいい生徒がいるから、額田もその部類だろう。進学実績さえ出してくれれば学校はなにも文句をいわないからな。成績を出してないと親を呼び出されるが。


まぁ違うところがいいと思われないで、よかったわ。俺達は出席番号が後ろのほうだから、引くのは後のほうになった。まぁ残り物には副があると言うし、最後のほうでもこの学校は進学校だから、真面目に授業を受けたい人が多いから、できるだけ前の席を座ろうとするだろう。だから後の方でも後ろの席は残っているだろうな。


そんなことを考えていると、俺の番が回ってくる。俺はくじを一秒も経たずに引いた。即効の方がいいことがある。それに運なのに悩んでも仕方ないしな。まぁ元々数が少ないから悩むまでもないのだけれど。


俺は紙を開くと、六番と書いてあった。どうやら副はあったらしい。俺の後で引いた額田の番号を聞いてみると、二番らしく俺よりも早い番号だった。


「どうやら望み通りの席にいけそうだね」


「そうだな、まぁ後の番号でも多分後ろの席を狙う人は少ないがな。この学校の生徒は普段ふざけていても、授業だけは真面目に聞くやつが多いからな」


恐らく授業を真面目に受けるやつが多い理由のひとつとしては、この学校に集まる教師は教えるのが県トップクラスの知識と分かりやすさを兼ね備えているという噂があるからだろう。まぁ俺は社会科目以外の授業は寝るけどね!


「額田どんな女の子が隣に来て欲しい?」


俺は可憐みたいなタイプが隣に着て欲しいというのを願いながら、なんでもない会話を装い聞いてみた。


「うーん日本史ができて、優しい女の子がいいな」


可憐は優しいのはもちろんのこと、日本史も俺が好きだったからか、よく俺の家にある日本史の本を読んでいたから、得意である。つまり額田の望んでいる隣のことマッチングしている。可能性はあるってことだな。胸は痛むが。我慢だ。


額田はじゃあ行ってくると言って、席を決めに行った。俺はその間どう可憐と額田を仲良くするかを考えていた。


互いに話したことはあるから、自己紹介は必要ないとして、次のステップとして、遊びに行くことか。


そんなことを考えていると、俺の番が回ってきたので、空いていた後ろから二番目の席に名前を書いた。これでこっちは準備ができたぞ。後は可憐次第だな。


しばらく経って、男の席替えは終了して、男達は外に出た。変わりに女子達がクラスの中に入った。俺は壁に寄りかかりながら、周囲の声に耳を傾ける。


「お前誰の隣がいいんだ?」

 

「それは決まってるだろ。九条さんだろ」


残念だったな。そこの名の知らないクラスメイトよ。可憐は額田の隣って決まっているんだよ。別の可愛い女子のとなりになれることを願うんだな。


「お前本当九条さん好きだよな。でも好きな人かいるってと言って断っている噂もあるぞ」


まぁ多分隣のクラスのイケメンの鴨宮の告白をそう言って断ってできた噂だろう。しつこかったからそう言ったらしいが。額田ほどじゃないにしてもとあいつイケメンだからな。噂になるのは早いんだろう。まぁかなりの女好きと聞くが。


「もしかしたら、俺のことかもしれないだろう。もし告白してきたら、首が引きちぎれるくらい頷くだろうな」  


「九条さんがお前を好き?ねーよ。大体あったら、挨拶とちょっとした雑談を交わすくらいじゃねーか」


一目惚れってやつか。確かに可憐は学年のアイドルと呼ばれているくらいに美少女だから、そ言うのは何回もあるだろう。まぁ一目惚れって大体面食いだし、そんな理由で受けるやつなんて、相当なイケメンじゃなきゃないだろう。それに可憐は見た目ではなく性格で選ぶタイプだ。額田を好きになったのも、顔もあると思うが、誰隔てなく優しく、芯が強く、とんでもなく努力するところに牽かれたんだろう。


そう分析をしていると、女子の席替え終わったらしく、男達が呼ばれた。その瞬間、男達に緊張が走る。恐らく皆可憐のとなりがよくて、宝くじの当落線のように緊張しているんだろう。まぁ出来レースなんだが。


俺は男達がぞろぞろと入った後、最後に入り、黒板を見た。可憐のとなりの席は額田だった。


どうやら上手くいったようだ。だけどなんであんな男が九条さんの席の近くなんだよと俺のことについて文句を言っていた。あんな根暗がとか言っている。


俺はねぐらじゃない。クールでしゃべらないだけだ。イケメンじゃなきゃクールじゃない?それじゃー俺は根暗ですね。結局根暗なのかよ。


俺は席を後ろから二番目に動かした。俺のとなりは誰だろ?誰あいつとか思われたりしないだろうか?


すると隣の席に人が机を持ってきた。ふぅー緊張するな。深呼吸するか。ふぅーはーよし俺は意を決して横を見た。


ボブの髪型で、目がくりくりしていて、大きく、鼻はすっと通っていて、口許は笑みを携えている。快活な雰囲気を持った美少女がいた。今泉だった。


「菊池となりだね。これからよろしくね!」


ウィンクしてきた。これを天然でやってるだろから、何人の男が犠牲になったか。恐ろしい。


「今泉が隣か、知っているやつが隣でよかったわ」


恐らく可憐からのお礼で隣にしてくれたんだろうり仲がいいだけっていうのもあるかもしれないが。作戦その一は成功した。ここから俺たちの物語は動き出した。











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