宇宙の片隅の俺達

景文日向

序章

「なぁ、超常現象って信じるか?」

この世の中には、様々な疑問がある。その中でも取り分け、地球の外を研究しているのが俺だ。要は宇宙に関する研究を行っている。

「あれば解き明かしてみたいもんだな、興味はある」

真面目な顔で質問してきた目の前の男は、佐竹光夜こうやという。

「そうか。なら昴、一度つくばへ来てみないか。面白い話があるんだ」

つくば市は、彼の拠点だ。研究都市で働く光夜、その中でも彼は別格の扱いを受けている。自分専用の研究室まであるそうだ。能力が高いというのは羨ましい。

「へぇ、行くのは良いけど……。どんな話?」

「ここでは言えないな、何せこないだの一件で監視が強くなってるかもしれないから」

何もないところを光夜は見ていたが、すぐに視線はこちらに戻った。

「あぁ、あれか。お前、自分の研究室ぶっ壊すってどういうことだよ……」

遡ること数週間前。光夜は爆風で自分の研究室を破壊してしまった。詳しいことはわからないが、今はもう直ったそうだ。現代の建築技術は素晴らしい、そう感じる話である。

「まぁ色々あったんだよ」

光夜にはぐらかされたので、これ以上追及するのはやめた。無意味だ。

俺は甘苦いコーヒーを飲み干す。その味は、さながら今の心情だった。

「じゃあ、俺戻るわ。こう見えても、それなりには忙しいんでな」

これは半分本当で、もう半分は嘘だ。小惑星探査機が打ちあがった今は仕事に追われているが、普段はそうではない。仕事は楽しいが、物足りなくなるほど暇な時もある。

「ああ、まぁ気が向いたらつくばに来てくれ。じゃあな、昴」

光夜はタブレット端末をカバンから取り出し、いじり始めた。こちらにはもう興味がない様だ。


俺は自分の飲食代をテーブルに置き、カフェを出た。

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