第一章 学園救済クエスト解決編

第2話 プロローグ2 本編開始




 ここ最近、私の生活は大きく変りました。


 ほんの少し前まで、私はどこにでも居る錬金術師の店の娘で、特別ななんやらはなかったはずなのです。

 でも、一人の男の子に出会って私の環境は一変しました。


 ゼフィルス君。その男の子の名前です。

 同じ村の幼馴染で、凄くカッコイイ男の子です、多分、村一番じゃないかな?

 ですが、ゼフィルス君は事情があってあまり村の子どもたちと遊ぶことはなかったのです。

 私も喋ったこともほとんどありませんでした、挨拶程度かな? いつも村長の後に付いていって忙しそうにしていた記憶しか有りません。


 しかし、ある日、あれは16歳となり、学園へ向かうことになる日の前日のことでした。

 凶悪なモンスター、いえ、実はそこまで凶悪では無いのですが、当時はとても凶悪だと思っていたモンスターに私が襲われたとき、ゼフィルス君が颯爽と駆けつけ助けてくれたのです。


 あの時の感動は今でも鮮明に思い出せます。今でもドキドキの胸の高鳴りを思い出せます。

 お互い幼馴染なので言い方はおかしいのですが、確かに私とゼフィルス君の出会いはあの瞬間だったと思います。むしろそう思っていた方がよりロマンチックだと――ハッ! いえ、なんでもありません。


 それから2人で学園に入学することとなり、私はゼフィルス君の近くに居ようと、色々奮闘することになりました。


 ゼフィルス君はかっこよくて、すごい人です。

 ゼフィルス君はなんでも知っていました。

 私が知らないことをたくさん教えてくれて、【錬金術師】としての道を示してくれました。

 おかげで私は無事、念願だった【錬金術師】の職業ジョブに就くことができました。

 あのことは今でもとっても感謝しています。


 ですが、ゼフィルス君の言うことを聞いているうちに同級生の中でもトップレベルという、恐れ多い称号を得てしまったのはとても遠慮したいところです。どこかに破棄できないでしょうか?

 え? 称号は返品不可?

 そんな~。


 うう。

 この学園はレベル主義で、よりレベルの高い人を能力が高い者とする風潮があります。

 それは当然のことだとは思うのですが。なぜ私はこうもポンポンレベルが上がるのが速いのでしょう? 絶対ゼフィルス君の方が速いと思うのですが、ゼフィルス君曰く、職業ジョブの格のせいだと言います。おかげでなぜかものすごく注目されているのですが……。


 ゼフィルス君と2人でパーティを組んでいた頃はまだ良かったです。

 そんなに注目されていませんでしたし、むしろ勇者のとなりにいるのは誰だ? というような視線でしたから。


 あ、ちなみにゼフィルス君の職業ジョブは【勇者】です。遙か古の時代に、竜に跨がり世界の滅びを食い止め、そして私たちの世界を平和に導いたと言われて物語にもなっている伝説の職業ジョブです。

【勇者】の職業ジョブが発現したのは数世紀ぶりのことらしいですよ。

 おかげでその頃はゼフィルス君がとても注目を受けていました。


 そしてゼフィルス君のところにどんどんいろんな人が集まるようになったのです。

 なぜかゼフィルス君、この国の王女様であるラナ様を始め、伯爵家のシエラ様や騎士爵家のエステル様といった有名人の王族貴族を集めてきてギルド〈エデン〉を結成。伝説の職業ジョブ持ちや有名人ばかりのギルドを作ってしまったのです。


 そのためギルドがとても注目されるようになってしまいました。

 しかも私もその注目のギルドの一員になってしまい、さらにその中でもレベルが上がりやすい私がレベルでトップになってしまい、なぜか尊敬の視線で注目されることになってしまったのです!


 なんでこんなことになったのか、今でも私には分かりません。

 どよーん……です。


 ですがゼフィルス君はやっぱり凄くて、王女様や貴族令嬢様方を相手に指揮を執り、ギルド〈エデン〉はどんどん躍進していきました。

 聞いた話では、これまでの学園の長い歴史の中でも〈エデン〉の躍進速度はトップだそうです。それも圧倒的な。

 私も付いていくのに必死でした。よく付いて行けたと思っています。

 ゼフィルス君と離れたくない。その一心で頑張って付いていったのです。


 ですが、だからでしょうか。

 普通は戦闘職が活躍するはずのダンジョンへずっとずっと付いていった私のレベルは、同学年で歴史上初の最短記録を毎日のように更新し続け、ダンジョン受付の方々から尊敬の目で見られていました。そんな目で見られるほど活躍してないのに! 恥ずかしい……。


 それだけならまだ良かったのですが、5月になって学園のクラス分けが行なわれた時の事です。

 とても大変な事が起こりました。


 ゼフィルス君は【勇者】なので〈戦闘課〉の校舎へ、そして私は【錬金術師】なので〈錬金術課〉のある校舎へ行くことになってしまったのです。

 離ればなれ……。離ればなれです……。


 それだけでは無く、ギルドで仲の良いメンバーはみんな〈戦闘課〉で、私は寂しくも一人〈錬金術課〉に行くことになってしまったのです。


 しかも同学年で歴史上初の最短高レベル記録者という異名も手伝って、なぜか私が〈ダンジョン生産専攻〉の代表の言葉を壇上で言わなければならなくなりました。

 おかしいです。これって普通ラナ様とか、もっと偉い人が壇上に上がるはず。

 でも頼りになる伝説の職業ジョブ持ちのみんなは〈戦闘課〉です。向こうは王女のラナ様が代表らしいです。

 本当になんで、私が、代表? 恐れ多いです。恥ずかしいです。


 受難は続きます。



 この話は学園に入って1ヶ月、5月初めに、私ことハンナが〈錬金術課〉に入学するところから始まります。




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