お仕事6
第6-1話 「下着見られたんだから‼︎」
麻薙さんがクラスメイトの中で誰よりも早く登校してくることを知っていた私はいつもより早く登校して教室へと入った。
昨日は変なスイッチが入ってしまい、ほしくんに違和感を持たれたのではないかと心配で正直昨日はあまり眠れなかったが、一旦それは忘れて目の前のことに集中しよう。
寝不足の私が麻薙さんに合わせて早く登校してきたのにはもちろん理由がある。
私が早く登校してきても麻薙さんが来ていなければ意味がないと懸念していたが、私の想定通り麻薙さんだけが教室にいた。
自分の席に座って本を読む麻薙さんはあまりにも絵になっており、自分との差を思い知らされる。
私もあんな風に綺麗になれたら……。
なんて今はライバルを羨ましがってる場面じゃないぞ私‼︎
「おはよ、麻薙さん」
「あら、こんなに早く登校してくるなんて珍しいわね。どうかしたの?」
「麻薙さんに用があったから早く登校してきたの」
「千国さんが私に用があるなんて珍しいわね。なんの用?」
私は今日、麻薙さんに牽制をしに来たのだ。
「私、ほしくんの家にいったの」
「……。それがどうしたの?」
あれ? 思ったより動揺してない?
私がほしくんの家に行ったことを伝えればもう少し動揺してくれるかと思っとんだけど。
こうなったら……。
「家に行っただけじゃないよ⁉︎ 私、ほしくんに下着見られたんだから‼︎」
「し、下着姿を見られたの⁉︎」
「ま、まあそんな感じ」
実際見られたのは下着だけだけどね‼︎
麻薙さんが都合のいいように勘違いしてくれたし訂正する必要もないか‼︎
……うん、一瞬良心が痛んだけれど、いつも麻薙さんにはコケにされているのだからたまに嘘をつくくらいなら問題ないだろう。
「へ、へぇ……。そ、それで? いくら下着姿を見られたからと言って健文くんのことだから手は出されていないのでしょう?」
「ほしくんだって男の子だもん。もちろん出されそうになったよ?」
「出されそうになったの⁉︎」
「そ、そりゃもちろん。押し倒されて私の上に乗りかかってきたけど、私の方からちゃんと拒否しておいたから。ほしくんは手を出したくてたまらなかったみたいだけど」
「そう。まあ健文くんも男の子だものね。よかったじゃない。ちゃんと女の子として見られてて」
な、なにこの余裕。私が仮に麻薙さんから同じような内容の質問をされたとしたら驚きで焦りを隠そうとしても隠し切れないだろう。
「まあ私も健文くんに胸とか揉まれたことあるしね」
「胸⁉︎」
なにその聞き捨てならない話⁉︎
そんな事実があったから私の話を聞いても余裕ぶっていられたってこと⁉︎
「へ、へぇそうなんだ」
「そうよ。家に押しかけてきたことだってあるんだから」
押しかけてきた⁉︎ ほしくんが麻薙さんの家に⁉︎
ほしくんの控えめな性格からはまさか麻薙さんの家に押しかけるなんて考えられない。
「それ本当なの⁉︎」
「本当よ。男の子って女の子なら誰でもいいのね」
「だ、誰でも……」
「もう用は終わったの? それならお手洗いに行かしてもらうことにするわ」
「誰でも……」
俄には信じがたい情報だが、まさかほしくんがそんな人だなんて……。
いや、ほしくんがそんな人な訳ない。
私が一番近くでずっと見てきたのだから誰よりもそれを分かってる。
そう理解しながらも、あまりの驚きから動揺を隠せず呆然としてしまった私はその場にしばらく立ち尽くしていた。
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