014 中庭に響く音色①
大聖堂や大図書館などの建物や、それらを
しかし、バジリカの中でも特に
……そんな中庭にある、大きめの
朝のお祈り
「━━ねえ、ロッコ。そろそろ来るかな?」
「ああ、そろそろじゃないか?」
そう話す少女達を知ってか知らずか……
足を動かすたび、浅めにかぶった麦わら帽子が
「おはよう、リリー。今日も一番だね」
自分達以外には誰も居ないし、誰も来ない。
そうした
……と、少女の
「よっ……と。んーーっ…………ふぅ」
そして
「なあ、今日は何をするんだ? こうも毎日やってちゃ、
「そんなことないさ。そうだなあ、まずは……´切り戻し´からかな? これは少し時間がかかるかも知れないな」
園芸用のハサミを取り出した若い男性が改めて
そのまま小さな足や腕を器用に使い、慣れた様子で自分の肩まで登ってくるのを待ってから……若い男性は
「……結構バッサリいってるけど、本当に大丈夫なのか?」
「こうする事で、もう一度
若い男性はそう言うと、自分の肩越しに作業を
「なかなか
「こ、こういうのは俺じゃなくてだな……」
もじもじと照れくさそうに頭の白い花に
「
すぐ近くで聞こえる会話に意識を向ける事もそこそこに、空に浮かんだ不思議な動きをする雲をベンチの上からぼんやりと目で追っていた少女だったが……何やら面白そうなフレーズがその耳に届くと、
「……´花かんむり´?」
「お、その声の感じだと今回も僕はリリーの興味を引けたようだね」
少女に背を向けたまま、若い男性は手を動かしつつ言葉を続ける。
「一度作り方を覚えると、指輪だったりネックレスだったり……大きさを変えるだけで色々な物が作れるようになるんだ。でも、一緒に作るにはお花がそれなりに必要だから、もうちょっとだけ待っていてくれないかい?」
「うん、いいよ」
〈パチ……パチン……〉
ハサミが音を立てる
〈ふわり〉
「…………よし、これくらいあれば大丈夫かな。じゃあロッコ、立ち上がるからしっかり
「おう!」
ハサミを
「それじゃあ、さっそく作ってみようか」
「……うん!」
ベンチの真ん中で立つクマのぬいぐるみの前には、
それらを
「まずはね、右手と左手でお花を一本ずつ持って、片方をこうやってクロスさせるんだ。……そうそう、
「うん…………うん…………」
時には手を止め、
自分の花とお手本の花とを
「……
ベンチに置かれていた花の
ぐるりと円を
「いやいや、何回か作っていれば誰でもすぐにコツは
「ふうん……でもよお、やっぱりこの
「そ、そうかな? 自分以外が作ったものなんてまず見ないし、ここには人はほとんど来ないからさ……そう言ってくれたのはロッコが初めてだよ」
耳に入ってくる会話には
「ねえ、くっつけるにはどうすればいいの?」
「ん……ああ、リリーはその長さでいいのかい?」
「うん」
「そっか、それなら……いよいよリリーの´花かんむり´も完成
最後だけは少し難しいからと言って立ち上がり、自分の目の前でしゃがんだ若い男性からの
「ここを……こうして…………」
そして少々
「できた!」
少女はそう言って、嬉しそうに顔を
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