009 街の市場へ③
「━━お花、ヨシ! 食器、ヨシ! 私……ヨシ!」
食材が入ったバスケットと共に少女が大聖堂内にある食堂へと戻ると……若いシスターはこちらに背を向け、昼食に使用する皿やグラス類をテーブルの上に一つ一つセッティングしているところだった。
「ただいま」
「……! おかえりっ。リリー、私もうお腹ぺっこぺこよ!」
その言葉に
「え〜っと……パンが……3つ。チーズが2つ。牛乳が…………1、2……3本。後はロッコが1つと……お財布も! うん、ちゃんとあるね! ありがとう、助かったわリリー」
受け取ったバスケットの中身を確認し、そう言ってクマのぬいぐるみを少女へと返した若いシスターは
「ねえ、リリー……お師匠様達を呼んできてもらってもいい?」
「うん、わかった」
´ぐぅ´という音の
若いシスターの言うお師匠様とはシスタースズシロの事であり、彼女は見習いといったところであろうか。
話しやすく、どこか子供っぽい印象を受ける事もあるためバジリカにいる子供達からはシスターとしてではなく、友達感覚で接される事が多い彼女だが……そこについては彼女自身何とも思っていないようで、
━━各都市ごとに有する施設や敷地の広さは様々だが、生活に欠かすことの出来ないバジリカには昼時といえども人の
南側の通りに面したバジリカのメインとなる大聖堂。その正面入口には横に並ぶよう三つの扉が
内側に開く
正面入口から中に入ると左右には小さな
また、少し奥には正面入口と同じく三対の内扉があり、そこを抜けると今度は巨大な空間が出現する。
上からみると十字架を横に長くした様な形をしている建物の
壁や天井などは素晴らしい
それらは無数にある窓から差し込む光ですら作品の一部と言わんばかりにその身に
正面入口から真っ直ぐに進み、奥に見えてくる廊下を進んだ先にあるのが日々のお祈りのために街の住人達が
途中にある十字架の交差部を左に曲がればその
足をそのままに大聖堂を抜けると、廊下を通じてドールの召喚室がある建物やシスター達の居住空間といった場所へと
それらはバジリカの敷地内において、
廊下や施設等によって
そのため、街の人々にとっては何かしらの手続きやドール申請等の用事が無くとも、家族を連れて何気なしに訪れる事の出来るような……そんな
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〈ぱたぱた……〉
〈キイッ…………カチャン〉
〈ぱたぱた……〉
〈キイッ…………カチャン〉
「あら、もうそんな時間だったのね」
〈ぱたぱた……〉
「ふふっ……はやく姿を見せてあげないと
クマのぬいぐるみを抱えた少女が、廊下に面した扉を一つずつ開け……部屋の中を見回しては閉めるといった様子を頭に思い浮かべ、シスタースズシロは笑みを
確認の終わった書類を軽く一つにまとめ、今いる
「……あっ、いた」
「昼食ね? 呼びに来てくれてありがとう、リリー」
シスタースズシロはそう言って、自分を見上げる少女の頭に優しく
「ロッコもいるよ」
「あら、ごめんなさいね。……ありがとう、ロッコ」
抱いていたクマのぬいぐるみを持ち上げ、そこに同じものを求める少女にシスタースズシロは
「━━ちゃんと聞いてる?」
「ええ、もちろん聞いているわ」
「…………それでね、ロッコがね━━」
今日はどこどこに行った、なになにを見た。
大聖堂内ですれ違う人々に
前を歩く少女の
シスタースズシロにとってはいつも通りの
他の事にかまけ、少しでもその反応が遅れようものならすぐに少女の´
「……お待たせしました」
二人が食堂に着き、シスタースズシロがそう声をかけながら目線をテーブルへと向けると……
先に少女が声をかけていたらしい他のシスターが静かに座っている
「え、えへへ……」
「まったく……あなたという人は……」
「……! あっ、そうだリリー……きょ、今日は新しい本がくる日じゃないかな!?」
お得意の
「面白い本があるかもしれないよ? ど、どんな本がくるんだろう……ね、お師匠様?」
「……本当?」
必死に話を変えようとする若いシスターと、それを聞いてこちらを見つめる小さな少女。
そんな二人の様子を
「ええ、もうすぐ届くはずよ。リリーの好きな本があるといいわね?」
「うん……見てくる!」
返ってきた言葉を聞き、嬉しそうに走っていく少女の背中を見送ってから……シスタースズシロはゆっくりと着席をする。
そして静かに両手を合わせ、食べ物への祈りを捧げ終わるといつもの様にニコリと
小さくなりながらも様子を
「さて……あなたはさっきの続きね」
「……! そ、そんなぁ〜!」
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