第248話 ユグドラシルからの挑戦

 ユグドラシルからルミエに念話だ。


「我が娘、ルミエよ」


「やめてよ。私のお母さんはあんたじゃないわ」


「母なる世界樹が、ルミエに挑む。負けたらこっちに帰ってこい」


「世界の中心はあんたじゃなわよ。世界はどこでも中心でありうるのよ。それよりなんて言ったの。負けたら帰って来いって?」


「ハイエルフの勇者パーティーの4人と、ルミエの仲間の4人、もちろんルミエを含んでだ。それが1対1で対戦して、我々が勝ったら、ルミエがエルフのパーティーに帰って来る」


「私たちが勝ったら?何かいいことあるの」


「そのまま放置してあげよう」


「馬鹿じゃないの。自称世界樹とかいう人。私に何のメリットもないじゃない」


「何か望みを一つかなえよう」


「死んでよ。私が勝ったらあなたが死ぬ。それなら受ける」


「残念ながら世界樹ユグドラシルは死ぬことができない。エリクサーを10本与えよう」


「そんなもの自分たちで作って、90本以上持っているわよ」


「まさか」


「あんたニセモノなんだってね。本物に会って話がしたいの。会わせてほしい」


「先代の世界樹なら居場所は知っている。困難だが行く方法はある。それを教えることはできなくはない」


「それでいいわよ。それで闘う相手の名前ぐらい教えてくれる。名前と概要」


 ルミエはユグドラシルの甘さを笑う。エルフは約束を破らない。だからユグドラシルは口約束を簡単に信じる。ルミエは悪をなせる存在になっているから、負けたらとぼけるつもりでいる。契約をきっちり詰めない方が悪い。


「いいだろう。勇者マジューロ。盾士ドワーフのガンズ。弓士クリスタ。賢者ピピン。それぞれ火の精霊サラマンダー、土の精霊ノーム、風の精霊シルフ、水の精霊ウンディーネを内部召喚して戦いに臨む」


「仲間を連れてきてもいいんだ」


「テイムしている場合や、内部召喚など一体化している場合だけとしよう。戦う場所はそれ以外の場所とは次元を切り離す」


「ゴーレムなんかは装備として扱っていい。許容範囲よね」


「武器として認めよう」


「ゴーレムがカードモンスターを持っているんだけど、それもいいかしら」


「強大な精霊に対抗できるわけもない。カードモンスターとやらも認めよう」


「1か月後でいいかな。一応準備あるし。選手決めなくちゃなんないし」


「いいだろう。こちらは精霊を内部召喚をすると能力値平均は800以上になる。そのことを仲間に知らせておくように」


「命は取らないということでいいんだね」


「あくまでも模擬戦だ。我々は敵ではないから。敵はカリクガルで、その点は一致している」


「そのとおりね。あと細かいけど、勝つっていうのは、相手のHPを1にするってことでいいのかしら」


「いいだろう。力余って殺しそうな場合、HP1でとどまるようにしておく。あるいは戦いのリングから吹き飛ばされるとかも加えよう」


「リングが狭いなんてことはないよね」


「学校の入学試験の10倍の広さでいいか」


 おおよそサッカーコートぐらいになる。


「いいわよ。審判は誰にする」


「カリクガルに情報が漏れないように、異界の神の眷属に頼む」


「信用できるのかしら」


「天使だから、約束は守るはずだ。それに仕事は始まりの合図をするだけになると思う。簡単な仕事だ」


「2対2だったらどうするの?」


「我々の負けとして認めよう。大精霊を召喚して負けるわけはないが」


「あと私たちが勝ったら、カリクガルとの戦いの優先権は私達にあるってことで良い?」


「いいだろう。勝った方が先にカリクガルと戦うことにする」


 ルミエはセバスと相談する。選手決めだ。勇者マジューロと戦うのはリビー。サラマンダーの火に対する氷。勇者の剣に対する槍。相性がいい。ただ能力値が違いすぎる。リビーは魔力と理力が高いが、それでも400に届かない。マジューロの半分しかない。


 セバスはクロヒョウゴーレムの1号に憑依のスキルを与えて、1号の能力値を加算することを提案した。そうすると互角の能力値になる。いやこのペアの能力値平均は1000を超える。勝てるかもしれない。


 盾士のガンズ。対抗できるのは結界士のレニーか。ブルースはテイムモンスターと同等と認めてもらう。結界が進化しているから、いい勝負になるはずだ。


 弓士クリスタ。ここにベルベルを内部召喚したルミエをあてる。ベルベルとクリスタの弓勝負が見ものになる。ルミエとシルフがどう戦うか。能力値は向こうが圧倒的に高い。ルミエはなにか戦術を練る必要があると思った。


 賢者は総ての魔法が使える。ピピンが何が得意かは分からない。そこに水の大精霊ウンディーネが加わる。一真とワイズでは攻め手がない。ワイズの反物質バレットは強力すぎて、1発で相手を消滅させかねない。これは封印だ。そうすると攻撃手段がなくなる。サイスとファントムも攻め手不足。ケリーは論外。


 消去法でジュリアスしかいない。ウンディーネと同じ水魔法で対抗するしかない。ブラックジュエリー一家を連れて行けるが、彼らが賢者や水の大精霊と戦えるかは不明である。


 全般的問題は、リンクが使えないことだ。リンクがあれば、HPとMPは自動的に補充される。それがないのは不利だ。同じ試合場にいるなら使えるかもしれない。少なくとも違う次元に飛ばされて、大きなリンクの輪からは外されると思っておこう。


 セバスは生贄のスキルを使う提案をしてくれた。リポップモンスターが、身代わりをしてくれる。15分でリポップするから、たくさんいれば安心である。これは各自が鍛えて持参することに。


 ベルベル、リビー、1号、レニー、ジュリアスに来てもらう。模擬戦の説明はルミエ。勝つか引き分けなら、カリクガルとの戦いの優先権を得られる。ルミエの移籍と、本物のユグドラシルと会う話はややこしいので省略だ。負けたらシカトすればいいから気楽だ。


 参加しない仲間には、念話で連絡をした。全員異論はないようだ。生贄スキルを対戦予定者全員に導入してもらう。1号には憑依を導入。1号は話はしないが、知性があり、話していることは理解している。


 セバスから防具と武器・アイテムの確認だ。防具はチーム標準のパワードスーツで問題ない。アイテム類も標準で大丈夫だ。


 リビーの武器はセバスが倉庫から選んでくれた短槍である。セバスによれば、青雲の短槍という神器で、青い宝石は竜晶石だった。竜晶石は理力と知力を上げてくれる。


 レニーの武器はキラービーの毒針。物理攻撃手段が投擲なので、一応ふさわしいと言えるだろう。ブルースは吹き矢で、こちらも同じ毒針を打つ。ペルソナ結界にはキラービーのペルソナを使っている。ブルースのペルソナ結界はブルース自身。改善余地はありそうだが、今から変えては慣れる時間がない。


 ルミエはモーリーからメイスを受け継いでいる。いい武器だが物理攻撃だ。セバスが魔法用の杖を倉庫から出してきてくれた。カリクガル戦までにはいい杖を準備したいものだ。


 ベルベルはエロスの神弓と王者の鞭、そして六魔の杖。どれも尖った武器である。


 ジュリアスはタマモの杖と糸の指輪。タマモの杖はランダムスティールをしてくれる。神器なのだが、もう一つ魔法効果を高める武器がほしいところだ。


 ジュリアスはカードモンスターのアシュラキャットに、何か神秘的な武器がほしいと希望した。セバスは在庫の中から、聖斧を見つけてくれた。銀色の小ぶりの斧である。破邪の効果があるようだ。


 あと1か月。どちらかと言えば、エルフパーティーが優勢である。もし負ければルミエはエルフパーティーに行ってしまう?行かないでも揉めることは確かだ。


 2週間後、ユグドラシルから戦いの順番が示された。1番盾士ガンズ。2番弓士クリスタ。3番賢者ピピン。最後は勇者マジューロ。先にどちらかが3勝しても、最終戦まで戦うことになっていた。

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る