第37話 盗賊団に襲われる
テッドのケリーへの訓練はさらに進んでいる。市場のお使いの指名依頼は変らない。テッドの店に着いたら、冒険者ギルドから市場のその店まで、ケリーが移動した経路の地図を描かされる。曲がり角の目印も描いて、知らない人でもこの地図で行けるように。
行商はいつもの周辺の村だが、ケリーのいるポジションは御者台ではない。御者をやらせてもらって、やっとうまく扱えるようになったところだ。だがこの頃は護衛の馬の上。大人しいし賢い馬で、道順知っているから大丈夫と言われた。それでも最初は怖かった。
何日かすると少しは慣れた。そんな時だ。護衛は気配を察知するために、いつも周りを警戒している。ケリーは嗅覚強化と聴覚強化のスキルをもらっているので、前よりもさらに気配に敏感になっている。
争う声が聞こえてきた。かなり遠いが急げば数分の距離だとわかる。別の商人の馬車が盗賊団に襲われている。テッドに急いで教える。
「テッド。向こうで商人が襲われている。盗賊だと思う。10人くらい」
アリアは人化して、気づかれないように、もう走っている。ワイズも一緒だ。アリアの服に引っ付いているようだ。ワイズというのは3日前に孵化したアリ型モンスター。ケリーの従魔になった。賢くなって欲しいからケリーがワイズと命名した。
護衛の人が代わって馬に乗り、ケリーの指さす方へ、とりあえず走りだす。ケリーはテッドの隣に乗ってその後を追う。場所はピュリスの南、王都アリアスへ向かう街道だ。まだ馬車で城門から10分走ったばかり。テッドは助けを呼びに行くか迷ったが、早く現場に行くことを選んだ。テッド自身も腕が立つ一流の戦士だった。護衛も強い。
現場に着くと大型の馬車が盗賊団に囲まれていた。その馬車についていた護衛は二人。荷主の商人も強さに自信があるのか、剣を持って戦っている。そこにテッドの護衛が既に参戦している。さらにアリアが通りがかりの冒険者として小弓で参戦。
5対9で数の上では商人側の劣勢だ。だが盗賊団の3人は、すでに矢を受けて戦闘不能になっている。そこにテッドの参戦だ。ケリーは動けない3人を縄で縛る大活躍。盗賊団は逃げ出した。
テッドと襲われた商人、アリアとの間で話し合いが行われ、通りがかりの冒険者(実はアリア)には200万チコリの謝礼。アリアは急いでいると言って姿を消した。ワイズはいつの間にかケリーのポケットに帰ってきた。商人は捕まえた3人を連れてピュリスに戻り、衛兵に引き渡す。テッドにはあとで挨拶ということに。
時間は遅れたがいつも通り行商を済まし、馬に乗ってリリエスが迎えてくれる場所に来た。今夜の家は古代遺跡の塔だ。テッドが盗賊事件のあらましを語っている。テッドが去るとリリエスは
「それで蜘蛛女は?」
「通りすがりの冒険者になって、盗賊団と戦って、200万チコリもらっていなくなった」
「ワイズは?」
「ポケット」
「じゃあ行こう」
「どこへ」
「盗賊退治に決まっている」
嗅覚強化されているケリーが先頭に立つ。現場には様々な匂いがあった。
「蜘蛛女の匂いをたどればいいんだよ。やつは必ず盗賊団をつけている」
アリアの匂いならいつも嗅いでいるから、間違えることはない。
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