ゴミ漁り奴隷が成り上がるまで
神森倫
第1話 パーティ追放
ついに私たちのパーティが昇格した。今日はその昇格祝い。仕事は休みだ。
私はリリエス。万能の冒険者だ。パーティではサブリーダーを務めている。前衛もできるし、魔法も使える。それだけではない。マジックバッグも作れるし、付与魔法で武器の耐久を上げたり、戦闘の時はバフもかけてあげられる。何よりの私の武器は美貌だ。何人もの男を虜にしてきた。いまのリーダー、剣士のサミュエルも私にぞっこんだ。
そのサミュエルから改まって話があると部屋に呼ばれた。
「リリエス。今日でパーティーをやめてもらう。追放だ。すぐ出ていけ」
「冗談言うんじゃないわよ。誰のおかげで昇格で来たと思っているのよ。2年前、ど田舎から出てきた3人を一人前の冒険者にしてあげたのは誰だと思っているの」
「確かに最初は有難かったさ。幼馴染4人でビュリスの大都会に出てきて、冒険者になろうとした俺たちだったからな。成人の儀が終わったばかりの15歳だった。それをここまでしてくれたことには感謝しているさ」
「あんた私を愛していると言わなかったかしら。私が初めての女なんじゃないの。私の身体に夢中だったわよね」
「リリエス。あんたの本当の年齢45歳なんだってな。俺には31歳って言ってたよな」
「女は年齢じゃないわよ」
「俺の初恋の相手は、あんたに追い出されたナタリーだ。俺たちは結婚の約束をしていたんだ。あんたに誘惑されていなければ、今頃結ばれていた」
「あんな地味な小娘どこがいいんだか」
「ナタリーと偶然再会してな」
「まだ生きていたんだ」
「立派にヒーラーとして成長して、きれいになっていた。あんたよりずっと。このパーティに戻ってくれることになった。ヒールのレベルは3だ。リリエス、あんた30年やっててまだレベル2だよな」
「その代わり私は4属性魔法すべて使えるし、付与魔法もつかえるのよ。私が抜けたらパーティーは成り立たないわ」
「心配してくれなくても大丈夫。俺たちは十分強くなっているんだ。みんな自分の役割はきちんと果たせる。それぞれの技能はレベル3になっている。30年やっているあんたが一番得意なのがヒールのレベル2だというのは信じられないくらいだ」
「私は万能型だから」
「いろいろできるけどレベル1。使えないんだよ。30年ほとんど努力してこなかったんじゃないか。マジックバッグだってポーション入れたらおしまいだし、バフは5分で切れる。才能はあったのかもしれないけれど、レベルが低すぎてどれも使えないんだ。俺たちはやっとDランクに上がって一人前の冒険者になる。その前にパーティーの恥をきれいにしておきたいんだ」
「私がいなかったら経理とか消耗品購入とかすぐ困ることになるわよ」
「あんたパーティーのお金使いこんでいるよな。博打や酒場の借金、パーティーの財産で払っていたし、業者から裏金もらっていたことも分かっているんだ。もう返せとは言わないから、荷物まとめて黙って出て行ってくれないか」
「愛が冷めたというの。あんなに愛してるって言ったくせに」
「リリエス。こないだマイクを誘惑したんだって。マイクが言っていたよ。お前がどれだけ他の男と遊んでいたか」
リリエスにはもう言い返す言葉がなかった。サミュエルの言うことは全部本当だ。
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新作始めました。この『ゴミ漁り奴隷の成り上がるまで』の続編です。
『ダンジョンを武器に世界大戦を勝ち抜く』もよろしく。
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