第38話 俺の番号が赤文字なんだけど大丈夫かな
コウトの街で新しい武器と防具を手に入れた俺。ただ、両方とも真っ黒なのは何かの因縁とかめぐり合わせなのだろうか? 誰か教えて。
リタが俺の鎧姿を見て、漆黒のエリオだなんて二つ名を付けていたけど、とうとう武器も真っ黒な大業物を持つ事になってしまったもんな。もう一度この大業物を眺めてみるが、真っ黒な太い柄の先に穂先があり、その下側に細長い半円状の湾曲した刃が水平方向の両側に柄を中心にして平面として見ると楕円形のような形で張り出している。
経緯はともかくとして、これで俺も称号やスキルに相応しい装備を身につけたと前向きに考えておこう。そうだ、一応従魔のコルとマナに感想を聞いておくか。
『コルとマナは俺の黒ばかりの装備を見てどう思った?』
『僕は格好いいと思いました』
『エリオ様には黒が似合ってると思いますわ』
そうか、従魔から前向きな感想が聞けて俺は嬉しいぞ。
でも、二匹ともそれってまさかお世辞じゃないよね?
可愛い従魔が言うのだからここは素直に信じてあげよう。
◇◇◇
そんなこんなで各人それぞれ自分の目的に沿いながら過ごし、とうとう合格発表の日がやってきた。試験を受けた印象では俺や仲間が落ちるとは思っていないが、こういうのはやっぱり発表までドキドキするものだ。
底辺時代は何かに合格するなんて場面はほとんどなかったからな。自信をつけた今でもあの底辺時代の思い出が頭をよぎってしまう。さて、準備も完了したので待ち合わせ場所の宿のロビーに向かおうか。
『コル、マナ、そろそろ行こうか』
『『はい』』
「義兄さん、おはようっす」
おいおい、誰が義兄さんだ!
俺の姿を見るなり義兄さんと呼ぶおまえはロドリゴか!
「エリオごめんね。うちの弟は気が早くてさ。エリオを義兄さんと呼ぶのが待ちきれないみたいなんだよ」
リタの言い方もある意味で確定事項になってるぞ!
「私はリタさんに一番目の地位は譲って二番目の地位でもいいかな」
ミリアムよ、一番目とか二番目って何だよ?
「ガッハッハ、モテる男は辛いなエリオ!」
「フッ、若いっていいよな」
「エリオ殿、娘を幸せにする覚悟はありますかな?」
あー、朝から重たいってば。
「えー、ゴホンゴホン。今日はこの前受けた試験の合格発表日です。これから駐屯所跡に向かいたいと思うので出発しましょう!」
無理やり話題を変えて事なきを得たけど、寿命が縮むから皆やめてくれよな。宿を出て駐屯所跡の会場に向けて歩いて行く。街のあちこちから同じ方向へ歩いて行く武器を持ち装備を身に着けた人達がいるけど、もしかしたらこの人達も部隊へ応募した人達なのかもな。俺が連れている従魔を見て顔が緩んでる人もいるぞ。
そんな人達と同方向へ一緒に進むと石造りの大きな建物と練兵場がある駐屯所跡が見えてきた。確か仮本部で合格者の受験番号が掲示板に貼りだされるんだっけ。中へ入ると大きな掲示板が置かれており、その周りには大勢の人達が結果が貼り出されるのを待っていた。
「凄い人の数ですね」
ミリアムが言うように大勢の人が掲示板周辺に集まっている。
俺達も掲示板の前に向かおう。
暫く待っていると、ざわざわと騒がしい人達の合間を縫いながら丸めた大きな紙を持った人達が掲示板に近づいてきて、そのうちの一人が俺達に向き合い宣言をした。
「これより試験の合格者を発表する。合格した者は番号で発表するので、試験後に受け取ったカードに書かれている番号と一致している者が合格者だ」
そう言うと、手に持っていた紙をどんどんと掲示板に貼り付けていく。
貼り終わった紙の前には発表を待っていた人達が一気に群がりお祭り状態だ。
あちこちから歓声が上がっているところを見ると、ほとんどの人が合格してそうだ。でも、中には不合格の人もいてがっくりと肩を落としてる姿も見える。
「さあ、俺達も見に行きましょう」
ある程度落ち着いてきたので俺達も掲示板に貼り出された紙を見に行く。俺達は連続した受験番号なので、確認がしやすいから一気に皆の結果がわかるはずだ。
「ガッハッハ、全員合格だな」
「フッ、当然だろう」
「全員合格出来て良かったですな」
まあ、当然と言えばそうなんだろうけど無事に全員合格だ。でも、俺の番号が赤くなってるけどこれはどういう訳なんだろう。他にもちらほらと番号が赤く書かれている人がいる。
「皆、こちらに注目してくれ」
さっき合格発表の宣言をした人が俺達に向けて話し出した。
「合格した者は手続きがあるので建物内の仮本部受付まで来てくれ。それと、番号が赤い字で書かれていた者は練兵場に集合してくれ。以上だ」
俺の番号は赤い文字で書かれていたから練兵所に呼び出しなのか?
「俺の番号が該当するんだけど、もしかして俺って補欠合格なのかな?」
「まさかあたし達より強いエリオが補欠合格なんてあり得ないよ。何かの間違いじゃないの?」
リタはそう言うけど、どうなんだろう。
「まあ、いいや。ちょっと行ってくるから先に手続きして待っててよ」
『コル、マナ、ついてこい!』
『はい、主様』『わかりましたエリオ様』
とりあえず、行ってみるのが一番早い。俺はリタ達に手を振り練兵場へ駆けていく。既に何人か練兵場に着いていて、俺の後にも続けて人が入ってくる。そして、その中の一人に見知った顔を見つけた。
「カウンさん!」
「おお、エリオ殿ではないか。それがしの事を覚えていてくださったか」
「そりゃ覚えていますよ。ところでカウンさんも練兵場に呼ばれたんですか?」
「そうなのだ。それがしの番号が赤く書かれていてな。よくわからないがここに呼び出されたのでこうして来たのだよ」
カウンさんも呼ばれた理由がわからないのか。うーん、カウンさんが補欠って訳でもなさそうだしな。俺やカウンさんが呼ばれたのは他に理由があるのかな?
「皆、こちらを向いてくれ。ここに呼ばれた者達は何隊か作る予定の部隊長候補としてピックアップされた者達だ。面接や試験の結果を踏まえて強さや実績、推薦の有無などを考慮して候補者を選んだ。これから選抜試験を行い、その結果によって各部隊長を決めるつもりだ」
いくつか作るつもりの部隊長を決める為に俺達はここに集められたのか。
てか、この俺が部隊長候補としてピックアップされたんだよな。いいのか俺で?
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