第10話 スキルの確認

 次の日の朝。

 目が覚めた俺は暗い中、ベッドから起き上がって自分の部屋の中を見渡す。

 ベッドの脇ではコルとマナは床に置かれた布の上で丸まって寝ている。


 ふう、改めて昨日のことを思い出すと夢のような一日だったな。

 あれから街に帰り、ギルドに薬草を納品しに行った時も俺の意識は半ばうわの空だった。


 今日は昨日のことが夢ではないのを確認する為に、一旦教会に行って知識の石版を使用してみようと思っている。ただ、使わせて貰うのに教会に寄進料を収めなくてはならないのが頭が痛いところだ。


 でも、今回ばかりは昨日の事があったので多少の出費は仕方ない。

 まだ半信半疑な気持ちがあるので、実際に知識の石版に玉から授かった俺の新スキルが文字として表示されたならば現実として実感出来るだろうし。


 教会には俺一人で行ってもいいのだが、その後は直接街の外に出て昨日薬草を採取した場所に向かうつもりなので教会にはコルとマナも一緒に連れて行く予定だ。


 剣術スキルレベル5は獲得したけどそれはそれ。

 暫くは薬草採取の予定を組んでるからな。


「おーい、コル、マナ、起きろー」


 俺が呼びかけると二匹とも片目だけ開けて俺を見上げてくる。


「もう少ししたら出かけるぞー」


『わうー』『わぁう』


 俺の声に反応した二匹は大きく伸びをしながらのそのそと起き上がってきた。

 キョトンとした顔でどこへ行くのとでも言いたげだ。


「今日は教会に行ってからその後は昨日と同じ場所に行くからな。よろしく頼むぜ相棒達よ」


『『ワウ!』』


 うむ、返事が元気でよろしい。

 チャチャっと身支度を済ませ、軽い朝食を食べて準備を整え出発だ。

 コルとマナはそのまま出かけられるから楽だよな。


 二匹を連れて家を出た俺は教会に向かって歩いて行く。

 教会の朝は早い。朝のお祈りをやってるので早起きなんだよな。


 ダムドは辺境の田舎街で小さいので暫く歩くとすぐに街の中央にある教会の前に到着した。まだ閉まっている正面の大きな門の脇にある通用門の扉を通って敷地の中に入り、右手の奥にある知識の石版が置いてある建物に向かっていく。


 コルとマナは従魔といえども魔獣なので教会に入れるのかなと疑問に思ったが、二匹とも平気な顔をして俺に付いてくる。


 よくわからないけどそういうものなのか。


 あとは建物の横にある小部屋に居るシスターに寄進料を払えば知識の石版が置いてある部屋の鍵を渡されるのだ。


 俺は小部屋に近寄り声をかける。


「おはようございます。知識の石版を使用したいんだ。あと、この二匹の従魔を教会の敷地に入れてしまったけどいいのかな?」


 すると小部屋の中からシスターが姿を見せてきた。


「おはようございます。石版を使用なさりたいのですか? それと従魔なのにその二匹は嫌がらずに入って来たのですか。既に従魔になってるのなら問題ないですけど、普通は嫌がるんですけどね。それはそうと、石版を使用するならば決められた額の寄進をお願いします」


 決められた寄進料の金額は5万Gだ。

 普通に稼いでる連中には大した金額ではないだろうが、俺みたいな底辺にはちょっと二の足を踏んでしまう金額なんだよな。

 まあ、今回は本当かどうか念の為の確認だから奮発しちゃうけどさ。


 俺はシスターに懐の財布から5万Gを出して渡し、それと引き換えに知識の石板がある部屋の鍵を受け取った。


「終わりましたらこちらへ鍵をお返しくださいね」


「はい、わかりました」


 シスターから鍵を受け取った俺は知識の石版の建物の扉の前に立ち、鍵穴に鍵を入れて回す。カチリと音がして解錠出来たので扉を開けてコルとマナを連れ中に入り内側からまた鍵をかける。小さな建物の奥に石の台に固定された知識の石版が鎮座していた。


 近づいて腰の高さにある表面がまっさらの知識の石版を眺める。

 後は手を石版に置くとその人が持つ称号やスキルが石版に浮かんでくるはずだ。

 俺がそっと右手を石版の上に置くと、石版から俺に魔力が流れるような感覚が来る。一通り俺の体を巡った魔力は右手から石版に戻って行き、暫くすると石版の表面に文字が浮かんできた。


 ◇◇◇


 名前:エリオット・ガウディ

 種族:人族

 称号


 スキル

『剣術5』


 魔法

『聖魔法5』


【従魔】

 名前:コル

 種族:不明


 称号・スキル・魔法

 不明


 名前:マナ

 種族:不明


 称号・スキル・魔法

 不明


 ◇◇◇


 おお! 夢じゃなかった。

 知識の石版にはしっかりと剣術5と聖魔法5の文字が浮かび上がっている。

 これで今まで馬鹿にされ蔑まれていた日々も終わるかもしれない。いや、きっと終わるはずだ。俺はその文字を見ながら感動と感激で胸を熱くしていた。


 そういえば、元々持っていた剣術レベル1のスキルは上乗せされる訳ではなく、新しく取得した上位のレベルに上書きされてしまうんだな。


 よく考えてみればそりゃそうか。

 上乗せ出来たら比較的見つかりやすいと言われているレベル1の玉を十個用意すれば簡単にレベル10になってしまうもんな。さすがにそんな簡単にはいかないか。


 知識の石版には俺の情報だけでなく、従魔になったコルとマナの情報も出ているが、なぜか知らないが二匹とも名前以外はまともな情報がない。これは一体どういう事なんだろうか?


 知識の石版でも表示出来ない事があるんだな。

 もしかして使役のスキルなどを使わずに従魔にしてしまったのが原因なのかも。

 いつかそれ関連のスキルを取得したら変化があるのだろうか。


 よし、とりあえず俺に新スキルがしっかりと身に付いているのは確認出来た。

 この後は教会に寄った遅れを取り戻すべく昨日の場所に薬草採取に行かないとな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る