ハニービー
「フレイムダンス!」
「ハイストーン!」
「えい!」
みんな順調にハチを倒している。
カニを狩りつくすと、俺達は海岸から内陸の未開地に移動した。
移動すると当然魔物のタイプも変わる。
今はハチを狩っている。
俺は魔法も織り交ぜながら攻撃を続けた。
戦闘が終わった後、ルナの様子がいつもと違った。
驚愕の表情を浮かべる。
「ルナ?どうした?」
「これは、ハニービーです!巣を探しましょう!巣の中に貴重なはちみつがあるんです!アーサー王国に持って帰ればおいしいお菓子を作ることが出来ます!」
「待て待て!奥に突っ込んで包囲されたらまずい!慎重に魔物を狩りつつ進もう!最後にはちみつを取っても問題ないだろ?」
「そ、そうでした」
ルナはしゅんとした。
これ、他の人に見られたらスイーツハンター姫とか変なあだ名をつけられるぞ。
ルナはものすごい勢いでハチに突撃して狩っていた。
そして遭遇する。
「でかい!」
巣は半円に六角形の入り口がいくつもある巨大な要塞のようだった。
「中にボスの反応がある。女王バチか?」
「多分そうだよ。一番楽なのは、僕がブラックホールの魔法を使う事だよ。これで半分以上の魔物をせん滅できるけど、ルナはそれじゃ納得できないんじゃないかな?」
「いけません!貴重なはちみつを無駄にしてはダメです!」
「これ中に入ると総攻撃を受けるやつだけど、大丈夫か?芋虫が出てきてべとべとになるぞ」
「大丈夫です!」
「エムルとベリーは外で適当にハチを倒しててくれ。俺とルナは突撃して内部を全滅させる」
「わかったわ」
「まかせてよ」
俺とルナが中に入ると、大量のハチの幼虫が出迎えた。
うん、こうなるよな。
ルナは芋虫の粘液でドロドロになりながら倒していた。
当然俺もドロドロになった。
魔法を使いたい衝動に駆られるが、はちみつを駄目にしてしまうとルナが悲しむ。
ここは我慢だ。
奥に進むと、女王バチとその精鋭が出迎えた。
「キュイーーーン!」
女王バチは高音の音波を出した。
これ絶対仲間を呼んでいる!
ルナは一瞬で斬りかかって女王バチを圧倒する。
「これで終わりです!」
ルナは女王バチに止めを刺した。
「全部倒したけど、ここからが本番だぞ!もっとべとべとになるぞ!」
「覚悟のうえです!」
俺たちは芋虫とハチに集中的に狙われつつも全滅させた。
「ルナ、べとべとになってるけど大丈夫か?」
「必要な犠牲です!それよりもはちみつを探しましょう!」
「そうだな」
ルナのスイーツ魂が燃えている。
ルナはもう止まらない。
止めることは出来ないだろう。
この巣は全滅する運命だったんだ。
その後ルナは蜂の巣をくまなく調べ、はちみつを発見した。
はちみつは六角形の筒状のカプセルの中に入っており、そのすべてを俺のストレージに入れた。
俺たちが外に出ると、ベリーは声を上げた。
「べとべとじゃない!早くお風呂に入った方が良いわ!」
「はあ、はあ、ルナ君の体がすごいことになっているよ!ウインに見られているんだ!」
ルナの下着が透けて、皮膚に服がべっとりと張り付いていた。
「え?ああああ!ウイン!見ないでください!」
「えええ!?」
あれだけべとべとになってるって注意したのに今更か!
今気づいたのか!
どれだけスイーツに全集中していたんだ!
普段の恥じらいを置いてきたんじゃないか!
だが、ルナもこれでおとなしくなるか。
とはならない。
ならなかった。
この次の日も次の日もしばらくべとべと地獄は続いた。
そう、ルナは気づいた。
「下着の代わりに水着を着れば見られても平気ですわ!」
と急に叫んでそれを実行した。
だがルナを見ているとエロく感じる。
べとべとの粘液によって皮膚に服が張り付く。
国民がこの姿を見たらどう思うだろうか?
俺はルナがべとべとになっているのをちらちら見ながらハチを倒した。
このくらいの事はやっても仕方ない。
見えるし!
水着じゃなければ尚良かったのだが。
「毎日ハチを狩ってるけど、あとちょっとでハチ退治は終わりだと思う」
俺は斥候もかねて魔物を倒していた。
周辺の魔物の分布は掴んでいる。
「そうですのね。ですがたくさんのはちみつが取れましたわ」
「蜂の巣はあと3つだ。ん?蜂の巣が襲撃を受けている。熊だな!」
「いけません!はちみつを取られます!急いで倒さねば!」
ルナは走って行った。
「……追いかけるか」
「……そうね」
ルナは鬼気迫ったように熊を中心に倒していた。
「はちみつは私の物です!!」
熊を全滅させると、巣の中に突撃していった。
「……行ってくる。一緒に来るか?」
「わ、わたしはいいわ」
「だよな」
俺はルナを追った。
ルナは馴れたもので、女王バチに一気に接近し斬撃を何度も浴びせて倒し、周りの精鋭部隊もすぐに倒した。
ハニービーキラーの称号をあげたい。
ルナははちみつのある部屋をすぐに見つけて俺を呼んだ。
うん、回収しますよ。
「次は熊だな!」
「……そうですわね」
ルナは燃え尽き症候群のように無表情だった。
今まで明らかに疲労している。
疲れが出てもしょうがない。
「エムル、ベリー、頑張って倒すぞ!」
「わかったよ」
「まかせて」
ここら辺は熊の縄張りか。
ボスクラスが異様に多いな。
俺たちは魔物の生息地を外から削るように毎日倒していった。
ルナは過労でベッドで数日休んだ。
◇
しばらくすると、トレントの生息地に当たった。
「トレントか、木の素材に使えるな。」
「待ってください!あれはシュガートレントです!胴体の中心部分に高品質な砂糖を大量にため込んでいます。胴体の中心部以外を攻撃して倒しましょう。もちろん燃やすのも駄目です!」
「う、うん、そうか」
ルナは新たな素材に希望を見出しているようだ。
突っ込むのは止めておこう。
ルナのスイーツ魂は止められない。
「魔物呼び!」
ルナは魔物呼びのスキルをためらいなく使った。
「全部狩りつくします!」
俺たちはシュガートレントを狩りつくした。
ルナ、ハニービーの時もそうだったけど、それ一生かかっても食べきれない量だぞ。
「ルナ、このシュガートレントってどうするんだ?ルナ一人だけじゃ食べきれないだろ?」
「アーサー王国とディアブロ王国のお菓子店に売るんです。スイーツ店にとって良い刺激になるでしょう」
「う、うん、そっかー」
スイーツ姫、伊達じゃないな。
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