未開地探索

「カニだ!カニ鍋にするぞ!」

「焼いて食べるのもいいわね」

 俺達は今カニの魔物と対峙している。

 

 未開地なだけあって大量のカニの魔物がいた。

 俺の身長と変わらない大きさのカニもいる。

 ボスは3メートル以上の大物もいそうだ。


 アーサー王国の王都を出てから港町ブルーオーシャンに向かいそこを海沿いに進んだらカニの群れがいたのだ。

 テンションが上がる。

 全部倒してストレージに入れてやる!


「ふふふ、やっぱりカニがいたか!エビも見つけるぞ!」

「デイブックの人はカニとエビが好きだね。僕は食べた事が無いよ」

「私もですわ」


 俺は急所に刀を差し込んで1撃でカニを倒す。

 百発百中、1撃で止めを刺す。

 貴重なカニを無駄にはしない。


「わ、わたくしも頑張りますわ」

 ルナも急所を狙って戦う。


「これは、魔法で倒してもいいのかい?魔法を使ったら僕を罵るのかい?」

「気にせず倒してくれ」

「……分かったよ」

 エムルは残念そうにカニを倒していった。


 俺達はハイペースで魔物を狩った。




 キャンプハウスでルナはベッドにうつぶせで寝込む。

 顔に枕が埋まり、動かない。

 ルナは疲れるといつもこれをやる。


「ルナだけレベル100に到達していないからね。負担がかかるのは当然さ」

「だが今はレベル90台だ。ここを乗り越えればまた一気にレベルを上げられる」

「少し張り切りすぎちゃったわね」


「休んでいる間にカニを料理しておく」

「私も行くわ」


 俺とベリーは外でカニの甲羅焼きを作る。

 

「ふん!」

 カニの甲羅を力でこじ開け、大鍋ほどの大きさがある甲羅を炙る。

 酒と味噌を入れて火を通していく。


 足は1本だけを切断して焼いていく。



「良い匂いがしてきたわ」

「ふふふ、もう少しで完成だ」


 ルナをおんぶしてエムルが外に出てくる。

「いい匂いだよ」

「楽しみですわ」


「ルナ、大丈夫か?」

「体中が痛くて疲れただけで、食欲はありますわ」

 なるほど、大丈夫じゃないか。


「うむ、そろそろいいだろう」

 俺は焼いたカニの足に刀を入れて殻を外す。

「い、今殻を外す動きが見えませんでしたわ!」

「ウインは包丁人でもあるようだね」


「普通だ」

「普通じゃないわ。でも食べましょう」

 焼いたカニの足を甲羅焼きに浸してからベリーの顔の前に持って行く。


「さあ、食べてくれ」

 ベリーがカニの足にむしゃぶりついた。


「……あひが、おおきひわね」

 足が大きすぎて食べづらいか。

 俺もそれは思っていた。


「はあ、っはあ!僕も!僕にもむしゃぶりつかせてよ!」

 エムルも嬉しそうにカニの足を食す。

「むぐむぐ、おいひいよ」


「この足はカットして甲羅焼きに入れよう。カニが大きすぎる」

「そんなことは無いよ!この食べ方には風情がある!僕はデイブック流の文化を尊重するよ!!」

 俺は反対するエムルを無視してカニの足を切って甲羅焼きに入れた。

 器に甲羅焼きを盛ってみんなに配った。

 

 そして俺は無言で甲羅焼きを食す。

 うまみが濃い。

 濃厚でもう一口もう一口と食が進む。

 

 カニ足の食感も程よく弾力があって丁度いい。

「アーサー王国に広めるべき逸品だ」

「その通りね」




 4人はほぼ話をせず無言でカニの甲羅焼きを食べた。

「だが、さすがに量が多い」

「食べきれませんわね」


「誰か来た!」

「何も感じ……来ましたわね」


「シー!マイン!2人は冒険者の知り合いよ」

「やっと会えたかな!」

「ベリーだよ!」

 ベリーはシー・マインと抱き合った。


 抱き合ってる姿にエロスを感じる。

 良きかな。

 エムルが俺の顔を見てコクコクと頷く。


 エムルがなんかむかつく。

「この2人はウインが居なくなってから勇者パーティーに短期間だけいた友達よ」

「それは、大変だっただろう」


「そうだよ、大変だったよ」

「それよりも、カニの甲羅焼きかな?」

 シーとマインは甲羅焼きを見つめる。


「そうね、2人も食べる?」

 こうしてシーとマインも甲羅焼きを堪能する。


「俺はカニを狩ってくる。皆はゆっくりしていてくれ」

 全部のカニを狩ってストレージに入れてやる。

 俺はしばらくカニ狩りを続けた。




 カニ狩りに満足してキャンプハウスに戻ると、シーとマインは帰って行ったらしい。

 シーとマインは定期連絡係のようだ。


「ウイン、アーサー王国の情報を言うよ。デイブックから思った以上に人口が流入しているみたいだよ。軽く人口20万は超えるみたいだね。農地の開墾が決まったのと、多くの冒険者がアーサー王国に来たおかげで、国内の魔物狩りの目途は尽きそうだね」


「アーサー王国は食料と住居が不足しそうだな」

「錬金術師が集まってきているので住居は時間が経てば解決すると思いますわ。ですが、食料は足りなくなるかもしれませんわね。予想より人口の流入速度が速いのですわ」


「カニをたくさん配るか。デイブックから冒険者が多く来たって言うけど、デイブックは大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃないかもしれないわ。国が衰退するかもしれないわね」

「だよなあ」

 今はアーサー王国を助けて、ディアブロ王国を助ける予定だ。

 デイブックは放置だな。


「この国に来たら、デイブックには戻りたくないって思うよな」

「そうね。シーとマインは他の冒険者を呼ぶ為に一回帰ってるみたいよ。でもまた戻ってきたみたい」

「家族や仲間を呼んでアーサー王国に帰って来るのか。確かにそれだとデイブックは衰退するよな」


「ウイン」

「ん?」

「エビはいた?」

「まだ見つけていない。ここ一帯はカニの縄張りだ。だがカニを狩りつくす。【未開地探索】の名目だが、見つけた魔物は基本倒す」


「そうですわ!探して倒しますわよ!」

 ルナが燃えている。

 レベル100を目指しているのが伝わってくる。


「そう!その通りだ!斥候をして戻るなんて無駄だ。見つけたら倒せばいい!」

 俺達は海岸のカニを殲滅するまで海岸地帯で魔物狩りを続けた。







 

 

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