【バグズ視点】敗走するバグズ

 こんなはずではなかった。

 勝てるはずの戦いだった。


 だが俺は傷を負いながら逃げ帰っている。

 

 安全な場所まで後退すると夜になっていた。

 キャンプをしながら考える。

 始めは順調だった。


 アーサー・デイブック・ディアブロ、すべての国に斥候を放ち、国の軍事力を見極めた。


 デイブックの軍事力が1番高いが、問題無く潰せる。

 現に南部を攻撃し、男を殺し、繁殖用の女を奪った。

 警戒したが強敵は出てこない。


 だが勇者がゴブリンの軍をアーサー王国に誘導した。

 恐らく魔道具の力だろうがそれも問題無かった。


 距離が遠いが最弱のアーサー王国を始めに潰そう。

 誘導に引っかかる雑魚について行きアーサー王国を目指した。

 勇者の逃げ足が速く見失ったが、数日王都に向け進軍しつつ王都を落とす作戦を考え実行に移した。


 圧倒的に俺が有利、そう思っていたが誤算があった。

 アーサー王国の王都に魔王が居たのだ。

 アーサー王国とディアブロ王国は交流が無かったはずだ。


 魔王の特級魔法により、万を超えるゴブリンが倒された。

 だが問題無い。


 アクシデントは発生するものだ。

 奥の手に備えてエース部隊を温存していた。

 主力に被害はない。


 南の城門を破壊し、一気にゴブリン部隊がなだれ込むがここでも誤算があった。

 どうやら罠があったらしい。

 エース部隊が300やられた。

 だが問題無い。


 数の力で押し切って解決した。

 敵の手が出尽くした事を確認し、雑魚どもに東西南北の門を包囲させた。

 勝ちが確定していたはずだった。


 そして雑魚を突撃させた。

 魔王がブラックホールを1回だけ使ったが問題無い。

 魔王は魔力を使い果たして倒れた。

 もうなにも無いはずだった。


 そう、問題無いはずだった。

 その瞬間他の魔族の娘が魔法攻撃を連発してきた。

 魔王ほどの威力は無いが、なぜ今まで温存していた?

 意味が分からない。

 俺なら魔王が最初に使ったタイミングで使っている。


 そこからおかしくなった。

 南門から押し出されるようにゴブリンが吹き飛ばされた。

 黒目黒髪の奴、ウインが来てからおかしくなった。


 そう、あいつだ!

 全部あいつが来ておかしくなった!

 奴の放つサイクロンの魔法は魔王を超える威力を持っており、しかも異様な速度で魔法を連発してきた。


 近づけば剣で斬られ、囲んで近づいても剣で斬られて倒れていく。

 まとまれば魔法で一網打尽にされ、間隔を空ければ各個撃破された。

 この俺が倒すしかないと思った。


 だが、他の者が騒ぎ出す。

 俺が戦うと喚きだす。


 1体は斬り殺した。

 馬鹿は必要ない。

 馬鹿はウインにけしかけて死んでもらう。

 

 名乗りを挙げたエースは全員ウインに殺された。


 無能は居なくなった。

 俺がウインを殺せば終わりだ。


 剣を打ち合い、嫌な予感がして後ろに飛んだ。

 気づいた時には腹を斬られていた。

 斬られるまで気づかなかった。


 奴の方が背が小さい。

 死角から攻撃したのか?

 俺の目でとらえきれなかったのか?

 今でも分からない。


 死の恐怖を感じた。

 俺は反射的にゴブリンをけしかけ切り札のスキルすら使い撤退した。


 ゴブリンの数が減った。

 補充が必要だ。

 そして俺の戦闘力を強化する必要がある。


 そして分かった事がある。

 今アーサー王国には手が出せない。

 殺されるだろう。


 俺は無言で近くにいたゴブリンを斬り殺した。

 周りのゴブリンがバグズから離れていく。

 力が必要だ。


 俺のレベルを上げる。

 ゴブリンの数を増やす。


 休息が終わったら、デイブック南部の更に南部の未開地に戻る。

 人も、魔物も殺して殺して殺して強くなる。

 女を奪って数を増やす。


「待っていろ!ウイン、次は殺してやる!」

 バグズは口角を釣り上げた。


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