スタンピード⑤

 5体のゴブリンが俺に獲物を構えた。


「いっておくが、おれはつよい」

「おまえ、よわい。おれ、つよい」

「ききききき、殺す」

「お前は雑魚狩りは得意なようだ。だがその戦いは俺には通用しない」

「ふ、疲れたか?疲れただろう。だがお前が負けるのはお前の実力不足だ。死んだ後自身の愚かさを悔いるんだな」


「5体同時に話をされても何言ってるか分からない。一体づつ話をしてくれ」

 同時に話をするな。

 だからゴブリンと話すのは嫌なんだ。


 5体のゴブリンが騒ぐが何を言っているか分からない。

 だから一斉に話をするなって言っただろ。

 時間の無駄だ。


「ハイウインド!ハイウインド!」

 2回の風魔法でゴブリンを切り裂く。

 傷は負わせたが皆立っている。


 俺は5人のゴブリンを縫うように走り抜け、ショートソードで1撃づつ斬撃を食らわせた。

 2体のゴブリンが倒れた。


 これで倒れないか。

 一応エースみたいだな。

 俺は折り返すようにショートソードの連撃を食らわせてすべてのゴブリンを倒した。


「ふ、やはりこうなったか」

「お前何がしたいんだ?部下が死ぬって分かってたんだろ?普通止めるだろ」

 ゴブリンお考えは分からない。

 考え方が完全に違う。



「馬鹿はいらない。次にこいつに挑みたい馬鹿は居るか!?」


「……」

「……」


「馬鹿を全部殺す気か?さっき倒した5体はエースだろ?」

 バグズが俺に斬りかかった。

 俺はショートソードで受け止める。


 こいつ急に攻撃してくるし、思考が読めない。

「俺に口答えする奴は許さん。貴様はどのみち殺すが俺に口答えするな!意見するな!この無能が!」


 『無能』か、ブレイブを思い出した。

 その言葉はブレイブの口癖だ。


 こいつと話をしても無駄だ。

 俺はバグズの腹を斬る。


 バグズは後ろに飛ぶが、それでも俺の攻撃を防ぎきれず、腹に大きな傷を負った。

「ぐおおおお、ぐ、ああああ!こいつに総攻撃を仕掛けろ!」

 そう言いながらバグズは下がる。


「キングタイム!」

 バグズのスキルの影響か急にバグズの動きが良くなる。


 味方をけしかけて自分は逃げる。

 ますますブレイブのようだ。


 バグズはエースと部下を連れて撤退していく。

 残ったゴブリンを駒のように切り捨てて。


 防壁の上から歓声が聞こえるが、俺はゴブリンを倒し続けた。


 俺は残ったゴブリンを魔法と剣で一掃し、残りの門にいるゴブリンも強襲した。

 魔力が無くなるまで戦い、その頃には皆が回復し、ゴブリンは完全に居なくなった。

 王都の中のゴブリンはベリーが一掃した。

 エムルは異様に魔力が多く、何度も攻撃魔法を使っていた。


 俺は魔力を使い切った。




 ◇




 皆疲れ果て、休息し夜が更ける。

 ベリーやエムル休んでいると王城の会議室に呼ばれた。

 俺とエムルの回復魔法魔法を皆に使いたい。


「色々考えはあると思うんだ、でもすぐに2か国間会議に出席して欲しいんだよ」

「俺って必要か?」

「必要だよ」

「俺たち全員出席か」


「そうなるね」

「私は出なくていいわよ」

 ベリーが逃げの姿勢を見せた。


 記者会見とかそういうの嫌いだもんな。

「ベリーも出席だろ?」

「わ、私はいいわよ」


「ベリーは、休んでも問題無いよ。でもウインは強制参加になるんだ」

「お、おれええええ!?俺必要無いだろ」

「必要だよ」

「俺は」

「必要だよ」


「……」

「……」


「分かった」

「すぐにいこう。みんな待っているんだ。ウインをみんなが待っているよ」

「待たせているなら先に言ってくれ。すぐに行く。着替えた方がいいか?」

「そのままで大丈夫だよ」

 俺はすぐに会議室に向かった。



 会議室に入ると、部屋の奥に向かって長い机が置かれており、その周りを椅子が囲んでいた。


 入って左側には奥からアーサー王国側の王、王子、大臣、ウォール、メアの順で並んでいた。

 入って右側には奥から魔王、セイラと並ぶ。


  俺の部屋に入ると、一番奥に案内され、左右にはエムルとアーサー王国の王女ルナが座る。


 俺は敬語で切り出した。

「あの、よろしいでしょうか?」


「どうした?」

「ウイン殿?何か?」

 魔王とアーサー王が答える。


「いや、この席おかしくないですか?俺、私が座る席には本来魔王さまとアーサー王様が座るのでは?」


「このままで良い!」

「このままで問題無い!」

「問題無いよ!」

「問題ありません!」

 両国の王と王女は一斉に否定した。

 えーーー!そんなにみんなで言う?


「それに、ウイン、敬語は不要で会議を執り行いたい。アーサー王はどう思うか?」

 魔王が切り出す。


「うむ、各自話しやすい口調ですすめよう。私もその方が疲れなくて助かるよ」

 アーサー王は気を使ってわざと柔らかい言葉で言った。

 いや、これが素なのか?


「分かったけど俺は一般人だ」


「違います!ウイン様は、二ヵ国間の友好の象徴にして、ドラゴンキラー、交易の英雄にして、アーサー王国を救った英雄です!一番上の席以外考えられません!!」

 ルナが大きい声で言った。

 いつもおしとやかだと思っていたが声が大きい。


「ウインの英雄伝説はまだ幕開けに過ぎないんだ!この席で当然だよ!」


 アーサー王と魔王は一斉に言った。

「「異議なし!」」



 魔王とアーサー王シンクロしすぎだろ!いつからそんな仲良くなってるんだ?会ったばかりだよね?


 ウォールはまじめな表情で口を開いた

「ウイン」

 まともそうなウォールなら何とかしてくれるのでは?

「席にこだわるのは無しにして会議を始めよう」


 ダメだ!席の件はスルーしたい派だった。

「そうだ。会議を始める」

 これ何言っても駄目な奴だな。













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