交易路の魔物狩り

 俺たちはアーサー王国にたどり着くと、すぐルナ王女が出迎えた。

 今回の議題はあっさり2つに絞られた。

 


 絞られた二つの議題は次の2点だ。

①持ってきた素材や魔道具の売買交渉

②両国間の交易ルートの確保


 資源や魔道具作りに優れ、食料が欲しいディアブロ王国。

 食料生産に優れ、資源に乏しいアーサー王国。

 両国は完全に利害が一致していた。


「持ってきていただいた素材や魔道具は大変すばらしいです。ただ、今回出せる食料には限りがあります」

「出し切れない分については、この国の株を買いたいんだよ。株券を買う事でアーサー王国の発展に貢献したいというウインの思いがあるからね」


「まあ!すばらしいですわ!ぜひともそのようにお願いしますわ」


 売買交渉については問題なさそうだな。

 次は交易ルートの確保か。


「交易ルートの確保について話をしようじゃないか。厄介なのは魔物の存在だよ」

「そうですわね。両国合同の討伐部隊を編成するのが良いかと思います」

「そうだね。僕もそれが良いと思うよ」


「俺倒しに行って良いか?」

 正直、毎回俺が両国を往復し続けるのが嫌だってのもある。

 任せられることは任せられる体制を作りたい。


「良いのかい?」

「ある程度は力になる。出来る範囲で、だけどな」

「ウイン様、ありがとうございます。次はルートの作成ですわ」


「それについては作ってあるんだ」

「エムル、さすがですわ」

「スタート地点はアーサー王国からか。早速向かう」


 俺はいつものように走って向かう。

 エムルを置いていく計画も含まれていたが、奴は俺におんぶされ意地でもついてくる。








【アーサー王国北東部の森】

 アーサー王国騎士団のウォールとメアの率いる精鋭部隊500がウインに遅れてたどり着いた。

 アーサー王国の精鋭部隊は本来1000人なのだが、ドラゴン戦で数を減らし、今やっと500まで回復した。


「あれは、魔物と……ウイン一人で戦っているのか!」

 ウインは魔物の群れの中で一人で戦っていた。


 ウインは魔法で石の弾丸を飛ばし、魔物を仕留めていく。


「魔物が1000体以上はいますよ!ウイン君が一人で戦ってますけど、援護は……必要ないですね」


「ドラゴンを狩った時もすごかったが、集団相手でもやはり強い。しかも魔物の素材を無駄にしないように戦ってるのが分かる」


「この調子なら、交易路の工事は前倒しで終わりそうですね」


 ウォールの部隊がウインに駆け寄る。

 魔物はすべて倒され、ストレージへの回収作業を始めていた。

 ウォールは、回収作業を終えるまで待つ。


「魔物討伐部隊として500人を率いて参上した。ウォールだ!よろしく頼む!」

「こんにちは。ドラゴンの時の隊長だったか?」

「ああ、あの時はお世話になった」


「ウイン君、久しぶりですね」

「メア?で良かったかな?」

 背が小さいけど胸が大きいお姉さん。

 覚えている。


「そうです。メアです。よろしくお願いします」

 ウインとメアは握手をした。


「聞きたいことがあったんだけど、ここら辺にある木って抜き取ってもらって行っても良いか?」


「問題無い。と言うか伐採できるなら伐採してもらった方が助かる。」


 俺は早速建設予定の通路上にある木を風魔法で切り倒していた。


「すごすぎます!威力が桁違いです!!」


 一回魔法を使うたびに100本以上の木を切り倒す。

 ウインは数キロ先まで木を切り倒して戻ってきた。



「ウォールたちはこれから討伐をするのか?」

「いや、いったん休憩する。進軍で疲れが出ているからな」


「そっか。俺はもう少し魔物を狩って来るよ」

そう言って走って森の奥へと進んでいった。

「相変わらず、規格外だな」


「工兵の出番、早まりそうですね」

「ああ。すぐに呼びに行ってもらう」





 ◇





 数日後アーサー王国から工兵とエムルが到着した。

 そしてさらに数時間後。

 ウォールは何かを発見した。

「ん?ディアブロ王国の方から何か来る」


 髪と瞳と服が青い美人の女性が話しかけてきた。

「私はセイラと申します。ウイン様かエムル様はいらっしゃいますか?」


 ウインが姿を現した。

「どうしたんだ?」

「青竜のセイラか!」

「有名なのか?」

「ディアブロ王国のナンバー3だ」


 そうだったのか。

 国の代表の名前はよく出るけど、ナンバー2以下はあまり名前を聞かないよね。

 国で一番高い山は答えられても2番目に高い山の名前は分からない。


 うむ、勉強不足だった。

 セイラはウインを向いてひざまずいた。

「どういう事?」


 セイラが一歩前に出た。

「魔王様のお言葉をお伝えします。ウイン様の序列がナンバー2となりました」

 魔王が1番で俺が2番、エムルが3番、エムルの上ってことになる。

 だが、唐突すぎるし、早すぎないか?それに俺はディアブロ王国の人間ではない。


 突っ込みどころが多すぎるな。

 一番気になるのは、魔王から『お前がエムルの面倒を見ろよ』って言われているように感じる。

 絶対そうだ!


「俺特に何もしてないけど?」


「いいえ、ウイン様はディアブロ王国の民を救い、また更に救おうとなさっています。それだけの価値があるのです」


 エムルがよってきた。

「これは!ウインが正式に僕のご主人様になったという事だね」


 うるさい黙れエムル!








【アーサー王国王城】

 王・ルナ・大臣が円卓に座る。


「ウイン殿のおかげで、予定していた工期の10倍以上の速さで交易路ができそうだよ」

「まあ!やはりウイン殿は英雄になる定めを持つ方ですね」

「本当にそうだね」


「これで、デイブック民主国から高い魔道具を買わずに済みます。財政は上向いていくでしょう。」

「デイブック民主国はウイン殿を失った損失を後で後悔するだろう」

「はい、しかしそのおかげでこの国は救われます」


「そうだね。デイブックが抱えている問題のおかげで、本当に心が楽になっているよ。ディアブロ王国との友好、ドラゴン討伐に交易路作り、これらの問題をウイン殿に助けてもらっていなかったらと思うとぞっとするよ」


「ウイン様ともっとお話がしたいです。今頃魔物と闘っているのですわね」


 会議の最中でもウインは成果を上げ続ける。

 交易路の魔物を狩り、木を伐採し、魔物や木を国に届ける大事な役目だ。









 ウインがおびき寄せた魔物を全て狩り終わると見知った声が聞こえた。

「やっとみつけたわ!」


赤い髪のポニーテール、赤い瞳、トレードマークの首輪、見知った顔が前よりも美人になって現れた。


「ベリー!」


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