【勇者視点】勇者パーティーの失敗続き①
ウインが居なくなった後、ブレイブは上機嫌になった。
魔の森に逃げるとは馬鹿なやつだ!もう生きてはいまい。
魔の森に入ったら生きて帰ることは無い。
それがこの国の常識だ。
魔の森の入り口ならまだ生きている可能性もあったが、奴は追い込まれた末に奥地へと逃亡した。
あいつが居ない。邪魔者はもう居ない!レアスキルを持った俺たちで魔王城に挑めば必ず魔王を打ち倒すことが出来る。
そしてベリーは俺の物だ。
早速だ、早速魔王城に行こう。俺の名声を轟かせる。
そうすれば金も権力も女もみんな俺にすり寄ってくる。
◇
【宿屋】
ブレイブは自信満々で言った。
「このパーティーで魔王城に攻め入る」
「え?準備や他のメンバーの補充も必要でしょ!」
ベリーが真っ先に反対する。
「物資の準備は済ませてある。他のメンバーは必要無い!」
ブレイブの発言にガーディーも賛同した。
「ウインが居ないのだ。前よりはうまく行くに決まっている」
完璧な作戦だ。
ベリーが渋ったため、マリーはすぐさま賛成の立場を取った。マリーはベリーの事を良く思っていない。
「良いんじゃない?行きましょう。ベリーは渋っているけど、嫌ならパーティーを 抜ければいいじゃない!あんたなんて居なくても一緒よ!」
「分かったわよ!私が抜けるわ!3人で頑張って頂戴!」
は?抜けるだと!何を言っている。
許さない!
「それはダメだ!!」
絶対に許さない。
「あなたが決める事じゃないでしょ!」
「明日は強制参加だ!抜けることは許さない!マリーも輪を乱すな!」
ベリーがパーティー脱退を何度も申し出るが、絶対に許さない。
明日魔王城に向かう。
結果さえ出せばいい。
そうすれば皆が俺を褒め称える。
俺は最強!
無能のウインはいない!
圧勝する未来しか見えない。
明日が楽しみだ。
◇
【魔王城に向かう途中の森】
祭りのように気分を上げて出発したがトラブルが起きた。
何度もトラブルが起きた。
周りのサポートに恵まれない。
俺のレベルに合わせられる奴はいないのか?
「地図が無い!どういうことだ!物資調達の者の不手際だぞ!」
ブレイブは物資の準備をギルドに丸投げし、確認をしなかった。
度重なる無謀な行動にベリーが口を出す。
「自分で確認しなかったんだからしょうがないでしょ!ウインが居ればこんなことにはならなかったわね!」
「この程度のトラブルは良くある事だ!問題無い!」
そう言って先に進み始めた。
何度もウインの名前を出すな!?
頭にくる!
次だ!次に行こう。
挽回すればいいだけの話だ。
◇
この日4回目の魔物の群れとの戦闘だった。
「くそ!なんでこんなに魔物が出てくるんだ!」
「斥候が居ないと魔物の群れによく遭遇するよね?普通でしょ?」
ガーディーも愚痴を言い出す。
「今回は失敗だ!撤退するべきだ!計画が悪すぎる」
「失敗していない!!!何もせずに口だけ出すな!!」
今まで何かあるとウインのせいにしていたブレイブとガーディーだったが、責任を押し付けるものが居なくなった結果、二人の仲も悪くなっていった。
◇
ベリーがゆっくりと、優しく口を開いた。
「もう物資が残り少ないわ。撤退しましょう」
ベリーの表情がやさしい。
やっと俺の能力を把握したか。
実際にはブレイブを刺激しないよう、感情を抑えて対応しているだけであったが、勇者は気づかない。
プライドの高さが起こった出来事を歪めて認知させる。
だが、俺に意見するのは良くない。
「失敗していない。次に行こう」
いつもベリーを目の敵にしているマリーもこの時ばかりは耐えられなくなり口を開いた。
「撤退よブレイブの準備が悪すぎるのよ!」
「何もしていないくせに口だけ出すなよ!」
「あんたのせいじゃないの!物を考えてしゃべりなさいよ!」
ブレイブは頑なに失敗を認めなかった。
まったく、口だけ出す馬鹿が多い。
文句があるならマリーは自分で動け!
あいつは口だけで一切責任を取らず、人のせいにしてばかりだ。
クズが。
「野営の準備だ!」
◇
野営の準備は全部ベリーが行った。
誰が野営の準備をするかで揉めて、結局ベリーがやっている。
俺は勇者だ。
野営の準備など雑用のやる事だ。
俺がやる事じゃない!
焚火を囲むがガーディーとマリーがうるさい。
「ブレイブの計画が悪すぎる!」
「ブレイブとはやってられないわね!馬鹿に合わせるこっちの身にもなって欲しいわ」
「黙れ!何もせず口だけ出すな!」
ガーディーもマリーもクズだ。
人のせいにするだけで何もしない無能どもが。
俺は勇者だぞ!
レアジョブの更に最高峰だ。
そして俺ほど優れた人間はいない。
ベリーを見習って野営の準備をしろ!
無能どもが!
「誰のせいとかそういうのは無しにして、今回は撤退しましょう」
「ベリーがそこまで言うなら撤退しても良い」
ベリーは内心あきれていた。
撤退の理由を私の責任にしようとしている。
ブレイブの異常性は前から分かっていた。
でもウインが居なくなってからブレイブの異常性。
うんう、その他の人間の異常性が色濃く映し出される。
だが撤退を認めてもらっただけで悪くない。
普段は一切話が通らない。
「力の無いベリーの意見を採用して、撤退する。俺は勇者で撤退の必要は無いが、お前ら無能にも合わせてやる」
俺の言葉にガーディーとマリーが反論してくるが、そのまま撤退を決めた。
人のせいにするクズは放置して撤退だ。
勇者パーティーは、ボロボロになりながら撤退したが、帰ってからも3人の仲はぎすぎすしていた。
ベリーがギルドに脱退の申請をしようとしていたが、絶対に脱退させない。
ギルドを脅し、マスコミを脅して言う事を聞かせる。
しばらく休もう。
無能の相手は疲れる。
休んだ後行動を起こす。
◇
「しばらくは通常の依頼をこなす!」
俺はそう言って通常の依頼を受け始めたが、前のような素早い任務達成は出来なくなっていた。
前より達成期間が遅れるだけならまだ良かったが、納期の遅延が発生する依頼も出始めた。
皆たるんでいる!
みんなに言ってやらねばな!
「お前ら!たるんでるぞ!まじめにやれ!」
このことによってベリー以外の3人で言い争いが始まる。
このパターンを何度も繰り返していた。
ガーディーもマリーも言う事を聞けよくずが!
通常依頼をこなしても足並みが揃う事が無い処か、パーティー内の仲は日に日に悪くなっていた。
俺は宿屋のカウンターでガーディーとマリーと言い合いをする。
「ブレイブの計画が悪い」
「お前がやれ!出来ない無能が口だけは達者だな!」
「ブレイブが全部悪いわ!私の負担も考えなさいよ!」
「お前は後ろで回復するだけだろーが!裏でこそこそする無能が!」
ベリーが宿屋に入ってきて無視をして自分の部屋に戻ろうとするが、ブレイブに呼び止められる。
「ベリー!君はどうするべきだと思う?意見を出してくれ!!」
「このパーティーを解散するのが良いと思うわ!」
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