「打倒してしまっても構わんのだろう?」と魔王城へと向かい、逃げ帰ってきた勇者に追放された俺、その後英雄となり、美女たちと幸せライフを送る。~え?勇者?もう助けないし関わらないからご自由に~

ぐうのすけ

偽りの最弱

追放の仕方おかしくない!?

「魔王を打倒しても構わんのだろう?」

 勇者【ブレイブ】はマスコミの前で決め台詞を吐きながらマスコミに向かって顔を作る。


 キリっと顔を作った勇者にマスコミの魔道具カメラのシャッターがカシャカシャと鳴り響く。


 俺【ウイン】は驚きを隠せなかった。

 予定では森で魔物を倒してレベル上げをするはずだったよな?

 いつから魔王を倒すことになったんだ?


 俺は思わず口を開いた

「魔王の所に行くのはまだ早いって!もっと魔物を倒して力を蓄えよう!」


 それを聞いた勇者の体が光りだした。


「ばっきゃろおおおおおお!」


 ブレイブは俺のみぞおちに一発、その後俺の顔を思いっきり殴る。

「ぐぼあ!」


 俺は勢いよく吹っ飛ばされた。

 ブレイブ!ブレイブタイム戦闘力2倍のスキルを使ったな!

 何で俺を殴った?

 何で2回殴った?


 勇者は舞台役者のようにポーズを決めながら、もっともらしいセリフを吐いた。「俺たちが!俺たちがやらないで誰がやるんだ!俺たちがやらないで誰がみんなの     平和を守るっていうんだあああ!!」 キリっ


くそ!あの決め顔、むかつく。


 勇者パーティーの中で唯一まともなベリーが俺のフォローに回ろうとするが、マスコミのシャッター音にかき消された。


 ベリーは俺と同じ14才で、勇者パーティーの中では年少組だ。

 赤目赤髪のポニーテールで、幼さの残る見た目だが、すでにベリー後援会が存在するほど見た目が良い。

 その口調はきつく感じることもあるが、実際は優しい心の持ち主だ。

 全身赤を基調とする服を着ており、短めのスカートと、首輪が目を引く。


 マスコミはベリーのフォローをかき消すように俺に批判を浴びせた。

「ウインさん!みんなを救おうとは思わないんですか!」


 俺はマスコミのステータスを鑑定した。


_____________________________


ダスト 31歳 男 

戦士:  レベル 32


トータルレベル: 32


固有スキル:剛力


_____________________________


 このマスコミ強くね?何でマスコミやってるんだ?

 冒険者になればみんなを守れるのに。

 何で自分だけ安全な所に居て批判だけしてるんだ?おかしくね?


 マスコミを辞めて魔物と闘ったら?

 魔王城に続く道に魔物はいっぱいいるよ?


 マスコミはさらに続ける。

「答えてください!みんなを救う気はないんですか!」


 俺が口を開こうとすると、勇者が割って入ってきた。

「世界を救う気が無い者をパーティーに入れたのは俺の責任だ。許してほしい。ウインは今回の討伐に連れて行かない。俺たちだけで魔王討伐に向かう。魔王討伐後は、パーティーの再編成も考えている。だから少し待っていて欲しい」


 マスコミたちは、

「特ダネだ!写真を撮れ!」

「これで次の新聞の見出しは決まったな!」

 と言いながらカメラのシャッターをカシャカシャと鳴らす。


 おかしい。

 解せぬ。

 俺悪い事一切言ってないよな?


 そして俺は魔王討伐に置いて行かれた。










 二日後、勇者パーティーはボロボロになって戻ってきた。

 俺は「ほらやっぱり、言わんこっちゃない。」そうつぶやきながら勇者の緊急記者会見に臨んだ。


「今回の魔王討伐の失敗についてコメントをお願いします。」


 勇者は深刻な顔で発言した。

「失敗の理由は、ウインのネガティブ発言によってパーティーのモチベーションの低下が起きた。それがすべての原因だった。パーティーの再編を後回しにした俺が間違いだった。」

 と舞台役者顔負けの決め顔で力説した。

 ベリー以外の他のメンバーもうんうんと頷いた。



 え?俺ええええぇ!!!?

 俺のせいになってる?おかしくない?

 まさかマスコミはそんな理由に引っかかるわけないよな?


「ウインさん!この責任についてどう思われますか?」


 マジデスカ!

 マスコミ、引っかかってるし……

 いや、マスコミってこんな感じだよな。

 常に攻撃する相手を探している。


 皆が気持ちよく攻撃出来るサンドバックが欲しいんだろう。

 それがマスコミだ。

 マスコミは俺が殴られててもスルーだったな。


 それに記者会見前の場所取りでマスコミは「どけやこらああ!」とか怒鳴ってるし、この国のマスコミはかなり性格悪いと思う。



 俺が口を開こうとすると、ブレイブがまた割って入ってきた。

 こいつは俺に話をさせない気か!

 ざけんなくずが!

「今ここでパーティーの再編成を行おうと思う」


 マスコミが沸き立った。

「スクープだ!」

 カシャカシャとカメラの音を鳴らす。


 ブレイブはシャッターの音が鳴りやむまで決め顔を崩さず、待っているようだった。

 シャッター音が静かになったタイミングで勇者は口を開く。


「結論から言おう。ウインをパーティーから追放する。理由を1つづつ説明しよう。まず、ウインのネガティブ発言によってパーティーのやる気が下がっている。次の理由だが」


 ブレイブは水を飲んで、間を開けることで、マスコミの注目をさらに集めた。

 それどういう演技だよ?


「ウインの固有スキルだ。ウインのスキルは【キャンプ】つまり底辺スキルだ。ウイン以外のメンバーは、勇者・聖騎士・聖女・炎の剣聖とレアスキルを持っている。俺はウインもパーティーの一員としてやっていけるよう、レベル上げを手伝い必死で努力してきた。だがウインは努力もせずパーティーに貢献しようともしない。もう一緒にやっていくことは出来ない」


 固有スキル、生まれた時に一人一つ授かるスキルの事だ。

 俺のスキルは弱い。それは事実だ。


 だが、ブレイブの発言は半分嘘だ。

 俺のレベル上げの手伝いは一切せず、テントの設営やキャンプ時の周囲の見回りは俺がやってきた。

 俺は思わず口を開いた。

「手伝ってきた?嘘つくな」

 俺の発言をかき消すようにマスコミはブレイブに質問を浴びせた。

 何も発言できないのか。


 ベリーは心配そうに俺の事を見ていた。









 ここは宿屋だ。

 散々な記者会見後すぐ、ブレイブは俺の追放の話を始めた。


 ブレイブはよっぽど俺の事が気に入らないんだろう。

 いや、ベリー以外の全員が俺を良く思っていない。


 ブレイブは記者会見の時とは人格が豹変したような邪悪な顔を浮かべて俺を罵る。

「は、やっとお前ともおさらばだな!大体お前下級ジョブの分際で良く俺たちと一緒のパーティーにいられるな!つらの皮が厚すぎるだろ!!」


 固有スキルが勇者や剣聖などのレアスキルの場合、レアジョブとなる。

 例えば固有スキルが勇者の場合はジョブも勇者となる。

 レアジョブはレベル1の時点で強力なスキルを持っているため、レベル上げでも、強さの面でも有利なのだ。


 レアジョブのMAXレベルは1000となり、ブレイブの言う下級ジョブはレベル100が上限となる。

 下級ジョブは正式名称ではない。正式には一般ジョブや一般職業と呼ぶが、俺の事を馬鹿にしたいブレイブは、下級ジョブと言って馬鹿にしてくる。


「大体お前レベルはいくつだ。」


「錬金術師は40だけど、トータルレベルは」


 ブレイブはまたもや俺の話をさえぎって話を始める。

「は、下級ジョブでレベル50以下!話にならねーな。俺はレアジョブで50を超えている!」


「俺のトータルレベルは140だけ」

またも、ブレイブは俺の話をさえぎってくる。

「下級ジョブが言い訳してんじゃねーぞタコが!」


 ブレイブの行き過ぎた行動にベリーは止めに入ろうとするが、ブレイブはさらに怒り出した。

 ブレイブはベリーの事が好きなため、俺をかばおうとしたのが気に入らなかったんだろう。


「とにかくお前は追放だ。その装備と有り金を置いて出ていけえええい!!」


「ふざけんなよ!マスコミが居なくなると豹変しすぎだろ!」

 あと言い方がむかつくんだよ!


「はあ?それじゃマスコミにも装備と有り金を取られたことを伝えたうえで、正式に」

 俺が言い終わる前に勇者は俺を何度も殴った。


 1発目はみぞおち。

 2発目はわき腹。

 3発目と4発目は顔を殴った。



 聖騎士ガーディーが俺の剣とポーション、財布をぶんどる。

 聖女マリーは我関せず、爪の手入れをしていた。



 俺は、宿屋を追い出された。


 

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