第4話見知らぬ場所に

「…ここは。」


仁志の目が覚めるとその目には見慣れぬ天井が広がっていた。

体を起こし辺りを確認すると白い壁に囲まれた部屋だった。

大きさは約3畳の大きさの部屋だった。

部屋にあるのは仁志が寝ていたベッド、トイレ、洗面台、があるくらいだった。


「なんだよ、この部屋。」


仁志は立ち上がり、壁を触ってみてもただの壁のようだ。

天井の隅に監視カメラのようなものがあった。


「おーい、ここから出してくれ!!」


仁志は、監視カメラに向かって手を振り大声を出した。

しかし、何の変化も起きず仁志はベッドに座り込んだ。


「そうだ、あいつに斬られたところ。」


仁志は不骸に斬られた刃があったところを確認すると、突然壁に線が現れた。

線は長方形の形に描かれ扉に変わった。

扉が開くとそこには、銃を構えた兵士が扉の両脇に背を向けながら立ち尽くし、 兵士の間に、ベレー帽をかぶり丸いサングラスを掛け、右手に筆、左に絵具が付いたパレットを持ったパーマのかかった男性とスーツ姿で片方の腕にタブレットを持ったポニーテールの女性が何かを疑ったような目でこちらを見ていた。


「本当にこいつが危険人物なの?、ショコちゃん。」


サングラスを掛けた男性が右手に持った筆をパレットの上に置きショコと呼ぶ女性の肩に手を回そうとしていたが、女性は手を払いのけた。


絵描えがきさん、ふざけないでください。それにショコと変な名前で呼ばないでください。私にはしっかり麗妃れいひ 咲心徠しょこらという名前があります。今は仕事に集中してください。」


「はいはい。わかりましたよ。」


絵描は置いた筆を右手に持ち直した。


「さて、只野さん私たちにご同行お願いします。これから取り調べを行います。」


麗妃が言うと扉の両脇にいた兵士が部屋の中に入り仁志の体を押さえつけ手錠をかけた。


「立って、歩くんだ。」


麗妃を先頭に兵士に連れられて仁志はどこかに連れていかれた。


「ちょっと、待ってください。・・はい。・・はい分かりました。すぐそちらにお連れします。」


麗妃は耳に手を当て誰かと喋っているようだった。


「後は私が連れていきます。皆さんは各々の職場に戻ってください。」


「おいおい、いったいどうゆうことだよ?」


兵士も絵描も何が起きたのかわからない様子で動揺していた。


「これは、所長からの命令です。」


麗妃がそう一言言うと絵描たちは黙ってその場所を後にした。


「只野さん、失礼しました。所長がおよびですので一緒についてきてください。」


麗妃は仁志の手錠を外し歩き始めた。


「あんた、ここはどこなんだ?どうして、俺はここにいるんだ?俺と一緒にいた男はどうしたんだよ。」


麗妃と二人きりになると仁志は喋る隙も与えない速さで問い詰めた。


「落ち着いてください、あなたの言いたいことはわかります。説明は所長がいたしますので、今は黙ってついてきてください。」


麗妃は目を少し細めて少し怒っている様子で言った。

仁志は黙って麗妃についていった。

麗妃の後をついていくと何やら騒がしい場所にたどり着いた。

そこにいる人たちスーツ姿で働いていて皆何か慌てた様子だった。

仁志のことを見つけると騒がしかったことが嘘かのように静かになった。

かすかにどこからか話し声が聞こえた。


「おい、あいつが例のやつか?」


「ああ、たぶん。」


騒いでいた人たちが仁志のことを見ていると麗妃が


「皆さん、何をしているんですか。急いで仕事に取り掛かってください!」


部屋全体に聞こえる声で言うと


「はい!」


部屋の人たちが息を合わせて返事をして作業に取り掛かった。

そしてまた、辺りは騒がしくなった。


「只野さん、お気を悪くしないでください。」


麗妃は仁志にお詫びとして頭を下げた。


「いえ、気にしないでください。」


そしてまた、麗妃は歩き出した。


「あの、いったいどこに向かっているんですか?」


「所長室です。もうすぐ着きますから。」


どんどん歩いていくと道の両脇の壁に誰か知らない年を取った年配の男性の肖像画が飾ってあった。


「えーと、この人たちは?」


「これまでの、所長方です。」


「あー、そうなんですね。」


仁志は話を広げるのが下手だった。


「着きました、ここが所長室です。」


麗妃は所長室に付くとドアを開け仁志を先に中に入れた。

中に入ると一面ガラス張りの部屋で部屋の真ん中には横に大きな机と背もたれが   

2メートルくらいある赤茶色の椅子が反対を向いていた。


「所長お連れしました。」


「待っていたよ、咲心徠。ご苦労様。それで、君が只野仁志君だね。君にはとんだ迷惑をかけてしまったね。」


椅子がゆっくり回転して椅子が正面を向いて姿を現したのは


「えーと、あれが所長?」


仁志がそういうのも無理もない。

椅子に座っていたのは一匹のオウムだった。








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