美容サロンを助けるぞ

「さあ、今日は美容サロンを助けるぞ」



 昨日は領主館でぐっすりと眠ることが出来た。


 夕食を取っている時に洞窟にプルン分隊を救助しに行ってたワックさんが戻って来た。プルン分隊全員無事だって。プルンがワックさんの頭の上でピョンピョン飛び跳ねて喜んでた。なんかワックさんも嬉しそうだった。


 ワックさんはどうも洞窟が気になるみたいで次の日もパーティーで探索したいってビーゼンのメンバーを集めて話し合いをしていた。あんな洞窟に銀虎級の冒険者がなんの用なんだろう。よくわからないけど放っておこく事にした。


 プルン分隊は洞窟探索は中止して、森の探索をしてもらうことにした。プルンはまた探索できるって喜んでいた。で、プルンはなぜかワックさんと一緒に寝ることにしたみたいでワックさんの頭の上に乗ってプルプルしていた。プルン分隊を助けてくれたことでワックさんのことが好きになったのかな? いいよ、行ってらっしゃい。でもポヨンは僕と一緒だよ。これだけは譲れない。


 その夜もポヨン枕は僕を深い深い眠りに誘ってくれた。




 で、翌朝の今、僕は自分の家に来ている。


 母さんが美容サロンを始めたのが僕が王都に出発した当日。そんな早く開店できたのは、必要なものが「椅子が4脚だけ」だったからだ。あとはポヨヨン分隊がいればOK。


 朝、領主館を出て僕が家に戻ると、家の前には既に女の人の行列ができていた。母さんに聞くと、「女性は朝一番に髪の毛の調子がいいと一日ハッピー♪」なんだって。よくわかんないけど。


 家の中には椅子が4脚並べてあって、ポヨヨン分隊の班ごとに一脚ずつ担当していた。班長の指示のもと、4名が髪の毛、服、スカート、靴をそれぞれ担当し、シュワシュワしていた。値段を聞くと、パンが5つ買える大銅貨一枚だった。母さん曰く、『ワンコインサロン』なんだって。僕のひと月のお小遣いくらいだ。女の人ってみんなお金持ちなんだね。


 ほとんどのお客さんは2日に1度は来るそうで、そのうち5人に1人は毎日来ているみたい。お客さんを見ていたら、領主館でポヨンが髪の毛シュワワンをしてあげた女の使用人の人も来ていた。挨拶したら毎日仕事の前に来てるって教えてくれた。


 シュワワンは大体5分ほどで終わる。でもそれ以外にお金を払ったりそこで世間話が始まったりでなんだかんだで10分程。こんなことをしていたら列を作って待ってるお客さんが待ちきれない。だから僕が手伝うことにした。母さんにお金を払うんじゃなくて僕が並んでいる人から先にお金を払ってもらうことにしたんだ。


 すぐにそのためにの準備に入る。まずは川へ行って丈夫そうな丸い石をたくさん拾ってくる。それをポヨンに頼んで四角い紙みたいな形に溶かしてもらう。もちろん全部同じ大きさだ。その平たい石の上をポヨンが細くした手でなぞっていく。王様の魔力署名を真似してみたんだ。まあ、表面にスライムの形の模様を刻んだだけなんだけど。ただ、ポヨンが楽しそうにすごく細かい模様をいくつも足していた。なんかすごくきれいな石細工になってしまった。


 それを持って、並んでいる人の元に行く。お金をもらった人にはその石細工を渡す。なんかみんなすごく喜んでたけど、あげたんじゃないからね。シュワシュワの後でちゃんと返してもらうからね。


 効率が良くなって、それからは行列も少なくなった。お昼くらいには新たに並ぶ人も少なくなった。みんな午前中にシュワワンしたいんだね。みんなそれぞれシュワワンしたい時間があるのかな?


 ん? 待てよ。そう言うことなら前もって時間を決めといたらいいんじゃないかな? そうしたらあんなに列になって待たなくて済むのでは?


 よし、じゃあ、やってみよう。


 午後になると、僕は川に行ってさっきと同じ丸い石を拾う。運ぶのは重たいからその場でポヨンに薄い石にしてもらう。そしてその全部に時間を掘っていく。朝8時から6分刻みで3時間分だ。そらが4席分で…えっと、えっと、120枚かな? これを朝に来た人に順番に渡していけばお客さんはその時間にその石を持ってきたらいいだけ。うん、いいんじゃないかな。


 作り終えたのが夕方になっちゃったから、うちに帰って母さんにそのことを伝えたら凄く喜んで何回も抱きしめてきた。なんか恥ずかしくて嬉しかった。で、とても嬉しそうな顔で、「夕方もたくさんお客さんが来るから」って、同じものの夕方分も作って欲しいって頼まれた。もちろん断れなかったよ。だから明日の午前中のやることが決まった。


 僕は領主館に泊まることになってるからそのまま戻った。戻ったらビーゼンの人たちも戻ってきていた。で、ワックさんが僕に話があるって。夕食を食べながら話を聞いたんだけど、「あの洞窟を使わせてほしい」って事だった。


 「僕の洞窟じゃない」って言ったら、あれはダンジョンっていう特別な洞窟だったらしい。そういや冒険者ギルドでもダンジョンがどうのって言ってたけど、よく覚えてない。だって、ダンジョンは強い魔物がいるって言ってたから、僕には関係ないと思ったからさ。


 で、ダンジョンは、第一発見者にその使用権利があるって。例外的にすごく大きなダンジョンとか貴重な鉱石が採れるダンジョンだと領主様や王様が関わってくるんだけど、僕が見つけたダンジョンはそんなに大きくもなく、鉱物も安い石が少しだけ採れるだけで、あとは罠がいっぱいあるだけだったんだって。で、魔物はそれほど強くないらしい。


 話を聞いていて、そんなダンジョンなんの使い道もないんじゃないかと思ったんだけど、ワックさん曰く、新人冒険者の訓練場にうってつけなんだって。なんでも王都の冒険者ギルドからそういったダンジョンがあったら是非教えてほしいって頼まれてるらしい。もちろん、僕はOKだ。罠は危ないからポヨン隊の遊び場にするわけにもいかないしね。使う予定は全くないから。


 ということで、明日の午後の予定が決まった。ビーゼンと一緒に王都の冒険者ギルドへ行くんだ。





 ―――――

ミーノ(跳兎級テイマー)

 従魔:スライム プルン隊(森探索中)

         ポヨヨン隊(美容サロン手伝い中)  

 持ち物:赤い宝石・無料馬車券・チユーブダンジョン

 同行者:ビーゼン(銀虎級)


0317最後尾に現況追加




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