第2-02話 飛び込め異能の世界!
教室に入ると、先に登校していたユズハが席についていた。
「おはよう、ユズハ。昨日は大丈夫だったか?」
「あ、お、おはようございます。
「なにもないって」
そういってナツキは笑う。
ユズハはすぐにホノカが
「む〜っ!」
ナツキの言葉が信じられないのか声だけで抗議するユズハ。
「本当だって」と返して苦笑いしていると、頭の中に『クエストが更新されました』と響いた。
(これもいまいち更新のタイミングがつかめないんだよなぁ……)
そんなことを思いながら、ディスプレイを起動。
新しく追加されたクエストを確認する。
――――――――――――――――――
通常クエスト
・敵の攻撃を100回受けよう!
報酬:【ダメージ軽減Lv1】スキルの入手
・物を投げて敵を気絶させよう!
報酬:【投擲Lv2】スキルの入手
・空を歩こう!
報酬:【空歩】スキルの入手
・モンスターを倒そう!
報酬:【特攻:魔】スキルの入手
・敵の攻撃をギリギリで避けよう!
報酬:【
・【無属性魔法】を使って敵の異能を倒そう!
報酬:【無属性魔法Lv2】スキルの入手
・魔法を1000回使用しよう!
報酬:『魔法使い独り立ちセット』
・3回連続でサイコロの目の1を出そう!
報酬:『LUC+10』
・『影刀:残穢』で異能を倒そう!
報酬:『呪刀:浄穢』へと成長
――――――――――――――――――
……殺伐としてきたな、『クエスト』も。
なんて思いながら、ナツキはディスプレイを見た。
元の『クエスト』は腹筋をしたり、背筋をしたりだったのに、新しい『クエスト』は異能を倒したり人を斬ったりするようなものばかりだ。それでも、ナツキが〈
(……そんなことになんなきゃ良いけど)
平和が一番だからな。
なんてことを思いながら、ナツキは席についた。
「なぁ、ホノカ。ユズハ」
「ん? どうしたの?」
「どうかされたんですか?」
昼休みにナツキたちは屋上にあがる階段の途中に座り込んで弁当を開いた。屋上には許可がないと上がれないので、だったらその途中の階段ならセーフじゃないかとホノカが言い出した結果である。
「刀を直せるところを知らないか?」
「刀を直す、ですか?」
ユズハがそう聞き返してくれたので、ナツキは『インベントリ』から『影刀:残穢』を取り出した。数々の異能の戦いに着いてきてくれた短刀だったが、よく見れば刃こぼれや軽い
それもそのはず。
元勇者――倉芽アラタとの戦いで剣との激しい激突があったし、ナツキの持っている大技、『紫電一閃』を使うことで校舎ごと断ち切ったのだ。むしろ、この程度の損傷で済んで良かったと言える。
「……うわぁ、これは」
ユズハは刀剣を見て、ドン引きした様子でそうもらした。
「流石にここまでボロボロになると、俺も次の戦いに使うのを
「そ、そうですね、早く手入れした方が良いと思います。でも、わ、私に鍛冶師の知り合いはいないんです。お、お父さんだったら知ってるかも……」
「……んぐ! 良い刀持ってるわね、ナツキ。それ誰から貰ったの?」
口いっぱいに詰め込んでいたサンドイッチを飲み込んで、ホノカがそう聞いてくる。
「これは『クエスト』の報酬だ」
「これは間違いなく魔剣とか妖刀とかの卵よ。普通の鍛冶師じゃだめね。ちゃんと
「
「そ。魔剣とか、妖刀とか……そういうのを作るのを主な仕事にしている鍛冶師。でも私、日本にツテがないのよね」
「まず、探すところからかぁ……」
【鑑定】スキルを使ったら出てこないだろうか?
でも、【鑑定】スキルは矢印で方向を教えてくれることはあるが、地図を使って目的地を教えてくれたことが今までで1度も無い。
【鑑定】スキルを使って表示された矢印の方向に突き進んだら、沖縄とかまで歩くことになったらたまったものじゃないので考えから外しておこう。
「ん。なら、聞いてみましょ」
「え、誰に?」
「日本の異能によ。ついでに、今日の晩ごはんは抜いておいてね。ナツキ」
ホノカにそう言われて、ナツキは首を傾げた。
さて、その日の夜。
バイトが終わり、翌日の昼食になるコンビニ弁当を買って家に帰ると……家に灯りがついていた。もしかして、また異能の襲撃か……!? と、バクバクする心臓を抑えながら鍵を開けると、なんてことはない。玄関に、ホノカの靴があった。
「おかえり。ナツキ」
鍵を開けて中に入ると、キッチンにいたホノカが出迎えてくれた。
「あれ? 鍵渡したっけ?」
「『シール』から入ったの」
なるほど。
確かに異空間からなら、人の家に入れるってわけか。
……ん?
「そうだ、ナツキ。私、ご飯を作ってあるの。食べるでしょ?」
「え? 良いの?」
さらっと言っているが……ホノカが手料理を振る舞ってくれる!? とナツキのテンションはバチ上がりである。
「だ、だって……ナツキいっつも不健康そうなもの食べてるし……。それだったら、ちゃんと力がつくものを食べたほうが良いかなって」
「ありがと、ホノカ。嬉しいよ」
「ふふ、でしょ?」
ナツキは靴を脱いでリビングに向かう。夜、バイトが終わって出迎えてくれる彼女を見ると、なんだかホノカが奥さんになったみたいで照れてしまう。
(……家に帰ったらホノカがいる生活か)
ちょっとだけ想像して……良いな、と思ってしまった。
誰かが家で待ってくれるというのが、ナツキにはもはや新鮮な感情なのだ。
まぁ、この際侵入方法は不問にするとして。
「いい匂いがするな」
「ちょっと時間があったからローストビーフを作ったの」
「すごい」
「だ、誰でも出来るわよ……」
顔を赤くして、照れたように答えるホノカ。
あれ? でも、ローストビーフって作るのに時間がかかるんじゃなかったっけ。ホノカっていつから俺の家にいたんだろう?
「初めて作ったからちょっと下手かもしれないけど……」
ホノカはそう言いながら、できたてのローストビーフをお皿に乗せて渡してくれる。他にもどこかで買ってきたフランスパンやら作りたてのコーンスープやら、なんだかクリスマスみたいでナツキのテンションは最高潮だった。
ちなみにだが、ナツキは最後にクリスマスパーティーをしたのが6年前である。
うきうきでローストビーフを口に運んで、ナツキは感嘆の声をもらした。
「美味しいよ、ホノカ」
「そ、そう? なら作った甲斐があったわ」
「得意なのか? 料理」
「
要領の得ない答えを返して、ホノカは続けた。
「今度は得意料理を振る舞ってあげるから。覚悟しててね」
「楽しみにしておくよ。ホノカって何が得意なんだ?」
「ヤンソンよ」
「やんそん?」
「じゃがいもの入ったグラタンよ」
「美味しそうだな」
「美味しいもの。楽しみにしてて」
なんてホノカの可愛らしい一面を覗きながら、今度は不法侵入という可愛くないところを覗かねばならない。
「で、なんで俺の家に?」
「今日の昼に言ったでしょ。
「あ、そういえば」
「だから、行くのよ」
「どこに?」
「『
「さばと?」
丸っきり聞いたことのない言葉にナツキは首を傾げた。
「魔女の集会。私のような
「いや、そうは言うけどさ。俺、
「そうね」
ホノカは何も気にしていないかのように頷いた。
「もしかして、魔女以外も参加できるとか?」
「無理よ。基本的に『
「じゃあ、どうすれば……?」
「でも、何にでも例外というのはあるのよ。ナツキ」
「……?」
もしかしてなぞなぞでも始まったんだろうか?
俺が一休さんだったらすぐにでも答えを出せたのに……と、思っているとホノカはすぐに続けてくれた。
「
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