第27話 かくて異能は惹かれ合う
アラタからナツキたちが奪った
ナツキたちが持っている
〈
なので、ナツキたちは半分以上の
けれど、
「ナツキ。気をつけて」
アカリと一緒にナツキの家に泊まり込んだホノカが、駅に向かう途中でそう言った。
ちなみにだが、ナツキは昨日からホノカにつっけんどんにされており、かと思えば急に距離を詰められたりと彼女との距離感が分からなくて困惑している最中である。
「何を?」
「私たちは、世界最大の
「……ん」
そうだ。
なら55枚という多くの
「だから、ナツキ。今からは戦い方を変えるわよ」
「変える?」
「そう。今の私たちは、他の
「……防衛戦」
ナツキはホノカの言葉をオウム返し。
「これからは私たちの
「
「簡単なやつならね。それに、これからの敵は魔法使いだけじゃない。物を探しだす
「……
え、なにそれは。
「
「……え?
テレビで他の人が何を考えてるかを読み取ったり、スプーンを曲げてるあれでしょ?
あれって手品じゃないの??
「いるわよ。だって、テレビにも出てるじゃない」
「いや、あれは……ネタがあるっていうか?」
「え? 日本語だとネタなの? 種じゃないの??」
「……種です」
素で間違えたナツキは恥ずかしくて赤面。
日本にやってきた子に日本語教わるってどういうことよ。
「中には手品師もいるわよ。見てれば分かるもの。でも、本物の
「はぇ……」
「彼らも
「大きな力……。
「そういうこと」
ホノカはこくりと頷く。
「だからこれからは、より多くの異能に狙われることになるわ」
「……なるほど。そういうことか」
一難去ってまた一難。
いや、むしろ
けれど、
「でも、ホノカ。俺たちなら大丈夫だ」
ナツキはいつものように鼓舞する。
けど、それは自分1人だけじゃない。
「うん?」
「俺たちならきっと、〈
ホノカと、2人なら。ユズハと、アカリもいればきっと出来る。
〈
ナツキがホノカの目を覗き込みながらそう言うと、彼女は僅かに顔を赤くしてこく……と小さく頷いた。
「うん。そうね、私たちなら……きっと」
ちょうど駅に電車が滑り込む。ナツキたちはそれに乗り込むと、相変わらずの人の密度にちょっと
全ては電車から始まったのかも知れない。
この電車で、ナツキがホノカを助けたその瞬間から、
「ナツキ」
「ん?」
「これからも、よろしくね」
「もちろん」
お互いに顔を見合わせて笑うと――ナツキの前に、ディスプレイが展開された。
――――――――――――――――――
『緊急クエスト』
・少女が痴漢する前に彼女の魔の手を止めよう!
報酬:『天蓋の外套』の入手
【00:04:59:31】
――――――――――――――――――
おいおい、また痴漢かよ……。
と、思わずナツキが考えてしまうのも仕方のないことだろう。
だが、痴漢は社会問題。
気が付かないだけで、日本のどこででも起きているんだろうなぁ……と、ナツキは思いながらクエスト文を読み直して、目を疑った。
「……あい?」
「どうしたの? ナツキ」
「いや、ちょっと『クエスト』が……」
ナツキはクエストの文章を読み間違えたのかと思って、読み直す。
だが、そこに書いてある文章は変わっていない。
前にホノカを助けた時は、少女が痴漢を受ける側だった。
だが今回のクエストは、どこからどう見ても、少女が痴漢を
「……とりあえず、止めるか」
クエスト報酬が防具っぽいので、ナツキはホノカに『クエスト』の内容を伝えてから……【鑑定】スキルを使った。生まれた矢印はまっすぐ伸びると……1人の少女を指差す。
そこにいたのは、隣のクラスの少女。
ナツキもその顔に見覚えがあった。
真っ黒い髪の毛を腰まで伸ばし、透き通るような白く煌めく肌。大和撫子という言葉を擬人化したような姿で、静かに電車の席の端っこで本を読んでいる彼女はまるで絵画から切り取ったかのように美しく、光でも放っているかのように存在感がある。
彼女の名前は、夢宮ヒナタ。
ナツキは彼女と直接の接点があるわけではないが――曰く、才色兼備で文武両道。
なんでも出来る完璧超人で、周りの人間からの評判は高い。だが、彼女が笑っている様子を誰も見たことがないので『氷姫』なんて影で言われているんだそうだ。
顔が良いので鬼のようにモテるが彼女はその告白を全て断っているのに加えて、彼女の放つ近寄りがたい雰囲気が彼女の孤高さと、神秘さに拍車をかけている。
そんな子が痴漢なんて……と、思うが相変わらず【鑑定】スキルはまっすぐ彼女を指している。指しているのであれば、彼女がこれから行われるであろう痴漢の犯人だ。
「……あの、夢宮さん?」
「何かしら?」
話しかけると、彼女は読んでいた本から顔を上げた。
「ん、あなたは……
「え、俺のこと知ってんの?」
ナツキが彼女のことを知っているのは当然だが、彼女がまさかナツキのことを知っているとは思わなかった。
「ええ、
そういって彼女の透き通るような
鏑木、というのはユズハの名字だ。
夢宮さんは他のクラスなのに、ユズハの虐めのことを知ってたんだ。
「ああ、俺がユズハへの虐めを止めた」
ナツキがそういうと、彼女はうっとりした様子で立ち上がる。
「素晴らしいわ。
「ああ、それなら話は早い」
自分が尊敬されているということに1つの気後れも抱かないナツキは、そのまま彼女にしか聞こえない声でそっと続けた。
「……これからする痴漢を、やめてくれ」
ナツキが半信半疑ながら、早鐘のようになり続ける心臓を抑えてそういうと……清楚の文字をかなぐり捨てて、ナツキにしか見えない様子で彼女の口角が釣り上がる。
「へぇ、
「……なんの話だ?」
「別に痴漢をやめるのは良いわ。どうせ暇つぶしだし、それに……
「だから、何の話を……」
とぼけてみるが、彼女は笑いながら……続けた。
「隠さなくても良いの。私、勘は鋭いから」
「……勘」
そういえばホノカが言っていた。
異能には
「ええ、
そういうと、彼女は人差し指をそっと自分の頭に当てて目をつむった。
「……これは、
熱にうなされるようにヒナタが言葉を連ねる。
「ああ、……なんて
そして、焼き付いてしまうような熱意でもって彼女が目を見開いた。
(な、何なんだ。この人……!?)
次々とナツキの巻き込まれている事象を当ててくるヒナタにナツキがドン引きしていると彼女はひどく透き通るきれいな声で、
「……ああ、心配しないで。
ナツキの耳元でそっと優しく、
「
そう、言った。
Advance to the NEXT!!!
――――――――――――――――――
これにて1章終了です。
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