Lumina Linea~木漏れ日の日常譚~
彩華じゅん
談話結界シリーズ
第1話 辞典に書いてありましたか?
※この作品は本編の登場キャラクターたちが、ちょっと不思議な任務を通じてトークを繰り広げる“オマケ”番外会話劇です。本編を読んでいない方でも楽しめるよう構成しています。
アルデア「あれ? ここ、どこ……? 」
アルデア「さっきまで病室にいた……よね…………。」
(ドアの開く音)
フロース「ラルス先生! 報告書の締切とっくに過ぎて……あら? アルデアじゃない。ていうか、ここ、何? 」
アルデア「フ、フロースさん……。分からないんです。気付いたらここにいて……。」
(再び、ドアの開く音)
ミルヴァス「師長、いるか? 」
フロース「教官! どうしてここに! 」
ミルヴァス「どうして……というか、何だこの部屋は? 」
フロース「分かりません。機関にこんな部屋なかったですよね? 」
(3人の後ろでスっと消えるドア)
アルデア「あっ! ドアが! 」
ミルヴァス「消えた……? 」
フロース「教官、見てください。壁に何か……。」
(白い壁に浮かび上がる文字)
【特殊任務です。集まったメンバーでソファに座り、お茶しながらトークしてください。】
ミルヴァス「聞いたことのないタイプの任務だな……。」
フロース「まあでも、任務なら……やるしかないですよね……。」
アルデア「ウィザードさんのお仕事……ですか? 私がいてもいいんでしょうか……。」
フロース「いいのよ。あなたはもう仲間みたいなものだから。」
(ソファに座る3人、ティーセットが勝手に準備される)
【自己紹介をしてください
必須事項:名前、年齢、趣味】
ミルヴァス「君からしたらどうだ? 」
アルデア「え! は、はい……。私は、アルデア・ヘロディアスです。9歳で、趣味はお裁縫と編み物です。……よろしく、お願いします。」
フロース「9歳で手仕事ができるなんてすごいわね。私は苦手だから尊敬しちゃうわ。」
アルデア「えへ……好きなので……。」
ミルヴァス「……家族の影響か? 」
アルデア「そうです! 物心ついたときから2人の仕事を見てきましたから! 」
アルデア「生地を見る目には自信ありますよ! 」
ミルヴァス「自信があるのは……いいことだな。次、君の番だ。」
フロース「私はフロース・イーリス。19歳。趣味は料理です。よろしくお願いします。」
アルデア「お料理、何を作るんですか? 」
フロース「何でも作るけど、お菓子を作るのが特に好きね。クリームパフとか。」
アルデア「すごーい! 料理上手なんですね! 」
フロース「ふふ、ありがとう。教官もどうぞ。」
ミルヴァス「ミルヴァス・ミグランスだ。29歳。趣味は読書。よろしく。」
アルデア「ミルヴァスさんはどんな本を読むんですか? 」
ミルヴァス「何でも読む。最近は辞典を読んでいるな。」
アルデア「辞典!? お、面白いんですか!? 」
ミルヴァス「面白い。読了に時間がかかるのだけが難点だ。」
フロース「……アルデア、気にしないで。こういう人なの。」
アルデア「は、はい……。」
フロース「それにしても、このお茶美味しいわ。何の茶葉なのかしら。」
ミルヴァス「出されたものを不用心に飲むものではない。」
フロース「でも、任務でしょう? 毒なんて入ってませんよ。」
アルデア「本当だ……すごく、いい香りですね! 」
フロース「ね? 教官もせっかくだし飲んでみたらどうです? 」
ミルヴァス「……そこまで言うなら。」
【好きな食べ物とその理由を教えてください】
フロース「アルデア、何が好きなの? 」
アルデア「リンゴと、おばあちゃんのスープです! みんなで作業してる時、いつもストーブの上でお鍋がコトコト鳴ってて、それがなんかいいなぁって! 」
フロース「……いいわね。思い出の味なのね。」
アルデア「お2人は何が好きですか? 」
フロース「私は果物が好きよ。サラダにしたらいくらでも食べられちゃう。」
アルデア「果物、美味しいですよね! ミルヴァスさんは? 」
ミルヴァス「魚と野菜だな。」
フロース「食堂でいつも決まったメニューばかり頼んでますよね? 飽きないんですか? 」
ミルヴァス「考えるのが面倒でな。」
フロース「ほんとものぐさですよね……。」
【嫌いな食べ物とその理由を教えてください。】
アルデア「私はにんじんが苦手です……。なんか、変な味がして……。」
フロース「栄養あるから食べて欲しいけどね……。1回ムリって思っちゃうとだめなのよね。」
ミルヴァス「にんじんは細く切って水に晒してから食べるといい。臭みが消えて食べやすくなる。」
アルデア「そうなんですか!? やってみよ! 」
フロース「……それは辞典に書いてあった知識ですか? 」
ミルヴァス「いや、普通に生活の知恵だが……。」
アルデア「ミルヴァスさんは嫌いなもの、あるんですか? 」
ミルヴァス「私は甘い菓子類が好きではないな。くどい。」
アルデア「え!? お菓子が嫌いな人っているんですか!? 」
フロース「びっくりよね……。私も最初聞いた時、嘘ついてるのかと思ったわ。」
ミルヴァス「世の中色んな人間がいるものだ。そういう君は何が嫌いなんだ? 」
フロース「私は特に嫌いなものはないですね……。敷いて言うなら、辛いもの……とか? 」
アルデア「私も辛いもの苦手です。」
フロース「うふ、おそろいね。」
【朝起きて最初にすることは? 】
フロース「日課のジョギングかしら。朝から汗かくとスッキリしていいのよね。」
アルデア「すごい! だからフロースさん、スタイルがいいんですね! 」
フロース「そんなことないわ。アルデアも気が向いたらやってみて。ほんとスッキリするから。」
アルデア「はい! 明日やってみます! 」
ミルヴァス「君は朝何をしているんだ? 」
アルデア「私は、朝ごはんを……。」
アルデア「お母さんの……朝ごはん……。」
(目がうるうるしだすアルデア)
(ミルヴァスを小突くフロース)
フロース「ごめんね、今のは教官が悪かったわ。謝ってください。」
ミルヴァス「朝の日課を聞いただけだが……。」
フロース「謝ってください。」
ミルヴァス「……すまん。」
フロース「大丈夫よアルデア。寄宿舎でもちゃんと朝ごはんは出るわ。寄宿舎の朝ごはん、美味しいのよ? 」
ミルヴァス「そうだ。寮母は昔はしょっちゅう炭を作っていたが、今は大丈夫だ。」
フロース「フォローになってないので! 」
アルデア「ご、ごめんなさい……。あの……大丈夫……です……。ミルヴァスさん、どうぞ。」
ミルヴァス「……精神的に辛いなら無理して続けることはないと思うが……。」
フロース「教官、ここまで来たらもう喋ってください。朝、何してるんですか? 」
ミルヴァス「……ロザリオに、祈っている。」
フロース「何を祈ってますか? 」
ミルヴァス「何ということはない。ただ、平穏であるようにと……。」
アルデア「ロザリオって、何ですか? 」
ミルヴァス「これだ。」
アルデア「わぁ……きれい……。ミルヴァスさんの目と同じ宝石ですね。」
アルデア「あ、でも、エンブレムが壊れちゃってる……。」
ミルヴァス「……昔から持っているものでな。」
【たくさん話してくれてありがとう。】
【また来てね。】
(現れる扉)
フロース「あら、これで任務完了? ただ喋ってただけなのに……。」
アルデア「でも、楽しかったです……! 」
ミルヴァス「結局何だったんだろうな。この部屋は。」
(扉をくぐる3人)
本編は毎週金曜21時に公開しています!
現在第10話まで更新中!
Lumina Linea~エメラルドの糸使い~
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