14-B 第四・第五の魔法少女、今宵伝説が生まれる
秀雄はバックヤードの仕切りの隙間から一部始終を眺めていた。
いったいアニキもアネゴもどうしたというのだろう。レジの前で二人ともぼーっとしたまま動かなくなってしまった。
まず、アネゴがミックスアイに近づき一言二言、言葉を交わした後に様子がおかしくなった。
そしてそれに気づいたアニキも近づいたと思ったら、そのままピクリとも動かなくなった。もしかして、ミックスアイが何かの魔法を使ったのではないだろうか。
だって、二人とも変身すらしていないのだから。いや、もしかしたら変身させてもらえない状況なのかもしれない。とにかく今、ピンチなのは間違いない。
そんなことを考えていると、ふと、ミックスアイがこちらを見たような気がした。しかし、バックヤードの仕切りの隙間からこっそり観察しているのだ。気づかれるはずはないと、秀雄はそのまま向こうの様子を見つめていた。
そして、コンパクトを握りしめたままどうすればいいか超天才の頭脳をフル回転させた。
僕が変身しても一対一じゃ勝ち目がない。何とかしてアニキとアネゴを元に戻し、変身してもらわないと。オーシャン・ヒーリングシャワーを使えば何とかなりそうだ。
恐らくミックスアイは精神操作系の魔法を使ったんだ。だけど一体、いつ魔法を発動したというのだろう……しばらく見ていたけどそんなそぶりはちっとも見せなかったぞ。
「秀雄お兄様……二人はどうなってしまったのでしょう?」
同じくバックヤードにいた李紗と真弥も心配そうな面持ちで、立ったまま動かない二人を見つめていた。李紗も眉間にシワを寄せながら、「蝶介たちを助けてから、ミックスアイを倒す……それしかないでしょうね」とポツリと呟いた。
「僕が二人を助ける!」
秀雄はそう言ってバックヤードを飛び出した。「マジカル・ドリームチェンジ!」
バックヤードを出ると同時に、秀雄は変身を完了して青色の魔法少女、マジカル・オーシャンとなって蝶介と悠花の前へ現れた。多分、変身は誰にも見られていない……はず。そしてミックスアイを睨みつける。
「ほう、お前はマジカル・オーシャンと言ったか……やっと変身した魔法少女が現れたな」
ミックスアイが余裕の表情でオーシャンを出迎えた。そんな敵の言葉に聞く耳を持たず、「二人とも、しっかりして!」と、オーシャンは目がうつろになった蝶介と悠花に魔法をかける。
「オーシャン・ヒーリングシャワー!」
青色のオーラが二人を包み込む。しかし二人は直立不動のまま動くことはなかった。
「どうして!?」
「ぬはははは! 私の魔法はその程度じゃ解けないなぁ! お前の精神も後ろの二人のように破壊してやろうか!」
ミックスアイが怪しげに手を動かして魔法をかけようとする。オーシャンはいつでも防御魔法が発動できるように構えを取る。しかし、精神破壊の魔法をボクの防御魔法で防ぐことができるかどうか……。彼女の額から一筋の汗が伝い落ちる。
「ねえお母さん、この人たち何しているの?」
「もしかしたら、魔法少女のショーが始まったのかもしれないわね」
緊迫した状況の中、近くのテーブル席に座ってジュースを飲んでいた親子の会話が聞こえてきた。(14-Aの回でクラスメイトやお客さんが避難したり、教室がボロボロになってしまったりしたのは蝶介が見せられている幻覚なので、実際には教室は破壊されていないし、お客さんも普通に食事を楽しんでいるのだ)
そんな会話を聞いた二年三組の生徒たちや他のお客さんもざわざわし始めた。
「えっ? なになに、ショーだって?」「こんなの予定にあったかな?」
「委員長が準備したサプライズじゃね?」「っていうか、この魔法少女誰? うちのクラスの子じゃないよな? 髪の毛も青いし……」
――やばい、やばいぞ。これまでは時を止めて戦っていたけど、今回はそうじゃないぞ! このまま戦ってしまうと他のみんなにも被害が及んでしまう……どうする、考えるんだ!
オーシャンが焦っていると、
「オーシャン! 今すぐ誰か見つけて魔法少女になってもらうのよ!」と、バックヤードから李紗が白とピンク色のコンパクトを二つ放り投げた。その瞬間、超天才の頭脳が勢いよく回転し、この状況下において最適な答えを導き出したのだった。
李紗の声に反応して横を向いたミックスアイの隙を突いて、オーシャンは宙を舞い二つのコンパクトをキャッチすると、そのまま先ほどの親子の元へと着地した。
そして「お母さん、そして君! ボクと一緒に魔法少女になって、あの敵を倒すのに協力してくれないか!」と半ば強引に、二人にコンパクトを手渡す。母親と小さな女の子は、未だに魔法少女のショーと勘違いしているのか、嬉しそうに、そしてノリノリでコクリとうなづいた。
「マジカル・ドリームチェンジ!」
二人がそう言うと、二つのコンパクトから光があふれ出す。オーシャンと李紗、真弥は期待に満ちた目でその光を見つめていた。ミックスアイはまぶしさのあまり目をしかめ、身動きがとれないでいた。
(ここで母親と小さな女の子の変身シーンが流れる……どうしてこの親子が変身のための合言葉を知っているのか……そんな野暮なことは考えてはいけないのである)
「ついに、ついに五人の魔法少女が揃ったのよ!」
李紗が光を見つめながら、喜びに満ちた声でそう言った。
光が収まるとそこにはビシッとポーズを決めた二人の魔法少女? が立っていたのだった。
「夢よ輝け魔法の光、マジカル・ホワイト!」と白色の魔法少女になったのは、小さな女の子。
「夢を育む魔法の虹、マジカル・ピンク!」とその子の母親がピンク色の魔法少女になっていた。
今回の変身では特に容姿が劇的に変化するということはなく、先ほどまでの母親と小さな女の子がそのまま魔法少女の服を着ただけであった。しかしそれでも魔法少女が三人揃うと、さすがのミックスアイもたじろいでしまうのだった。
「ど……どこが魔法少女だ! 魔法熟女と魔法幼女だろうが!」
魔法熟女、と言われてピキッと額に青筋を立てたマジカル・ピンクは目にもとまらぬ早さでミックスアイに襲いかかった。左手で胸ぐらをつかんでミックスアイの体を持ち上げると、そのまま右手で強烈な往復ビンタをたたき込む。
「誰が魔法熟女よ! これでもまだ二十代なんですからね!」
――マジカル・ピンクは二十代なのかぁ、素敵だなぁ。オーシャンは攻撃の手を止めないマジカル・ピンクを見ながら鼻の下を伸ばしていた。
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