特別編 筋肉少年マッスル☆ビルダーズ

第?話 敵幹部ミドルマウンテン・マッチョボーイとの戦い

「助けてぇ!」叫びながら逃げ惑う人々。


 突然現れた魔物に商店街は大混乱だった。

 白いタンクトップにデニムのショートパンツ姿の短髪がよく似合う魔物が「パワー!」と言いながら魔法を放つ。それを食らってしまったものはみなタンクトップにショートパンツ姿になり、無性にトレーニングがしたくなってしまうのだ。


 実際に、街の真ん中だというのに魔物にやられてしまったものたちがそこかしこで腕立て伏せやクランチ、スクワットなどをしているのだ。暑苦しくて迷惑なことこの上ない。


「はーっはっはは! もっとトレーニングで自分を追い込むのだ! そうすることでマッスル総帥の目指す『人類総マッチョ計画』は完成に近づくのだ!」


 トレーニングに勤しむ人々を見ながら、満足そうな表情でミドルマウンテン・マッチョボーイが腕組みをしていると、道の向こうからやけに大柄な男が五人走ってきた。



「待ていっ!」



 五人とも筋肉ムキムキで、今にもボタンが弾け飛びそうなパツパツのセーラー服を身につけている。下半身は太腿の筋肉を見せつけるためにレオタードのみを履いていて、局部を隠すように赤いふんどしが上から垂れ下がっていた。


「でたな変態ども!」ミドルマウンテン・マッチョボーイが待ってましたとばかりに五人を出迎える。


「変態ではないわ! 我々は……」

 五人のマッチョたちはそう言うと、ポーズをとりながら一人一人自己紹介を始めた。


「パンプアップだ大胸筋! マッスル・レッド!」

「盛り上がる俺の力こぶ! マッスル・ブルー!」

「おいお前、肩のメロンを食べてみないか! マッスル・グリーン!」

「腹筋腹筋また腹筋! マッスル・イエロー!」

「男は背中で語るもの! マッスル・ブラック!」


 ボディビルのポーズを思い思いに取りながら、五人が最後に声を合わせる。

「筋肉少年マッスル☆ビルダーズ!」



 はいはい、いつもおなじみの口上ね、とミドルマウンテン・マッチョボーイは変態的な自己紹介を意にも介せず、さっそく戦いを仕掛ける。


「くらえ乳酸ビーム!」


 不意を突かれた筋肉少年たちは、ミドルマウンテン……もとい中山筋肉君の攻撃をまともに浴びてしまう。


「ぐああああっ! 筋肉に乳酸が溜まって……」

「BCAA! BCAAはないのかっ!」


 五人が苦しんでいるところに、ミドル……君が追い討ちをかける。


「お前たち! 乳酸=疲労は現代科学で間違いだと証明されたんだぜ! 何かのテレビ番組S A S U K Eの見過ぎじゃないのかい!」


 ――じゃあなんで乳酸ビームなんて技を使ってるんだよ……マッスル・レッドが心の中でツッコんだ。



 ☆★☆



「マーヤ、何を描いているの?」


「ふえっ、えっと……先日の蝶介とお姉さまの会話からヒントを得て……ちょっと漫画を描いておりました」


「ふふふっ、あなた小さい頃から絵を描くのが好きだったものね……完成したら見せてちょうだいね。恋愛物かしら? 私と蝶介の会話からどんな恋のヒントを得たのかしら?」


「……(筋肉少年の話だとは言いにくくなってしまいました)」


「さあ、明日はいよいよ文化祭よ。早めに寝さないね……私は先に寝るわ。おやすみ、マーヤ」


「おやすみなさい、お姉様」

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