11-B オーシャン対クリスタル(バトル編)
ピンク色の髪の司会者――クリスタル★ナイトメアの作戦はこうだ。
まず、クイズ大会と称して頭の良さそうな人間を集める。優勝商品を自分の大好きなゲームソフト「ファイナリーファンタジア13」にすれば、きっと大勢集まるに違いないと踏んだ。(そもそもこの時点で何か勘違いしていることに気づいていない)
商品券を最後に渡すとクイズ大会に敗れた人間を残し、彼らの夢を奪い取る。優勝者は相当な頭脳の持ち主のはずなのでそれを器とし、奪い取った夢を全て注入し強力なドリームイーターを作り上げる。
(マーヤは人の夢を奪い、そこに魔力を注入してドリームイーターを作っていたが、奪った夢の力を別の人間に注ぎ込んでドリームイーターに変化させることも可能なのである。そっちのほうがより強力なのだ。という設定を今更ながらだが作ってみた)
そして相当な数の夢と優秀な頭脳の器でできたドリームイーターで、今度は人間界の夢を奪い尽くす……はずだった。ここまで計画通りに事は運んでいたのだが、クリスタルの唯一の誤算は、優勝者が超天才少年であり、魔法少女だったということだった。
「優勝した海原くんには……素敵なドリームイーターになる権利をプレゼントです!」
司会者――クリスタルのその声と同時に、クイズ会場が茶色いドーム状の結界に覆われた。そして会場にいた秀雄以外の全員の体から虹色のオーラが溢れ出て、空中に集まり大きな一つの球体になる。
人々はきらきらと虹色に輝く球体を見ることなく、意識を失ってその場にばたりと倒れた。秀雄の両隣にいた山岡と栗田も同じだった。
クリスタルがその球体を見つめてニヤリと笑い手を向けると、虹色だったそれが一瞬にして真っ黒いドロドロとした質感のものに変化した。
「さあ、これを体内に取り入れてドリームイーターになってちょうだいね!」
「……だと思ったよ」
クリスタルは、優勝者がさぞかし恐怖に恐れおののき、足も震えて逃げることすらできないだろうと思っていたが大間違いだった。
秀雄はぱっとクリスタルから離れると、ズボンのポケットから青色のコンパクトを取り出して「マジカル☆ドリームチェンジ!」と叫んだ。
コンパクトから光があふれ、クリスタルはあまりの眩しさに目を瞑って後ろを向いた。
<ここでマジカル・オーシャンの一人変身シーンが流れる>
光が治ったのを確認して振り向いたクリスタル★ナイトメアの前には、青色の魔法少女マジカル・オーシャンが立っていたのだった。
「魔法少女ですって……どこから現れたっていうの? 私の結界の中には誰も入ることができないはず! そしてあの優勝した少年をどこへやったのよ!」
――あれ、もしかして
「ふふふ、この超天才のボクにかかれば
クリスタルは「は?」と目と口を大きく開いてオーシャンを見つめた。
「私より天才的な頭脳を持つ者が人間界にいるわけないでしょ! 見なさい、この完璧な作戦を!」と、手を広げて地面に倒れている大勢の人間たちを見ながら言った。
「でも、こうしてボクに侵入を許し、優勝した少年も取り逃してしまった……どこが完璧な作戦なのか
どうやら本当にクリスタルは優勝した少年=魔法少女だとは思っていないらしい。マジカル・オーシャンの挑発に乗ってしまったこの三番目の四天王はわなわなと怒りに体を震わせた。
「うるさいわね! 私は天才なのよ!」
クリスタルが手をそう叫ぶと、空中に浮いていた真っ黒い夢の塊から、オーシャンに向かってヘドロのようなものが飛んでいく。
「カスケード・ウォール!」(※防御魔法:強度はオーシャンの残り魔力次第)
しかしそれはマジカル・オーシャンに当たる事はなく、彼女の目の前に現れた水の壁に阻まれて消滅した。
すると黒いヘドロが浄化されて七色に輝く夢に戻り、倒れていた人間の元へと戻っていく。
「ちっ!」
クリスタルは舌打ちするとオーシャンを睨みつけた。そのままお互い相手の出方を見つつ動かず、膠着状態が続いた。
――あっちから攻撃を仕掛けてこないということは、攻撃手段はおそらくあの黒い夢の塊だけ。しかも防いだら浄化されて元の夢に戻ってしまうから、うかつに攻撃をすることはできない……ということだね、とオーシャンが考える。
――どうしてあいつは攻撃してこないの? こちらの出方を伺ってるのかしら? いや違うわ。私と同じで防御魔法がメインで、恐らく攻撃魔法がないのだ、とクリスタルが分析する。
なら……試しに! とマジカル・オーシャンが動いた。
「リヴァイア・エンハンス!」(※攻撃力アップの魔法:効果はオーシャンの残り魔力次第)
「!」
一直線に走り出し、クリスタルに近づきパンチを繰り出す。その瞬間、上空の黒い夢の塊から雨のようにヘドロが降り注ぎ、壁になる。
オーシャンのパンチは黒い壁に阻まれてクリスタルには届かなかった。しかし、パンチを受けた部分の壁は虹色に輝き、倒れている人間の元へと飛んでいく。
今度はクリスタルが上空にある黒い球体と、目の前にある黒い壁からオーシャンに向かって攻撃を仕掛けた。黒い夢の塊が数十個、オーシャンを襲う。
だがそれも全てオーシャンの水の壁によって防がれ、虹色になって飛んで行った。
「くそっ! 忌々しい水の壁よ!」
クリスタルは若干焦っていた。彼女自身は戦闘能力は高くなく、オーシャンの予想通り魔法は防御に特化している。
人間から奪った夢の力を使い攻撃することはできるが、マッスル★ナイトメアのような威力は出せないのだ。(だから四人で戦えと夢喰い様は言っていたのに、何を思ったか単独行動ばかりする四天王なのであった)
会場だけに小さな結界を張ることで、外部からの侵入は防いだはずだった。正直言って、クイズ会場に魔法少女がいることを想定していなかったのだ。そもそも、彼女の頭の中に「魔法少女は女の子がなるものだ」という先入観があったので、優勝した男の子がまさか魔法少女だとは思いもしていない。
マジカル・オーシャンはチラリと空中に浮かんでいる黒い夢の塊を見た。
……最初の頃に比べるとだいぶ小さくなっている。人間から奪った夢の分しか使うことができないんだな。つまり、あれを全部使わせれば一対一の戦いに持ち込めるぞ、そう思った彼女は空高くジャンプし、黒い夢の塊に向かって行った。
「何をするつもり!」
クリスタルが再び上空にある黒い夢の塊からヘドロを飛ばす。それを全てカスケード・ウォールで浄化しながら、オーシャンは黒い球体へ向かっていく。そしてそれに対して水の壁を全力で押し付けた。
「ええええいっ!」
まるで汚れたボールを高圧洗浄機で洗うかのように、オーシャンの両手から生まれている水の壁が黒い夢の塊を少しずつ剥がしていく。
「やめなさい! せっかく集めた人間の夢を!」
「みんなの夢、返してもらうよ!」
結界の中が虹色の光で溢れた。
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