05-B 海原くんは分析してしまったのだ
「
「エターナル・シャイニングレイ!」(解説:弓を引いて撃つように魔法の矢を相手に放つ)
緑と黄色の魔法が螺旋状になってマーヤを襲う。それを彼女は両手で受け止め、「があっ!」となんとか弾き飛ばす。
「魔法少女のくせに生意気な!」
魔法少女対マーヤの戦いが始まってから五分ほど。
すでにマジカル・バタフライもマジカル・エターナルも、そしてマーヤも息を切らしていた。
実力はほぼ互角といったところだが、「夢喰い」から魔力を補充しているマーヤの方が若干押していた。
三人とも衣装が派手に汚れて傷ついているように見えるが、決して顔や肌の部分は傷がつくことがないように、これもまたPTA対策の一環で配慮されている。(大人の皆様は心の目で、派手な戦闘シーンをご想像ください)
「くらえ、リーサの手先ども!」
今度はマーヤが空に浮かび上がると直径2メートルほどの巨大な火の玉(運動会でよくやる大玉転がしの大きさくらいだよ)を作り、二人目掛けて投げ飛ばした。それを二人が華麗なジャンプで交わすと、なんと火の玉がUターンをして再び二人に向かって飛んできた。
「自動追尾だ! 逃げられんぞ!」
そんなマーヤの声が響く中、「
「私も力を貸すわ、バタフライ!」
エターナルがバタフライの横に並び、同じように手を伸ばす。「はああああ!」二人の力で勢いよく飛んできた火の玉を押し返そうとする……が、
「甘いな!」
マーヤの魔法の威力が上だった。
「
二人は炎の魔法に焼かれて、リーサと海原がいる近くまで吹き飛ばされてしまった。
「ははっ、どうだリーサ! お前の選んだ魔法少女よりも私の方が強いのだ!」
マーヤは勝ち誇ったように、リーサを見つめる。それはまるで、強い自分を認めて欲しかった……そんな感じの目線だった。
しかし当のリーサはマーヤのことなど見てもいない。自分の目の前で傷つき、横たわっているマジカル・バタフライとマジカル・エターナルに必死に声をかけているのだ。
「だいじょうぶ? しっかりして二人とも!」
「ええ、大丈夫よ」
「
ふらふらとしながらも、二人は膝に手をついてゆっくりと立ち上がった。そしてキッとマーヤに視線を戻して、再び戦う姿勢を見せる。
「マーヤ、こんなことはもうやめるのよ!」
リーサが目に涙を浮かべながら、マーヤにそう訴えかける。
――違う違う違う! 私がかけて欲しい言葉はそんなのじゃない! 私は、私は!
ドクン!
マーヤの胸の奥で「夢喰い」から与えられた力が暴走した。目の赤い輝きがさらに増し、体から黒いオーラが先ほどの倍以上溢れ出てきた。
「私は! リーサよりも強いんだヨオオオオ!」
再びマーヤは火の玉を……いや火の玉なんてものではないもっと大きな炎の塊――二階建ての一軒家ほどありそうなもの――を作り出し、四人がいる方へ向けて放り投げた。
「もうやめて!」
リーサが顔を横に振りながら泣き叫んだときだった。
「マジカル・バタフライ! さっきのパンチを火の玉にぶつけるんだ!」
海原がそう叫んだ。「
するとその威力に炎の塊の外側が吹き飛ばされ、半分ほどの大きさになった。
「なん……だと……(
マーヤが目を見開くが、しかし依然として自動車一台分くらいの大きさの火の玉がこちらに向かってくることに変わりはない。
「マジカル・エターナル! シャイニングレイを火の玉の中心に放つんだ!」
続けて海原がマジカル・エターナルに指示を出す。「わかったわ!」とマジカル・エターナルは狙いを定めて光の矢を放った。
それは真っ直ぐに火の玉の中心に向かって飛んでいき、命中すると同時に空中で爆発した。
「なん……だと……(再び
今の魔法で魔力を使い果たしてしまったマーヤは空中で力が抜けて、茫然とただ浮いているだけの状態になってしまった。
「
マジカル・バタフライがそう言うと、「わかったわ!」とマジカル・エターナルは前回に続き見えないステッキを持っているようにして華麗に踊り始めた。だんだんと彼女の周りに黄色いオーラが集まってきて一つの大きな光となる。
「くらえ! マジカル・ファンタスティック・エター……」
「やめて!」
今まさにマジカル・エターナルの見えないステッキから必殺技が放たれようとした瞬間、リーサが彼女に抱きついてそう叫んだ。
「リーサ!?」
驚くマジカル・バタフライとマジカル・エターナルだったが、リーサは涙を流しながら「ごめんなさい……でも、やっぱり私の妹なの……妹は……助けてあげたい」としがみついて離れなかった。
その様子を見ていたマーヤの口元が一瞬嬉さでゆるんだように見えたが、すぐに険しい顔に戻り、「その甘さが命取りになるわよ!」と言い残し、その場から逃げていった。
「リーサ……」
「ごめんなさい……二人とも……」
泣きじゃくるリーサに、二人はなんと声をかけて良いかわからなかった。
……まさかの良い働きをしたのに、海原は一人蚊帳の外だった。
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