02-A 夢を運ぶ魔法の風 マジカル・バタフライ
「夢を運ぶ魔法の風、マジカル・バタフライ!」
自らのことをそう名乗る少女の外見を説明しておかなければなるまい。
背中の真ん中ほどまで伸びた緑色の髪の毛をポニーテールにしており、その結び目には白い小さなリボンがかかっている。
膝丈ほどの緑のひらひらのドレスのような服を着ていて、胸元には白い大きなリボンが主張している。
そして太ももまでは緑のスパッツを履き、戦闘中に変な誤解を招かないように配慮されており、また膝丈ほどの緑色の靴下で極力肌を見せないようにPTA対策も万全だった。
さらには「おいおい、そんな
そう、変身前の番所蝶介とは似ても似つかぬ姿になってしまっているのだ。誤解のないように再度書くが、マジカル・バタフライとは筋肉ムキムキの高校二年生男子、番所蝶介が変身した姿なのである。
これには、蝶介本人も、リーサも、そしてマーヤとドリームイーターも全員が言葉を発せぬまま、驚きの表情を浮かべていた。
「
マジカル・バタフライは自分の姿を見ながらすっとんきょうな声を上げた。
――俺が鍛え上げた自慢の筋肉がなくなって、腕が細くなってる! っていうか、俺の喋った声がなぜか女の子の言葉に変換されてるじゃねぇかよ!
「
マジカル・バタフライがリーサに向かって尋ねる。
「詳しい話は後でよ! まずはドリームイーターを倒すのよ! マジカル・バタフライ!」
リーサにも何がなんだかわからない状況だったが、一つだけ確実なのは今、目の前にいるのは探していた「マジカル☆ドリーマーズ」の一人だということだった。
「
敵とリーサを交互に見つめて、戸惑っているマジカル・バタフライを見て、マーヤが空中から命令を出す。
「ドリームイーター! あの緑のやつを倒しなさい!」
グワア! と叫び声を上げながら、そして周囲の家々をなぎ倒しながらドリームイーターがマジカル・バタフライに向かって突進する。そして先ほどと同じように体を捻り、その反動で右手で強烈なパンチを繰り出した。
「
マジカル・バタフライはそう言って攻撃を避けようと軽くジャンプをした……つもりだった。気がつけば、彼女はドリームイーターよりも遥か上空――ビルの十階ぐらいの高さまで飛んでしまっていた。
「
リーサもマーヤもその動きに驚いて口を開けて空を見上げている。
マジカル・バタフライはその高さから落ちてくる勢いを利用して、真上からドリームイーターに強烈な飛び蹴りを喰らわせた。そして反撃を喰らわないように二十メートルほど距離を取って離れた。
グエエ! と声をだして敵は勢いよく地面にめり込んでしまった。なんとか反撃しようとドリームイーターは両手で地面を押して、体を持ち上げようとするが、体が半分以上地面に埋まってしまい、動くことができなかった。
「今よ! マジカル・バタフライ! 技を使って敵を浄化するのよ!」
リーサがそう叫ぶと、マジカル・バタフライは目を閉じて肩幅ほどに足を開き、両手とも握り拳を握って腕を軽く曲げて構えた。空手でいうところの
そして、キッと目を開くと、
「マジカル・ウインド・パーンチ!」
と言って右手を思いっきり突き出した。
彼女を纏っていたオーラが凝縮され、右腕から強力なエネルギーとなって放出された。
――結局鉄拳なのかいっ! とリーサが心の中でツッコンだ。
「ド……ドリーミングゥゥゥ……」
緑色のエネルギー波を正面から食らったドリームイーターは、そんな言葉を残して浄化され、跡形もなく姿を消した。
すると、先ほどマーヤが握り潰した少年の夢が再び姿を現し、輝く球体となって、気を失って倒れていた少年の胸の中へとスッと戻っていった。
「ちっ……! 今日のところはこれで勘弁しておいてあげるわ! リーサ、次こそはあなたを倒してみせる!」
空中から一連の出来事を見ていたマーヤは、悔しそうにその場から姿を消した。
戦いが終わり、マジカル・バタフライは気が抜けて、ぺたりとその場に座り込んでしまった。
「
すると、リーサが嬉しそうに近づいてきた。
「すごい、すごいわ! マジカル・バタフライ! マジカル☆ドリーマーズは本当にいたのよ!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶリーサだったが、マジカル・バタフライは喜ぶわけではなく街の様子を見ながら心配そうな表情を浮かべていった。
「
あ、本当だ……とリーサがあんぐりと開けたときだった。
彼女の胸のペンダントがまたしても光り輝く。
すると壊れた家や道路や外壁などが全て元通りになり、茶色に染まった世界が再び色を取り戻していった。
パトカーやヘリコプターは確かにそこにいたはずだったのに消えてしまっていて、人々はこの場から逃げていなかったはずなのに、普通に道を歩いていた。
まるで先ほどまでの出来事が夢だったかのように、「ドリームイーターが出現する前の時間」に巻き戻ってしまったようだった。
ペンダントの光がおさまると、マジカル・バタフライだった少女もいつの間にか筋肉ムキムキの高校二年生、番所蝶介へと戻っていた。
蝶介は自分の体をまじまじと見つめ、先ほどまでの細い腕ではなく、いつも通りの筋肉のある太い腕に戻ったことを喜んだ。さらに髪の毛も触りポニーテールではないことを、服装も学生服に戻っていることを確認にてほっとした。
「一件落着……でいいのかしら? ありがとう、そしてこれからよろしくね……マジカル・バタフライ!」
リーサがとても可愛らしい笑みを浮かべて、蝶介の手を握って言った。蝶介は「……マジで?」と苦い顔をした。
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