11話やくそくごと
「玲大丈夫?」
『う…うん!大丈夫だよ!』
「それならよかった。さては一昨日の疲れで休んだのか~?」
『まあそんなところかな…』
「顔色良いし大丈夫か!」
『顔…』
「ん?なに?」
『い、いやっ!何でもない!』
「それならいいんだけど…」
・・・
『ただいま』
「おかえり玲」
『ちょっと今帰ったばっかじゃん…もうっ』
神仁は玲が帰るとすぐに彼女のもとへ向かった。
「そんな固いこと言うなよ」
『ちょっと待って!電話でなきゃ』
『あっ!楓だ!ちょっかい出したら別れるから』
「おう…」
少しマジトーンな玲に言われるがまま大人しく彼女を待つことにした。
『もしもし楓?…え?何?ノート?ちょっと待ってて』
『あ、ごめんごめん!こっち入ってたから明日渡すね!じゃあね!バイバイ!』
「あ~きらっ」
『今日はダメ!』
「え…」
『そんな顔しないで!』
「いや、こっちが悪かった。ごめん…」
『いや…あのしーくんが嫌なんじゃなくて…その…してから…』
『昼間に思い出しちゃってぼんやりしちゃったから…』
「玲…俺も…」
『だからダメだって…少し制限しよ』
「もう少しってどれくらい…?」
(落ち込みすぎ…)
『例えば休み前日のみとか…』
「祝日は入る!?今年はあと何日!?」
『普通に金土のみとか…?』
「何ィ??」
「金曜は夜だけだよな…」
「土曜日は朝から晩までいつでもいいってこと?日曜日も午前中のみオッケーとかない?」
『真顔で何言ってんの?』
「真面目な話だよ。玲とのことだから」
「真剣にしたいことが沢山あるんだ!」
「あたっ!」
『これからは、事前申請制にする!』
『私がいいって言ったときだけだから』
「えっ…そんな…玲!」
「玲さん!出てきてー!」
「少しはガマンするからー!」
(バカ…そんなに求めてどうするの…)
『離れられなくなっちゃうでしょ…』
「アキラ―!!」
『うるさい』
・・・
「先に寝るぞ」
『ん…おやすみ』
神仁は自室へ戻るとベットでスマホをいじり始めた。
(せっかく恋人になったのにあんまり実感湧かねぇ…)
そんなこんなでゴロゴロしていたら、ゆっくりと瞼が落ちていった。
夜は更け、午前一時半。
玲はもう寝るだけの状態だった。
『そろそろかな…』
玲は自室ではなく、神仁の部屋へ入っていった。
ゆっくりと、音を立てないように扉を開ける。
部屋の中は電気がついておらず、真っ暗だった。神仁の寝息も微かに聞こえた。
気持ちよさそうにしている彼の横に静かに近づいていく。
少し手を伸ばせばもう届く距離。ベットのすぐ隣で彼の寝顔を見つめる。
すると彼は反対側に寝返りをした。
シングルベットは大学生二人には少し狭い。けど、彼のぬくもりが感じたくて、もっと近くにいたくて、空いた隙間に身体を忍び込ませる。
まだ使い始めなはずの寝具には神仁の匂いが染み付いていた。別に臭いとかではなく、洗剤ではない、その人自身の優しい匂い。同じ洗剤を使っているのに、私とは違う安心する香り。
『よいしょっ…』
私に背を向けて寝ている彼の大きな背中を指でなぞる。
『ああいうことは毎日は困るけど、別にしちゃだめじゃないし…それにキスとかそういうスキンシップはもっとしてほしいのになぁ…』
すると、神仁が玲の方に寝返りを打った。顔が鼻と鼻がくっつくくらい近くなった。
神仁は目を瞑ったままだった。
『…はぁ…びっくりした』
玲が安堵した途端に唇が重なる。
ただ神仁の寝相で唇が重なったのではなく、これまでしたことのない密度の高い口づけ。
『んんっ!』
玲は驚いて距離をとろうとすると神仁は逃がすまいと手を回す。
『っは!』
ようやく解放された玲は少し息が荒くなっていた。
「お前がしていいって言ったんだから驚くなよ」
『しーくんいつからっん…』
再び唇を奪われる玲。しかし今度は負けまいと自ら彼の口内に進行していく。
『もっとして?』
「望むところだ!」
『やるのは禁止!』
「わ、分かってるって」
「これからもよろしくな」
『よろしくね』
神仁は悶々としながらも、脱ぎ掛けた上着を元に戻し再び唇を重ね合った。
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