7話 秘密のお泊り会
「友達の家に泊まりに行くね!」
そう神仁に伝え家を飛び出した。
「私は、しーくんが好き」
素直に言えたらどんなにいいだろう。
しーくんはあの日からあまり私としゃべらなくなった。
一昨年まではお正月やお盆などに会ったりはしたけど挨拶以外はあまり喋らなかった。
去年はお互い受験生ということもありこの家に来るまで会えなかった。
今年からは、一緒の家に二人きりで住むことになって初日は、ドキドキして眠れなかったし、しーくんの服を買うという目的のデートの時はずっと近くに好きで好きでたまらない人が横にいて、胸が締め付けられるくらい苦しかった。
密かに思いを寄せている彼にただ一言「君が好き」と言えたならどんなにいいだろう。
そんなことを考えながら大学へ向かった。
『おっはよー!今日は楽しみだねー』
「そうだね!今日は相談もしたいし…」
『今日は授業長いけど明日は休日だし…なんてったって今日はお泊りだもんね!』
「さて、今から授業を始めます。前回の講義の続きで…」
『ねえねえ玲!今日の夜何食べたい?』
『ぱーっと高いお店行っちゃう?』
「そうだよー。夜ご飯何食べよー」
「家で映えるの作るのはどう?例えばペッパーランチとかとろとろオムライスとか」
「でも、ペッパーランチとか鉄板でお肉焼くと部屋が肉の匂いになっちゃうからオムライスとかにする?」
『いいよいいよー!私結構料理うまくなったんだよ!ほっぺた落ちる準備しておいてね!』
「榎本さん。この場合このグラフはどのように推移していくとおもいますか?」
『あ、え、えっと…』
(右上がりだよ…)
『み、右上がりです』
「よろしい。講義はしっかり聞くように」
『あきら~助かったよー』
その日は四時頃に講義は終わった。
『はぁー終わった!終わったー!』
授業が終わるとすぐに彼女の家に向かった。
部屋の中は綺麗で白を基調とした落ち着いた部屋で、ベット上の棚やテレビ台の至るところに可愛らしい小物が置かれていたりと、女の子らしい部屋だった。
楓は帰宅するとすごい手際でとろとろのオムライスを作ってくれた。
盛り付け一つ取っても高級レストランに出てきそうな出来だった。
「凄い!ほんとに上手くなったんだね!」
『それほどでも~』
味も想像以上だった。
デミグラスの海からすくったオムライスは、口に入れるとデミグラスソースの深いコクと文字通りとろとろにとろける卵で口の中が幸せになった。
「美味しい…」
「良かったよかった」
楓の意外な特技に感心しつつ玲は夢中になってオムライスを食べた。
夕食後、風呂を貸してもらいスキンケアをしながらリビングに行くと教育バラエティー番組がやっていた。
これまでも何回か見たことのあるこの番組は地域の逸話や風習を調査する番組で今回の話も面白そうだったので見ることにした。
楓も風呂から戻り一緒に雑談をしながら見ていると薬指に指輪をはめる風習の由来についての話になった。
「楓はどう思う?私はもうあなたと寄り添いますって言うしるしだと思う」
『えー、私は悪魔とか悪いものが憑りつかないようにだと思う。』
「えー、回答は出そろいましたでしょうか?」
「では!順番に見てまいりましょう!回答オープン!」
その後もクイズがあったりしたので楓と考えながら盛り上がった。
「それでは次の問題……」
「そういえばキャンパスの近くに新しいクレープ屋出来たの知ってる?」
『知ってる知ってる!友達の投稿見たけどめっちゃボリューミーだよね!』
「そう!そう!」
『今度食べに行こうよ!』
「いいよ!」
『ケバブ風のくれーぷもあるんだって!』
「そうなの!…けど食べたら匂い付きそうだよね…」
『そこまで考えてなかった』
『次は神父と牧師の違いについてだって!』
「私は教派の違いだった気がする」
『そうなの?ランクとかじゃないの?』
「ランクって何?」
『一番偉いの教皇で教会の主が神父』
「じゃあ牧師は?」
『え?えーっと…知らない…』
「さぁ!では回答VTRを見ていきましょう!どうぞ!」
「楓!ここめっちゃきれいな教会だね!」
VTRでは国内の教会が映される。
教会の神父にカメラが向く。
「基本的な違いは、教派の違いなのですが、さらには…
「神父」はカトリック教会、または正教会、東方正教会の聖職者
「牧師」はプロテスタント教会の聖職者
といった違いがあります。さらに詳しく説明すると神父とは尊称であり、正しくは司祭と呼びます。牧師は……」
「両方とも半分正解で半分外れだったね」
『玲!あきら!今思い出したんだけど軽井沢の結婚式場で模擬挙式やってるらしいよ!』
「そうなの?けど…どうやって誘えばいいんだろう?」
『うーん…近くのアウトレットに買い物に行くことにして誘えば?』
「それいいかも!友達に一応伝えとくね!」
「それじゃあ案も決まったことだし次はゲームをしながら作戦会議だ!」
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