平凡嫌いな平凡男~ワンクリックで異世界転移~『異世界旅行で退屈人生おさらば。今日から俺は旅人です』

大天使アルギュロス

第1話 平凡男異世界転生する


 「痛い!! いててて!!」


 俺は階段をズンドコと鈍い音を鳴らしながら落ちていく。

 いきなり階段から落ちたので焦るがそれよりも痛みのほうがやばい。

 階段はかなりの段数があり転げ落ちるのは痛かった。

 しかし幸いなことに俺は切り傷を受けてはいなかった。

 打ち身はできたけど。


 「ここはどこだ? ゲホゲホ!! すごい埃だ」

 

 口の中に埃が入ってのどがイガイガする。

 随分と汚いところだ。

 長らく掃除がされていないと見た。

 俺は周囲を見渡すが明かりがないため何も見えない。

 そうだ。

 スマホはあったかな?

 俺はポケットの中を見るがスマホはゲームをする前に床に置いてきたようだ。

 

 「そうだ!!」


 俺はゲームのスタートボタンを押したんだ。

 そしたらなぜかこんな暗闇に投げ出された。

 あれ?

 なんか平凡じゃ無くね?

 これってあれだよな、異世界転移?!

 

 「フォォォォォォォ!!」


 俺は歓喜の雄たけびを上げる。

 ようやく俺は平凡じゃない暮らしができるわけだ。

 そうだ。

 ここがゲームの世界ならあれが出せるかもしれない。

 俺は息を吸って緊張しながら言ってみる。


 「ステータスゥゥゥ!!」


 俺はお決まりのセリフを言ってみた。

 すると俺の視界に触れないボードのようなものが出てくる。

 

 「よっしゃ!!」


 少しガッツポーズ!!

 さてどんなチート持ちだ?

 平凡でつまらない生活を送ってきたんだ。

 だからすげぇ能力があってもよくないか?

 俺は興奮しながらステータスウィンドウをスライドしていく。

 どうやら意識を向けるだけで操作できるようだ。

 そして能力値のウィンドウにたどり着いた。



 ヤシロ


 Lv.1

 HP5

 攻撃力1

 防御力1

 魔力1

 魔法攻撃力1

 魔法防御力1

 運1

 

 は?

 何の冗談だ?

 俺のステータスくそ雑魚なんですけど!!

 レベルは1だしゴミステータスにもほどがあるだろ!!

 俺はもう一度神に祈念する。

 

 「神様、どうか平凡ではない素晴らしいスキルを私に下さい。ちょっとだけ。爪のひとかけらほどの特別を私に下さい!!」


 俺は大声で祈った。

 

 「ならば君の願いかなえよう」


 どこかかわいらしい声が暗闇の部屋でつぶやかれる。

 

 「神様ありがとうございます!!」

 「良い良い。数年ぶりの転生者だ。君には特別なものを与えよう」


 よっしゃ!!

 チート確定演出!!


 「ははぁぁぁ!!」


 俺は暗闇の中土下座をして首を垂れる。

 よかった。

 運がよかった。

 神様ありがとう。

 僕はこの世界でチート無双するよ。


 そう喜んでいるとほのかに明かりがポツリと現れる。

 これはオーブ?

 そうかこれがスキルの形。

 俺のチート!!


 「やあ!! 僕は超美少女ネコ型案内ガイドクロにゃんだよ!! 君は僕が導く!!」

 「は?」


 俺の目の前に現れたのはチートの形でもなく伝説の武器でもない。

 ただのネコが二足歩行して俺の前に立っていた。


 「もうお兄さんたら~。そんなに僕を見つめて~。わかってる恋したんだよね。僕は完璧で最強な美少女ネコさんだからね」


 ネコがウインクすると星が飛び散る。


「君は……。その、君はチートなのか?」


 困惑した俺はネコに話しかける。

 ネコは嬉しそうに胸に手を当て自己紹介する。


「改めてよろしく。僕は君のキューティーチャーミーな美少女ネコ、クロにゃんだよ!!」

「クロにゃん? まあいい。君は何ができるんだ? 俺を強くしたりチートをくれる神か何かなのか?」


 クロにゃんは腰に手を当てきっぱりという。


 「僕は美少女ネコ。それ以外何の力もない完璧なガイドさんだよ!!」

 「は?」

 「うん!!」


 俺は冷たい床の上で昏倒する。

 終わった。

 そう心の中でつぶやく。


 「君どうしたんだい? 僕の可愛さにメロメロになった? うんうん。僕可愛いからね」


 どうしてだろ。

 このネコすごいむかつく。


 「誰かいるのかい?」


 やべ!!

 人が明かりを持ちながら階段を下りてきた。

 本能的に俺は物陰に隠れてしまう。

 その時にクロにゃんを服の中に隠してしまう。


 「にゃー。それは不意打ちだよ~。僕を連れてどこに行くのさ? もしかして僕を?! もごもご!!」

 「しゃべるなネコ!!」


 「やっぱり誰かいるのかい?」


 女性の声だ。

 とても若々しくきれいな声。

 明かりが近づいてきて女性の顔がはっきりと見える。

 耳が長く金髪で体の起伏がない。

 

 「エルフ?」


 小さな声でつぶやくとクロにゃんが服から出てくる。


 「彼女はエルフ!! この世界では有名な種族だね!! 数こそ少ないけどその名は世界にとどろいている。なんせあの有名賢者マーリスもエルフだからね!!」

 「黙れネコ!!」

 「誰だい? 場合によっては手段を択ばないよ」


 やばい。

 あのエルフ戦うつもりだ。

 俺のゴミステータスでは勝つ可能性なんて1パーセントにも満たないだろう。

 俺はクロにゃんを抱きかかえながら女性エルフの前に出る。


「待ってくれ。俺は別に怪しいものではない。ボタンを押したらここに転移したんだ!!」

「ボタン? 怪しいな。君はどこから来た? 泥棒なのかい?」

「いや泥棒ではない」

「ならその抱きかかえているネコはなに?

 明らかに怪しいけど君は野良猫泥棒なのかい?」

 「失礼な!! 僕は野良猫なんかじゃない!! 美少女ネコのクロにゃんだよ!!」


 クソ!!

 黙れネコ!!


 しかしクロにゃんの言葉を聞いたエルフの女性はしばらく考える。

 ぼそぼそと話しているが何を言っているかはわからない。


 「少しいいかな。君と話をしたい」


 そういうとエルフの女性は階段を上がっていく。

 あれ?

 許してくれた?

 するとクロにゃんが俺の腕から離れエルフの女性の後を追っていく。


 「何してるんだいヤシロ? 早くいくよ!!」

 「おい待て。俺はヤシロじゃなくて山田だ。ヤシロはお母さんのつけた名前だ」

 「僕は君のガイド役。お母さんみたいなもんだろ。とにかく今はこの世界に来たばっかりなんだからさっさと行こう」


 あークソ。

 俺は今はクロにゃんについていくしかなかった。 

 クロにゃんはジャンプしながら階段を上っていく。

 ちょっとかわいそうだな。

 俺はクロにゃんを気遣い腕で持ち上げる。

 するとクロにゃんは少し驚いた顔で俺を見る。

 

 「意外だな。君はちょっとは優しかったんだね」

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平凡嫌いな平凡男~ワンクリックで異世界転移~『異世界旅行で退屈人生おさらば。今日から俺は旅人です』 大天使アルギュロス @reberu7

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