第30話 宙域航行
ミルと話した翌日、レイカとテイルにミルに会って話をしたことをメールしておいた。
返事はすぐ来たがレイカはあまり興味がなさそうだった。
テイルは容姿はどうだったとか興味ありげな質問だらけだったので、自分で確認しろと返事してやった。
それから先日、各惑星に送った
「うーん、案の定って感じの結果だな」
顔をしかめながら結果報告の書類を眺める。
一人は街の外で縛られ数日間住人から石を投げられ最後には処刑される。
別の者も似たような感じで最後には処刑されている。
唯一生き残った元同盟代表のおっさんも資源衛星の採掘現場で監視付きで休みなく働かされているようだ。
自業自得だと考えながら書類から目をそらす。
各書類を確認したのち、エキュをケーノに送り届けるためネメシスを含む白猫・リスの統合艦隊は第四星系を後にする。
「新会社はすごい規模でしたね」
「そうだな軍事産業以外にも工業製品などなんでも作る予定だからもっとでかくなるかもな」
エキュは見学した工場の規模を思い出したのか興奮しながら話しかけてくる。
私は頷きながら答えて頭に手を置きポンポンとする。
さすがにブリッジでイチャイチャできないのでそれだけで我慢である。
それを見ていたクルーは皆にやにやしている。
ワープに入り休むため自室に戻った私は、ふとテイルの言葉を思い出す。
『この世界でワープゲートが開発されたら』
そうGGOにあった瞬間的に遠くの星系に行けるゲートの事である。
すぐにネメシスにミルに繋ぐように指示する。
「ほっしーじゃん、どしたの?」
通信を繋ぐとミルがモニターから不思議そうな顔で聞いてくる。
「実は頼みたいことがあってさ」
そう切り出してワープゲートは作れないかと聞いてみる。
するとミルからの答えは出来ると思うだった。
ただGGOに有ったワープゲートの様な瞬間移動ではなく、亜空間ゲートの様な物なら今すぐにでもできると言ってきた。
よくわからない私はそれは何か聞くと、
宇宙空間を少し捻じ曲げてあらかじめポイント同士をつなげる、そこをワープドライブより長く使えてパワー消費も少ない超光速ドライブを用いて通過する、そうすることによってワープドライブより早く着けてなおかつ消費パワーも抑えられると話す。
うんさっぱり分からん!!
説明を聞いてそう答えると、呆れた顔をしながら、星系同士を見えないパイプでつなげてワープより早く移動する様なもんと説明される。
その説明を聞いても分からない私は、今より時間短縮できるならと開発を頼むと、もうすでに生き物による実験段階まで開発されてると言う。
しかし今からヤマト連合の星系すべてを繋ぐとすると、ポイントの設定や装置等を置かないといけない、
それに各艦船に超光速ドライブの装置など積まないといけないため、実際運用できるまではある程度の時間がかかるという。
それに亜空間ゲートは技術的に隣の星系宙域までしか繋げないという制約があるらしく遠くの星系に行くときは各星系を中継しながら移動になるという。
各星系を中継するのはワープドライブを使ってても同じだし、とにかく星系間の移動の時短ができるのならとお願いする。
「ふふふ、ほっしーにお願いされるなんて初めてかも♪」
そう笑顔で言うと開発とポイントの設定や装置設置など優先でやってくれるというと、装置等を作るための資材を要求してきた。
資材をリストにして会社に提出して出資者の商会経由で要求してくれと頼む。
そして通信を閉じる。
当たり前だがヤマト連合がベガルタに発注という形になるのですべての支払いはヤマト持ちである。なのでこれから財源確保に忙しくなるなと思いながらもワクワクしていた。
「もしそれが出来たらシンセイさんとたくさん会えるかもしれないという事ですか?」
通信を終えて横で聞いてたエキュが私の顔を見ながら聞いてくる。
「移動時間が短縮されれば会える機会は増えるだろうな」
そう言うと嬉しそうに腕にしがみついてきた。甘えてくるエキュかわいい。
その後休んだ私たちは、ワープドライブが終わる時間が近づいてきたのでブリッジに向かう。
「ワープ終了宙域に異常ありません」
ブリッジに入ってみんなに挨拶をすると、オペレーターから報告を受ける。
第四星系からケーノまでは、第七星系、ケーノ第二星系と通過してケーノ本星系への約1ヵ月の道のりである。
通過する各星系ではクルーの休息なども含めて丸1日以上は休むことになる。
星系同士を移動する場合ワープドライブで近い星系でも1週間近くかかる事もある、遠い星系だと移動だけで下手すると数か月かかってしまう、星系を中継しなければ多少は縮められるが補給面での制約があるため補給艦等が多くなり負担が増えてしまう。
ミルが言っていた亜空間ゲートだと、星系を中継しても場所によっては半分以上の日数を縮めることが可能だとか。
そう考えるとすごい技術なんだろうなと感心する。
ケーノ第二星系を出発した私たちの艦隊は何事もなく順調に航行している
レイカの影響を受けたうちの軍は、航行訓練と称して宙賊艦隊を探し、時には拠点を見つけ潰しまわっているのだ。
その成果か、ヤマト連合の支配宙域での宙賊の被害がほぼ聞かなくなってきた。
時折脳みそ空っぽな宙賊が、うちの訓練やパトロール中の艦隊に壊滅させられに来る程度である。
宙賊が少なくなり安全な航行ができる事がうわさで広がっていくと、駆け出しや小さな商船団がヤマトの支配宙域で仕事をするようになり流通が潤沢になってきた、だが駆け出しや小さい商船団はなりふり構わずな仕事をするような奴もいるため、ヤマトお抱えのシャボール商会と揉めたりなどの問題も発生してもいる。
その辺はシャボールが何とかしているようなのでこっちは特に口出しはしていない。
そんな宙域を航行しているのである、いくら警戒は必要といっても暇である。
なのでクルーの気合を入れるため、抜き打ちでブリッジや各部署を回るのが日課になっている。
しかも時間関係なく突然行くので、勤務中の隊員は適度な緊張の中仕事をしている。
ある意味いやらしい上司である、だからといってサボっているから罰があるかといえば、普段であればやる事さえやっていれば特に気にしない。
私の暇つぶしも兼ねているのだ、上司の暇つぶしで罰を受けるとか、された方が迷惑だからな。
そんな航行も間もなくケーノ本星系に着く、ここでは1週間休んでヤマト本星系へ帰る予定なので一段落である。
ブリッジから超望遠画像でも小さく見えるケーノを見ながら、着いたら地上に降りてのんびりしようと思う私である
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