Galaxy Growing Online ―ゲームにログインしたらリアル宇宙でした―

菊花

建国

第1話 プロローグ

VR技術の革命が起きて数世紀、今ではカチューシャやヘアバンドの形になりファッションの一部となっている、それが現代のVR機器だ。

頭につけて目を閉じて電源を入れる、たったそれだけでVRの世界に行ける。


今やゲームに仕事に学校に必須なVR技術、『一人一台』物心つく頃には扱い始めるものだ。

学校は仮想空間の教室や講義室に行き授業や講義を受ける。

一般的な仕事は大抵が仮想空間の会社に行き仕事が終わればログアウトすればすぐ自宅に帰ってこれる。

中には現実世界で働く人もいるがごく少数だ、大抵の現実で必要な作業はアンドロイドロボットがやるからだ。

アンドロイドロボットの普及によりそれを仮想空間から管理するだけでいいのだ。


そんな中、私こと星神聖(ホシガミヒジリ)も仮想空間に仕事に行き終わればVRオンラインゲームに夢中になる一人だ。

最近はまっているのは『Galaxy Growing Online』通称GGOと呼ばれるものだ。

ゲーム開始時にプレイヤーに1星系(恒星を中心とした惑星群)とは言っても太陽系の様な多惑星ではなく恒星1に対して惑星1(本星)と衛星1~2(資源採取用)を与えられ開発しつつほかのプレイヤーの星系を攻撃し従属支配またはプレイヤー同士で話し合い同盟等をするPlayer vs Player(通称PvP)と呼ばれる要素を含んだ昔はオープンワールドゲームと言われていたらしいジャンルのゲームである。


このゲームは私が中学生の時に正式サービスが開始されて、正式サービスから今日で20年。

私もベータテストの時に見つけ当選してから始めてかれこれ23年程やっているゲームである。


人気の理由は初回チュートリアル(スキップ可能)が終わった後の自由度が半端ない事。

例えば初期星系をNPC(ノンプレイヤーキャラ)やプレイヤーに売ってお金にしてそれを元手に戦闘艦を購入して傭兵になり成り上がるなんてプレイをする者が居たり、仲間を集めて星系国家を作ったりと自由度は限りない。

私は後者の仲間を集めるタイプのロールプレイをしていて、今では下部組織も含めて300人程集めて銀河連合という国を作り戦争や惑星育成に楽しんでいる。

今日は早く仕事を終わらせて早々と仮想世界の会社からログアウトしてきた、待ちに待ったGGO最後のアプデだと噂される過去最大の超大型アップデートの日である。

しかも完全リセットからの全員0からスタートという今までなかった新たな試みである、


「最初この事が発表がされた時は滅茶苦茶炎上したな」


それもそのはず今まで課金して星系を育てたのにリセットしてまっさらとか涙物である。

その後運営からの続報で

『課金で手にいれたアイテム及び資源等はすべて同額の課金ポイントとして返還』

『アプデ前に育てた星系や艦隊等を数値化し初期資金や初期の貯蔵素材、初期衛星追加等のボーナスがつく』

その発表で炎上は多少は収まったが未だに騒いでいる人もいる。


「育てたものがきれいさっぱりになって、また1からやってくださいなんて、無料ゲームなら仕方ないと思うけどな、課金分とそれまでの功績がそっくりポイントや初期資源として返って来るだけでも俺にはありがたいけどな。」

「まあまだ続けるならそういう考えになるよな。」

「まだ騒いでるやつは、放置プレイヤー中心でこれを機に運営からせびってやろうとしてる奴も居るらしいぜ。」

「他もこれを機に引退する気で~、少しでも課金したの取り返そうと頑張ってるみたいだよぉ~。」

「俺からするとそんなの聞くとよくやるよって思っちゃうな」

「まあシンセイのような超古参からすると、このアプデのリセットは楽しみなんじゃないか?」

「そうだな、また新しく始める感覚でできるから楽しみだな。そのために今日は仕事を早く終わらせてきたんだ。」

「俺は有給取った」

「私は学校さぼりぃ~」


仮想空間に用意した、連合メンバーのたまり場で幹部しか入れない部屋にログインしてつぶやく私にみんなが食いついてくる。

今まで負けなしのGGO最強連合と言われた俺らも、これからは初心者と一緒でみんな同じスタートに立つわけだ。

唯一違うのが最初から約300人の仲間がいて情報もいっぱい持っているのと初期資源や資金が大量にあるという事だけだ。


「さてアプデ終了して再開するまであと10分だ、みんなログインして星系決まったら座標張り出してくれよ。」


「「了解!!」」


返事の声と共に仲間たちが部屋から消えていくのを見て


「俺もGGO起動させてログイン待機するか。」


一度たまり場からログアウトしてトイレに行った後、栄養ゼリーを飲み込む様に食べてから再度ベットに横になりVRを起動させる。

起動した瞬間にVR機器からパチュンと音がしたが、機器の起動音に紛れていたため私は気づかなかった。


「さてGGO起動、ログイン画面に移行。」


15時ちょうどに私は目の前に浮かんでいる半透明なログイン画面のログインボタンを押す。


すると景色が暗転、真っ暗な空間になってしまった。


「なんだ?まだ再開してなかったのか?」


終了させようとシステム画面を呼び出そうと手を振るが何も起こらない、何度か動かすが何も表示されない。

ローディング中なのかな?と思い少し待つことにした。


「せっかくスタートダッシュしようと思ってたのに、タイムロスだな」


「まあプログラムシステムに異常があった場合、機械が感知して強制終了するはずだから異常ではないということだよな。」


未だに真っ暗な状態のまま感覚的には10分くらいたっただろうか。

突然私の意識が途切れた、それは数日徹夜して寝落ちした時の感覚のようだった。





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