第68話 出逢った縁と二人の絆
独りで頭を冷やしていると、上村から告白されたけどしっかりと断って、俺は大急ぎで部屋に戻った。
ただ戻ったはいいが、しっかりと寝れてないせいで足元が少しふらつく。
「はーくん……!もう……っ、どこ行ってたの!?」
「ちょっと……ロビーに」
あーヤバイ、すっげえ眠い。瞼が物凄く重い。
玲香が俺の名前を呼んでるけど、全く耳に入ってこないや。
俺はそのまま意識を夢の中へと飛ばした。
☆
んんっ……、あれ?俺いつの間に……。
なんか枕にしては柔らかくて暖かくて気持ちが良い。
「おはよ、はーくん」
「玲香……?」
俺を上から見下ろして、その小さく綺麗な手で俺の頭を撫で優しく微笑む。間にはご自慢の豊満な胸があった。
「急に倒れるからビックリしちゃったよ」
「……色々と悪い」
「全然いいよ。元はと言えばこっちが悪いし」
なんで顔が……見慣れた顔が見れねえんだ……。
「はーくん?」
っ!まただ。普段より顔が熱く火照っているような気がする。胸もいつもよりざわついてる。
「もしかして……照れてる?」
「……ちげえ」
「やっぱり、はーくんも照れるんだ」
「だからちげえって……!」
反論で玲香の顔を覗くも、何故か顔を逸らしてしまう。なんでまともに顔が見れねえんだ俺は……!
それに……なんかいつもより胸が痛い。
「……ねえ、はーくん」
「なんだよ……?」
俺は顔を逸らしたまま、玲香の言葉を待つ。
「大好き……っ」
「っ、そ、そう……」
だが玲香は突然自分の胸を俺の顔に押し付けてきた。く、苦しい……。
「ひゃうっ……!く、くすぐった……んぅっ!」
玲香の色っぽい声を耳元で聞かされて、俺の愚息が反応してしまう。これで我慢しろって言う方が無理だ。
ただ早く離れてくれないと息が……。
「……はー、くんっ」
離れたと思ったら、今度は目が蕩けていた。
「め、滅茶苦茶にして……いいよ?私、はーくんになら何されても――」
「ち、ちょっと玲香!ストップ!」
い、いきなり何を言い出すんだ……?!
「……私じゃあ、物足りない?」
「そういうことを言ってるんじゃなくて……!ああもう!」
俺は頭をぐしゃぐしゃに掻き乱して、強引に玲香の唇を奪った。舌と舌が絡み合う程の熱い接吻。
「……ああ、好きだよ。大好きだよ!でもな!冗談でもそんなこと言うな!俺はお前じゃなきゃ……駄目なんだよ」
「はー、くん……」
「だから……えーっと、その……」
俺は少し深呼吸をして、改めて玲香の顔を見た。
「俺には家族も親戚も居ない。玲香みたいに妹が居るわけでもない。でも……俺はそんな玲香の事が好きだ」
「私もっ」
「だから……その、玲香は……俺の前から突然居なくなったりしないよな?」
「……何があったとしても、絶対にはーくんの傍から離れない。二度とあんな想いはしたくない」
でもいつかは離れることもあるだろう。喧嘩だって。
だけど玲香はこんな俺でもずっと傍に居てくれると誓ってくれた。俺だって離れたくない。
「ありがとう玲香……怖かったんだ。玲香も姉貴みたいにどっか行っちゃうんじゃないかって思っちゃって」
「そんなこと、する訳ないじゃん!今の私にははーくんが必要なんだから……!」
「……なんか嬉しいな。そう思って貰えるなんて」
だからこの手を、この縁を、この絆を……絶対に手離すもんか。
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