第41話 初々しさ

 右側に玲香、左側に姉貴と並んで歩く。

 最初姉貴は俺と一緒に帰ると駄々をこねてたけど、気付けば元通りの生徒会長モードに切り替わっていた。

 それで肝心な玲香はというと……。


「何?」


 ずっと見てた訳じゃないけど、偶然玲香が振り向いて目が合った。

 ドキッとして少し目を逸らした後、再び視線を戻す。


「いや……何でもない」


「……ふぅん?えいっ」


 俺の右腕を取って抱き着き、柔らかな感触が伝わってきた。


「れ、玲香……!あ、あた……って」


 玲香はそのまま肩に頭を乗せ、頬を赤く染めながらゆっくりと歩く。


「こうでもしないと……凄い不安なの。誰かにはーくんを取られそうで……」


「ごめん……」


「ねえ」


 急に立ち止まった玲香に釣られ、俺も立ち止まる。

 姉貴は俺達を置いて真っ直ぐ歩いて。


、ちゃんと守ってね?」


「約束……?」


「むっ、もう忘れてる。テストが終わったんだからデート、するんでしょ?」


 あー、そういえばそんなこと言ってたような気がする。

 昨日までずっと勉強ばかりですっかり忘れていた。


「本当ごめん!最近勉強ばっかで言われるまで忘れた」


「だと思った。で、するの?しないの?」


「するよ。俺もまたしたいって思ってたから」


「っ、不意打ちは卑怯」


 先程よりも顔が赤く染まり、完全に目を逸らされた。


「さっきのお返しだ」


「颯斗の癖に生意気ね……本当」


 心なしか、口元が緩んでいた。

 どっちが不意打ちだよ全く、と思いながら姉貴の後を二人仲良く追った。






 ☆







 そしてデート当日。

 今度は玲香の提案で公園前で待ち合わせ、本来玲香から提案された時間より少し早めに待ち合わせの場所に来ていた。

 今日は休日で、家族連れや俺達みたいなカップルも少なからず公園に居て俺も遂に仲間入りかと。


「変じゃ、ないよな?」


 一応姉貴にも確認の為に見て貰ったが、やっぱり玲香になんて言って貰えるか不安で仕方なかった。

 公園に設置されてる時計を見ると、そろそろ約束の時間だ。

 不意に視界が塞がれ、目の前が真っ暗に。


「だーれだ?」


「……玲香」


「あったりー……っ!」


 俺は目を奪われていた。

 でかでかと強調された胸と今にでも破れそうな半袖のシャツにミニスカート、顔は微かに化粧が施されていて彼女に魅了されていた。

 清楚系かと思いきや、少し大胆な格好の玲香。


「はーくん、それ……か、格好……良いよ」


 熟されたトマトのように真っ赤な彼女、甘い雰囲気に包まれているが嫌な感じはしない。

 俺は男を魅せるため、そっと彼女の手を取る。


「れ、玲香も……似合ってる」


「そ、そう……?ありがと……」


 まるで付き合いたてのような初々しい俺達、それが可笑しくてお互い顔を見合わせながら笑い合っていた。

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