死にたがりのボクともうすぐいなくなるキミ

@rei_20

プロローグ

明日のことなんてきっと誰にもわからないのだろう。


そうでなければ、『ボク』の心がこんなにも傷つくことはなかったのだから。


もしも、初めからこの結末を知っていたら、『ボク』の世界は、変わっていただろうか。


あの日、『キミ』に触れた瞬間、『ボク』の世界は瞬く間に崩れ落ちた。

寒さで凍えてしまいそうなくらい、雪のように冷たくなってしまった『キミ』へ、『ボク』はただひたすら、自分の体温を分け与え続けた。


あれから七年、『キミ』の影はもうどこにもない。


花が咲いたみたいに可憐な笑顔。鈴の鳴るような声。白く陶器のような滑らかな肌。濡羽色の絹のような黒髪。


記憶と言うものは存外、脆いもので、時が経つに連れて声も、匂いも、温もりも、『キミ』の顔ですら、だんだんと薄れていく。それでも、



『 』

あの時、『キミ』が最後に残した言葉を『ボク』はきっと忘れないだろう。


もう思い出すことのできない『キミ』を想って泣く日があっても、『ボク』はきっと、これからの人生も変わらずに、歩み続けていくのだろう。

一歩、また一歩と、あの日、青く光輝いていた青空の下で、『ボク』の人生を真っ当して生きていくために。



これは、まだ名前もない


『死にたがりのボクといなくなってしまったキミ』


の二人だけの物語だ。





いつかきっと、きっと分かるときがくる。だから、生きて、生きてね。私の命と引き換えに、生きて。愛してます。

記憶の奥底で、『キミ』が今日も泣いている。

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