第42話 興奮
協会ロビーは、エレベーターから始めて人が出て来た事に興奮していた。
「やっぱりあれはエレベーターだったんだな」
「あれがあれば、今後はショートカットできるんでしょ?」
「海外で見付かっているのは、まず10階、あとは5階毎みたいだって」
「でも、人が増えると、エレベーターが1つだと混雑するんじゃないのか?」
そんな声が交わされている。
そしてカウンターの奥では、鑑定士の資格のある協会員が出した鑑定結果に、協会員が興奮していた。
「このポーション、回復じゃないの?」
「色が違うだろう」
「それは低級とか高級とかの違いかと思ってたのよ。
え、再生できるの?欠損部位が?」
「まあ、生きていればな。アメリカでこれまでに1本出て、右手右足を食いちぎられたやつが、これで治ったと報告があった」
「……買取金額、いくらってつければいいんですか」
そうとは知らず、ダンジョンで出たものを預け、俺達はロビーで買い取りの結果を待っていた。
「あの触手の先、培養してからどうしよう。粉は危険だしな。液体にしてガラス瓶に入れて投げつけるか?カラーボールみたいな容器に入れるのが投げやすいかな。
それより、いらない肉に触手を接触させたら、麻痺させる瞬間が見れるかな。
ああ、早く順番来ないかな。すぐに触手を持って帰って地下室に実験しに行きたい」
俺は1人興奮していた。
「ウキウキと楽しそうねえ」
チサは苦笑して言う。
「私は七色イノシシよ。早くあれが食べたいわ」
イオはそう言って、空腹を訴えるお腹を押さえた。
「なあ、シュウ。あの触手の切れっ端、再生してヒドラにならないよな?」
ハルが心配そうに訊き、それで俺達は全員押し黙った。
「今は、凍り付いてるし」
「融けたら?」
「……さあ」
「さあじゃないだろ!?」
イオもハルも顔色を悪くし、表情を硬くした。チサも真剣な顔で、考え込む。
「大丈夫。再生する前に凍らせて、冷凍庫に入れるから」
「いやあ!食べ物と一緒にしないでよ!」
「家庭用冷凍庫の温度で大丈夫かしらあ」
「もしもの場合は、即焼却処分だぞ!?シュウ、いいな!?」
俺達は、冷凍庫の中でヒドラが再生している所を想像して、落ち着かなくなった。
そうしていると、番号で呼び出され、カウンターへ行く。
「お待たせしました」
上ずったような声で、係員が口火を切る。
「これが金額の明細です。ポーションについては、買い取り価格が協議中でして、決まり次第ご連絡差し上げるという事でよろしいでしょうか」
それに、俺達は頷いたが、一応訊いておく。
「あれ、何のポーションですか」
「……四肢の欠損を治療できるポーションだという事です。アメリカで発見されて、1例、使用例があります。
もしオークションにでも出品したら、天井知らずの値が付いても不思議ではありません」
声を潜めて説明しながら、ごくりと唾を飲む。
俺達もゴクリと唾を飲んだ。
「ん?でも、分析して培養できないのかな?ポーションも分析と培養をしようとどこの研究室も躍起になってたはずだけど」
まさに、俺の会社もそれをしようとしていた。
「それが、どこの大学の研究室も、会社の研究室も、できないそうなんです。分析すら」
俺は眉を寄せた。
分析ができないとはどういう事だ。
「空気に触れたら壊れるとか?
いや、だったら、飲んだりかけたりしたら空気に触れて使い物にならなくなっていないとおかしい。
体液に反応して初めて効果をあらわすとか?体温か?
いや、体温くらいなら、どこかの研究者がとっくにやってるな」
考えだした俺だが、いつまでもカウンターの前にいるのは邪魔だ。
「あ、ええっと、これとこれを持ち帰ります。ポーションはまた今度」
ハル達が話をまとめ、サインして、俺達は家へ帰った。
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