第17話 報告
「というわけで、ダンジョン入り口の警備と整備は国がする事になったし、敷地内や地下室への立ち入りは禁止って事を認めてもらえたよ。
海外では民間人がダンジョンに潜ることが認められる流れで、ここも免許制で一般公開するらしい。本音は全部自衛隊か警察でやりたいのかも知れないけど、人件費もかかるし、世界の流れにも逆らえないからかな。まあ、自己責任でやりたいやつにやらせて、きっちり産出物を買い取る方式にした方が安上がりかもな。
ああ、産出物については、すぐに発表するらしいけど、食べ物以外は全て国に報告して、魔石は完全に政府が買い取るのが決まりになる予定らしい。で、地下室経由で持ち帰らないようにって」
俺はイオ、チサ、ハルに決定事項を報告していた。
今日は約束の日ではなかったが、各々「ストレス解消」「食料が厳しくて」などという理由で集まって来たので、4人で潜る事にしたのだ。
「ふうん。でも、敷地内に入られないようにはちゃんとしてもらえるのか?」
ハルがやや心配そうに言う。
「あの穴を整備して入り口にするらしいんだけど、24時間、警備の人がいるそうだ。万が一の事故とかに備えて。
あと、免許の受付が、来月からだって」
「まあ、しかたないかしらね。誰でもってなると、ちょっとね」
イオが面倒臭いと表情で言った。
「で、その買い取りとかはどこでするのかしら」
「お隣は引っ越すらしいから、隣を政府が買い取って、ダンジョンへ行くにも出るにもそこを通らないといけないようにするそうだ。
地下室はまあ黙認になるけど、今後はダンジョンへの出入りの記録が残るようにするから、出入りはちゃんと普通の出入り口を通って下さいって」
俺は、面倒臭いと表情で訴えながらそう言った。
まあ、産出物を買い取ってもらわなければいけないのだから、どうせ隣へ行かなければいけなくなるのは同じだが。
言いながらも、魔物はどんどんと狩っていく。何せ、チサは弱点がわかるし、イオは体を強化して身体能力を向上させることができる。霊やゾンビはハルがいれば問題ない。
効率は大変いい。
あれ、俺は?まあいい。
カートに食べられる魔物と魔石などの産出物を入れて、俺達は進む。
「今週中にはそういう色々な決まりが発表になって、来週から免許証発行の受付を開始して、講習会やらをどうにかして実施して、免許証の交付をするつもりらしい」
「講習会って何をするのかしらあ」
「そこまでは聞いてないなあ」
「受講料とか申請費用とかどのくらいなんだろう」
ハルがやや暗い顔をして言うので、
「大丈夫。万が一の時はたて替えるか、それまでに溜まった魔石とかを先に買い取ってもらおう。そのくらいはしてもらえるだろうし、何なら規則が発表になる前に、高く買ってくれる研究機関に売るか」
「でも、そうねえ。ちゃんとした防具とかも必要だわねえ」
俺達は、普段着みたいな自分達の出で立ちを見下ろした。段々と魔物は強くなるのだ。このままでは危険過ぎるのは事実だ。
「いくらぐらいするの?ちゃんとした防具と武器って」
イオの問いに、全員が首を傾げた。
ともあれ、稼げるならば稼いでおいた方が、防具や武器を買う資金になる。俺達は魔物狩りに精を出す事にした。
そして、ボス部屋へ入った時にそれを見た。
そこにいたのは大型のトカゲとでもいう魔物だった。
チサが
「白身の、淡泊で上品な味わいだそうよお」
と言うので、俺達が舌なめずりしたのはおいておく。
特筆すべきはそこじゃない。
口をカパッと開けると、火の弾のようなものを吐いて飛ばして来たのだ。
「何よ、火!?」
反射的に全員が避け、その大きいトカゲを見る。
「これって、もしかしてぇ」
「魔法?」
チサとイオが言い、ハルは飛び上がった。
「そんな、この先は魔法を使う魔物が!?無理だよ!危ないよ!」
そして俺は、我知らず笑っていた。
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