恐怖の人体実験

エレジー

第1話


“人間は眠っている時に嗅いだ匂いの食べ物を目覚めたら食べたくなる”




テレビか雑誌か忘れたけれど、ある偉い先生がそう言っていた。私はこれが何故か興味深く、いつか試してやろうと頭の片隅に引っかかっていた。




ある休日の朝。




寝ている妻や子供たちの鼻に、焼きたてのロールパンや白米を近付けて反応を見ていた。面白いもので、人間どんなに深い眠りについていようが、強烈に嗅覚を刺激されるとバチっと目があく。




そして、すかさず。




「パンとご飯、どっち食べたい!なぁ、どっち!」




すると、ほぼ8割方、匂わせた食物を選ぶ。




人間というのは貪欲な生き物だ。2択の検証に飽きてきた私は、とうとう禁断の人体実験を行う意志を固めた。




それは“臭い物を嗅がされた場合、何を食べたいと言うか?”だ。




本当は、ウンコを嗅がしたいけれど、さすがに糞別のついた大人である。そんな幼稚な事はしない。




その代用として、最近妻から「アンタ、最近、屁臭いけど大腸ガンちゃうん?」と言われている私の握りっ屁で試そうと思った。




いつもと違う非日常。




さすがに興奮を抑えきれない自分がいた。尿意ではなく屁意を感じ、早速、実行に移すべく段取りをする。




心なしか、妙な背徳感を感じた。私の大腸を通り過ぎたプルトニウムを右手に掴みこむ。




最初の犠牲者。




いつも言い負かされる妻にしようかと思った。けれど、最近、妻に似て私に対して口うるさくなってきた娘(小5)に決めた。




右手のプルトニウムを、そっと娘の鼻に近付ける。若干、気のせいか手が震えていた。




「なんだ、お前、怖いのか?」




私の中の悪魔が囁く。




そ~っと、手を開く。




すると、これまでにない位、バチっと娘の眼が開いた。そして、深く眉間の皺を寄せながら言った。




「臭っ!何、この匂い!」




私は娘の反応に腹を抱えて笑い転げた。




娘よ!お前の父親は、悪魔に魂を売ったんだよ!




寝ながらの娘の蹴りの連打が私を襲う。でも、そうされても十分なくらいの対価を得た私だった。




「なぁ、なぁ!朝ご飯何食べたい?」




そして、この実験の真の目的を果たすべく、聞いてみた。




ま、まさか「ん~ウンコかな」なんて言うんじゃなかろうかと、固唾を飲んで娘の返事を待った。

























「なんも、食べたないわ!バカじゃないの!」




・・・そりゃそうだ。




というわけで、禁断の人体実験終了~!

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恐怖の人体実験 エレジー @ereji-

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