第182話 誕生日パーティ編 その8
気を落とす落とさないじゃなくてね…単純に来てもらわないと私の計画が丸潰れなのよ!
以前失礼すぎる呼び出しの手紙を出した時は文句も言わずに来てくれたじゃない!なんで今回は来てくれないの!?
「……まぁまだ中盤だし、これから来るでしょ。さぁ、私達も楽しむわよ。折角のパーティなんだから」
私の言葉に、デイジー嬢が真っ先に声をあげた。
「……そうですね!ところでリティシア様!パーティに出すお料理のメニューはリティシア様が自分で決めたんですか?」
「えぇまぁ…そうだけど」
「このプリンとか凄いですよ、こんなに美味しそうなプリンは今まで見たことないです!食べていいですか!?」
当然ながらパーティの準備など前世も含め一度もしたことがないので私が好きだったものやパーティらしいものを用意することにした。プリンは可愛いし美味しいから女性人気が高いのではと思って用意させたものだが、どうやら正解だったようだ。
「勿論構わないけど作ったのは私じゃなくてシェフだからシェフの腕がいいんでしょうね」
「そんなことありませんよ!リティシア様が優しいお方だからシェフの方もプリンを美味しく作ろうって思えるんです!シェフだけの力ではありませんよ」
「……随分変なことを言うのね。でも面白い考えだわ。ありがとう」
デイジー嬢は私に微笑むや否や早速プリンを口に頬張ると「美味し〜!」と嬉しそうに呟く。マリーアイ嬢が「イジー、もっと礼儀正しく食べなさいよ一応伯爵令嬢なんだから…」と戸惑いながら声をかけている。
当のデイジー嬢本人は全く気にせず次のスイーツへと目を向けていた。
「大丈夫、リティシア様なら許してくれるよ〜。あ、このクッキーも食べていいですか!?えっ、めっちゃ美味しい」
「もう!貴女のパーティじゃないのよイジー!!」
言いながらクッキーを頬張っていたデイジー嬢にマリーアイ嬢が呆れて声を張り上げる。その仲の良い様子がなんだかとても微笑ましかった。
「大丈夫よ、好きなだけ食べて頂戴。まだ食べたいならアルターニャ王女に食い尽くされる前に早く食べたほうがいいわよ。特にスイーツは一瞬で消えるわ」
「なるほどアルターニャ王女様は甘党なんですね……よし、私も負けてられない!マリー、あっちも美味しそうだから行こう!」
「ちょっと私の話聞いてた?すみませんリティシア様、失礼致しますね」
「リティシア様、すみませんまた後で!リティシア様もご自身のパーティ、楽しんで下さいね!」
デイジー嬢の去りゆく背中を眺めていると、彼女と初めて会った頃のパーティを思い出した。あの時は表情が沈んでいたけど、今はこんなに楽しそうに友達とはしゃいでいる。
そうよね、やっぱりパーティはこうでなくちゃ。
「楽しいご令嬢方ですね」
イサベルがくすくすと可愛らしい笑い声を上げる。
「そうね……楽しそうで本当に良かったわ」
「ところでアルターニャ王女様はいつまで食べる気なのでしょうか?このままでは本当にスイーツが全てなくなってしまいますよ」
アルターニャ王女を再び視界に捉えた時には、宣言通り彼女がスイーツを片っ端から食べ尽くす様子であった。
あの細い身体のどこに入っているのかがとても気になるが、先程から休むことなく色んな種類のデザートに手を出している。時々人に話しかけられて凄く嫌そうな顔をしていた。
本当にスイーツが好きなのね。でも話しかけられた時くらいは笑顔を見せなさいよ……。
「リティ、君の為の最高のパーティは楽しんでるかい?」
突如かけられたその声に振り返ると、そこにはお父様とお母様の姿があった。
偉い人達への挨拶が終わってようやく時間が回ってきたのだろう。娘のパーティなのに娘と一緒にいられないとは大変な世界だなと常々思う。
「お父様、お母様……!はい、勿論楽しんでいます」
「ふふ、よかったわ。イサベルちゃんにアーグレン君も楽しんでる?」
「はい、とても楽しいパーティです!流石リティシア様のお誕生日パーティですね」
「はい。楽しませて頂いております。リティシア公女様のお誕生日、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます」
イサベルが胸に手を当てて微笑み、アーグレンは軽く頭を下げる。
その様子を見たお母様は「皆楽しんでるみたいで良かったわ。リティ、貴女は人一倍楽しむのよ?なんてったって今日の主役は貴女なんだから。皆貴女のお誕生日をお祝いしてるのよ。」と笑った。
恐らく本気でお祝いしてくれているのは一部でしょうけどね……とは言わないでおく。
本気で祝ってくれる人がいるだけで私には勿体ないのだから。呑気に誕生日パーティなんて開ける今の状況に感謝すべきだわ。
「はい、分かっています。お母様に言われなくても既に十分楽しんでいますよ」
「嘘だぁ、リティ全然食べてないでしょ?ほら、王女様と伯爵令嬢に食べられちゃう前に貴女も食べなさいよ……ってあ、そろそろじゃない?」
「……そろそろとは?」
「そうよね、アーゼル。」
「あぁ、そろそろかな」
二人揃って何かを話し始めるので私は怪訝そうに眉を顰める。
思わずイサベルとアーグレンに視線を向けるが、彼らも私同様になんのことだか分からないらしく、不思議そうな顔をしていた。
「さぁリティ、盛大に驚きなさい」
お母様は不敵な笑みを浮かべた。
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