第1話:怪盗、予告する
1-①
「た、大変だー!!!……いて!!」
大きな声と、ドスンという何か重たいものが落ちたような音が、高級百貨店『大丸屋』の役員室から響いてきたのは、宝石展が開催される前日のことだった。
この宝石展というのは、毎年秋に開催されている大丸屋が力を入れているイベントの一つだが、特に今年はこれまでとは注目度が全く違っていた。
その理由というのが、これまで一切の表舞台に表れず、秘蔵の品とされてきた大丸屋の家宝『ブルーダイヤモンド』だ。この『ブルーダイヤモンド』というものは約5カラットで、大きさもさることながら、ほかのダイヤモンドにはない一つの特徴があった。
その特徴とは名前が示す通り、蒼く光るというものだった。だが、いつも蒼く光るというわけではなく、普段はこのダイヤモンドを光に当てると、通常のダイヤモンドのように綺麗に白く反射するのだが、なぜか月光に当てた時にだけぼんやりと蒼く光るのだ。
この珍しい特徴が非常に話題となっており、大丸屋には、マスコミ各社からなんとか放送が出来ないかと連日連夜にわたって取材の申し込みが大量に届いていた。
そんな中、取材の申込みに紛れて届いていた一通の犯行予告状をみて、大丸屋オーナーである大丸氏はあまりの驚きに仰け反りすぎ、ボールのような恰幅のよい身体は、ソファーから転げ落ちてしまっていた。
その犯行予告状には、次のように書かれていた。
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親愛なる大丸屋様
南瓜と仮装で街が溢れる夜
大丸屋屋上で開催されている宝石展より
家宝『ブルーダイヤモンド』を頂戴します
世界の怪盗クロウ
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