好きな人は別に

きみぽん

第1話 好きな人っていつから?

初同期の顔合わせ。彼がマスクを外した時、こんなにも想像通りの顔が出てくるなんて思ってなかったので軽く衝撃的な出会いだった。それと同時にこれから約2年半の付き合いになる事は確定したわけでうっかり好きにならないようにしようとも思ったのだった。この時点では恋に落ちていない。あくまでも物凄く好みのタイプで、しかも名前は初恋の人と同じ名前。なんだか再会したような気分だった。2020年は外出を自粛しようという1年だったのでそれから頻繁に会うわけでもなく実に緩やかに関わりを持ち続けていた。相手のことを知る機会もないので好きになるきっかけもなかった。

 2021年になると部活がちゃんと行われるようになり、そうすると毎週定期的な関わりが出来てくるわけで、相手の悪いところもいいところも出てくる。それと同時にたった5人の中でも仲良しが出てくるわけで、今回はたった2人しかいなかった女子同士の相性が合わないパターンだったので同期女子Kが仲良くなったのはイヌくんだった。2人の仲の良さを認識したのは初めて同期でドライブに出かけた時だった。気づいたらずっと並んで話している2人、この時初めてイヌくんと並んで歩きたいと思った。なんでずっと2人で話してるんだ、そこの席私に譲れと思った記憶がある。でもこの時それほど嫉妬しなかったのはKに彼氏がいたからだと思う。

 夏休みになってから事件は起きた。イヌくんの誕生日にKの運転練習のドライブに行ったらしい。2人でお昼を食べて、Kはイヌくんに誕生日プレゼントを買ってあげたらしい。その日私は部活をサボって北海道で遊んでいた。この日の私を恨む。本当は私が先に運転練習に付き合ってくれと頼まれていた。でも、北海道旅行を優先した。この旅行も楽しかったからいいのだけど。恋愛的には最悪の展開。知らない間に2人のラブストーリー始まってるんだもん。この話を旅行から帰ってきて聞いた時は目が点になった。イヌくん、Kのこと好きになっちゃったんじゃない??記念すべき20の誕生日に女の子にお祝いされて好きにならないわけがないだろう。私、物凄くイヌくんの誕生日お祝いしたかったんだった。誕生日プレゼントも渡したくて色々考えた挙句、1人だけにあげるのは怪しすぎると思ってやめたんだった、ってこの文書きながら思い出した。そう思うと随分前からイヌくんのこと好きなんだって改めて気づかされる。

 このドライブ事件以後生まれた私の悶々とした気持ちは今も時々私自身を苦しめる。夏休み最後一泊旅行をしたけどご飯を食べる時、いつもなぜか2人並んでしまう。間に割り込みたいけど割り込めないのは私の恋心を隠してるから。あまりにも2人がセットすぎて私最後イライラして帰ったもん。イライラの気持ちを全てドライブにぶつけて。このモヤモヤは収まらずドライブに誘うという行動に出てしまった。名目は高速ドライブの付き添い。友達を空港に迎えに行く約束をしてしまったのをいいことにイヌくんを誘ったのだった。これは自分でも今までで一番よくやったと思う。楽しかった。ますます好きになっちゃった。

 好きを自覚するほど気にしてしまうのはKとの関係。2人が仲良いもんだから本当に嫉妬して泣いてばかり。あんまり言いたくないけどKの距離感は本当に近い。Kはいわゆるモテるタイプで、自然と距離を詰めるのも上手いから本当に悔しい、というか歯が立たな過ぎて悲しい。秋は本当にイヌくんのことで泣いた。これを書いている冬でも泣いている。よかったのは秋学期あんまりイヌくんと会わなかったこと。あんまり片想いに悩まなくて済むから。でも反対にKとイヌくんの距離はどんどん縮まっていった。久しぶりに会った時、2人の仲の良さに、見せつけられたように感じて、泣いた。

 恋なんて小学生以来していないから、片想いの終わらせ方が分からない。諦めようとしても気づいたらもうちょっと頑張ってみようとか前向きになっちゃってまた現実突きつけられて。直近のドライブの時なんて当たり前のようにイヌくんの助手席にKは座っていて、部活の打ち上げの時、ずっとイヌくんを見ていたけどイヌくんがたまに違う方向を見る時、目線の先にはいつもKがいた。イヌくんはKのことが好きなんだと思う。Kもイヌくんのことなんとも思っていないとか言ってたけどなんでそんなに距離が近いのかな、心の奥では好きなんだろうな。私がイヌくんの隣に立つ隙なんてないじゃん、、

 今日もイヌくんのことを諦められないでいる。そういえば私イヌくんのために頑張ったことあったかな。まだ何もできてないんじゃないかな。春。春までにどうにも出来なかったら諦めよう。こんなこと思っている自分に呆れる。でもまだイヌくんのことが好き、好きでいさせてほしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る