1-6 魔導の限界こーえた!
「行くぞ」
いきなり少年が振り返って、彼女を小荷物のように片腕で抱き上げる。
「な、なにをするのですっ」
びっくりして、リリアンは彼の腕を振りほどきにかかった。
このように異性と密着するなんて
「やだ、離してくださいっ」
「黙れ、変態」
「わたしは変態ではございませんっ」
「女を横取りするんじゃねぇーーー!」
少年の魔法は大したことがないと判断したのだろう。
それをリリアンも見抜いていた。
詩は魔法を生み出す。
詩人は魔法を操る。
その詩を扱う魔法ジャンルを《詩人魔法》という。
リリアンは、そんな詩人魔法の全てを探求する学者であり
少年の
だから逃げるのである。
ようするに、彼は、弱い
「
「え?」
なにそれ、とリリアンは瞬きした。
上々の上々があるとすれば、フル
どんな魔法にも、限界というものが……あるはずだ。
「――の
少年の
魔弾の
修道士が虫けらみたいに地に落ちるのを見て、リリアンは言葉を失った。
ここまで自由奔放なグリモワールは、才能がなければ完成しない。
(……こんなの、誰が作ったの!)
驚いているリリアンを少年は抱え直し、軽々と道を駆けていく。
「お前、ここらの道を知っているか?」
「いいえ知りません」
「ったく、役立たずだな」
少年は一時も足を止めずに先を急ぐ。
昨日の雨で湿ったままの坂道を駆け上り、
「あの……、もしかしなくても、わたしを助けてくれたのですよね?」
リリアンは恐る恐る少年に尋ねた。
「しらねぇよ」
素っ気なく少年はいうけれど、言葉尻から感じられるニュアンスが温かい。
その温かさに、リリアンは注目してしまう。
……とても優しい感じがしたからだ。
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