見えるもの

バブみ道日丿宮組

お題:簡単な雲 制限時間:15分

見えるもの

「……」

 退屈な授業は空を眺めてるのが一番時間を潰せる。

「ーーさん。聞いていますか」

「聞いてますよ」

 窓の方向に頭が向けられてる以上、注目されるのはアタリマエのこと。

「きちんと前を向いて聞くように」

「はいはい」

 注意したというくくりつけをとってからは、何も言われなかった。

 授業態度が悪くても、試験で結果を出せば教師は強く出ない。

 お利口さんに産んでくれた親には感謝しかない。

 まぁ……親はただの主婦と、ただの平社員。私はその娘だけど。

「……」

 そういえば、雲を作れる機械っていうのが存在するらしい。

 やってみたいな。

 ドーナツとか、飛行機雲とか、チョウチョとか、いろいろ試してみたい。

 授業終了の鐘がなり、

「……んーー!」

 身体を伸ばす。

 休み時間はいつもの場所へ向かう。


 屋上。


 昼休みには結構な数の生徒がご飯を食べてるけれど、授業と授業の短い休み時間に来る人はほとんどいない。見えるのもただの畑と、住宅地で面白いところじゃない。

 休み時間といえば、たまにタバコを吸ってる人がいた。その時はお互い頷きあって不干渉を決め込んだ。

「……」

 空に興味を持ったのは、小学生の頃だった。

 父親に連れてこられたの自衛隊の基地。

 そこで飛行機を使った催し物を見たのがきっかけだ。

 空に浮かぶ様々な雲が印象的だった。

 あの空と今の空は同じもの。作り上げてるものが違うだけで、雲であっても同じものだ。

 そんな空を好きになってはいるものの、空に関わる仕事をしたいとは思わなかった。

 普通のどこにでもいる会社員。それで十分だった。

「……はぁ」

 一生のうちに、空気が美味しいところと、雲を作る機械を使う。

 それだけがほんわかした夢。

「……ん」

 ぼーとしてる間に鐘がなる。

 面倒くさいけれど、教室に戻らなきゃ。

 学生は学生らしい行動を。

 とにかくいえる身分ではないけれど、しっかり卒業はしないといけないだろうから。

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見えるもの バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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