第11話 岩人形

「俺も『岩人形ロックゴーレム』と戦うのは初めてでな。ちょっと戦って様子を見よう。次に挑むとしても、どういう対策が必要か分かってた方が準備もしやすいしな。それに、あいつは足が遅そうだ。危なそうだったら、逃げればいい。」


モララーは、まだ帰る気は無いようだった。


ここまでの道のりで戦う事には大分慣れて来ている。


僕は岩人形に向かい駆け出そうとした時、後ろから肩を掴まれた。


「待て。効くか分からんが、『閃光弾フラッシュボム』を使う。一瞬だけ眩しい光を放つ機械だ。マタタ文明の技術を真似して作った。合図したら目を瞑れよ。」


そう言って、モララーは黒い球を岩人形に向かって投げつけた。


「目を閉じろ!」


球が岩人形に届く直前で合図があり、目を閉じた。その瞬間、瞼の上からでも眩しく感じるほどの光が広がった。


目を開けると、先程までただ佇んでいるだけだった岩人形が、無造作に腕や足を振っている。どこに目があるのかは分からないが、閃光弾の効果があったようだ。


「効いてるようだな。あの大振りな攻撃程ならかいくぐって攻撃できるだろう。行ってこい。」


僕は今度こそ駆け出し、岩人形の前へ躍り出た。


岩人形の手を振り回す速度は、『屍犬ゾンビドッグ』ほど速くはなかった。身を躱しながら、ショートソードを、その岩の体に当てることができた。


しかし、剣先が少しだけ岩を削るが、中までダメージは通っていないようだ。


定期的にモララーが放つ銃撃音と、僕の剣が岩人形にぶつかる音が、坑道に鳴り響いている。


何度も何度も剣をぶつけるがほとんど効いていない。


閃光弾の効果が切れたのか、無造作に振るっていた腕も、正確に僕を狙うようになってきており、躱すのも難しくなってきた。そろそろ引き際では無いかと考えていた時、岩人形の胸元あたりの岩が弾け飛んだ。


モララーが『狙撃ポイントショット』で同じ所を狙い続け、岩の装甲を剥がしたのだ。


岩の内側は、土のような質感で、これなら剣が通るかもしれない。


「装甲が剥がれた所を狙っていけ。俺は更に装甲を剥がしていく。」


これでダメージを与えることができるようになった。しかし、何度切りつけても動きが鈍るような事はなく、場は膠着していた。


岩人形がたまに放つ、腕を限界まで伸ばした『なぎ払い』は、僕と後ろにいるモララーを巻き込んで吹き飛ばす。その度に『治癒ヒール』や『回復薬ポーション』で傷を癒しながら戦い続けた。


だが、着実に岩人形にダメージを蓄積できているのは間違いない。


魔力も回復薬も底をつきかけた頃に変化があった。


急に、岩人形の動きが止まったのだ。


そして岩人形はガラガラと音を立てながら崩れ落ち、瓦礫の山となった。

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