勇者に転生したら、既に魔王を討伐した後だった。

小説 書蔵

目覚め

「目覚めなさい、目覚めなさい。転生する資格を持つ者よ。」

う~ん、後5分だけ寝かしてくれ、今日は貴重な休日のはずだろう。

「目覚めなさい、目覚めな…おい、起きろ!ゴラァ!!!」

「はいっ、すみませんっ!!!」

お淑やかな声がいきなりドスの効いた声に変り、慌てて目を覚まして正座する。

そこには青色の美しい髪にでかい胸、頭の上に輪っか、背中には羽の生えた絶世の美女が立っていた。

「ど、どちら様でしょうか。」

そう問いかける俺に

「コホン、私は生を司る女神シュテル。そして、ここは死後の世界。」

めがみ?めがみってあの女神?てか、死後の世界?俺死んだの?

「その女神です。では、落ち着いてお聞きなさい。」

その言葉にゴクリと唾を飲み込む。もしかして俺、女神に怒られるようなことを知らずにしてしまったのか?このまま、地獄に突き落とされるのだろうか。

「昨日貴方はロードローラーに潰されて死んでしまったのです。」

「えっ、そんなこと現実にあるんですか?うそでしょ、漫画じゃあるまいし。」

意味が分からなすぎて逆に冷静になる。

「私も驚いてます。そんな有り得ない死に方をする人が実在するなんて。」

そう言われても、あんまり死んだ時のことを覚えていない。てか、本当に死んだの、俺?

「そもそも何で俺、ロードローラーに潰されたんですか?」

聞きたいことは山ほどあるが、とりあえず一番気になった質問をした。そんな俺の問いに女神は

「この資料によると、貴方はせっかくの休日をいつもなら無駄な時間を過ごしていましたが、その日は珍しく外に買い物に行ったようですね。その際、なぜか上から落ちてきたロードローラーに潰されそうになった子供をかばって死んだようです。」

「…資料とかあるんですね。」

「ええ、女神も大変なんですよ。書類の整理をしたり、新しい女神の人材育成をしたり。」

ブツブツと女神が文句を言い始めたので、俺は話を切り替える。

「ところで、最初に“転生する資格を持つ者よ”って言ってませんでした?」

「えっ、あっ、はい。貴方は自分の身を挺して子供をかばいました。その行動に敬意を表して、貴方に異世界転生する資格を与えましょう。」

まじか、生きていたころに夢みてた異世界転生ってやつじゃないか。

「マジっすか、あざ~す。」

「馴れ馴れしい、不敬です。地獄に落としますよ?」

「申し訳ございませんでした。」

速攻土下座した。なにこの人、本当に女神なの?超怖いんですけど

「それで、貴方は何に転生したいですか?虫ですか?ゴブリンですか?何でもいいですよ?」

「なんでそんな人間以下っぽい奴らを提案したんですか?」

まぁ、いいか。何でもいいのなら願いは一つ!

「俺を勇者にしてください!!!女神様!!!」

そう言う俺に、女神様は心底つまらなそうに

「はぁ、おもんな。まぁ、いいでしょう。貴方を勇者に転生させます。では、良き転生ライフを。」

「いちいち毒はかないと喋れないのかよ。」

そう言い残し、俺の体は光に包まれた。

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