157話 【第二ラウンド:議論フェイズ】②
(しばし、スクリーン上では暗転が続いた後、唐突にシーンが再開する)
薄雲「ふぐーっ。ふぐぐーっ。け、穢された感……っ」
呉羽「なーにを今さら。饅頭晒すくらい」
ああああ「ずいぶんとふかふかしていたなぁ」
グレモリー「…………よくかんがえたら私、他の人の、見たことない。……あれが普通なの?」
(それからしばし、間を置いた後)
狂太郎「ええと……結局、どうだったんだ?」
ああああ「うーん。五分五分ってとこ? 履けなくもないけど。……必要ない、と言えなくもないというか……っていうか私たちって、なんでパンツとか履くんだっけ? パンツの存在意義とは……?」
狂太郎「結局、何の成果もなかったってオチでいいのか」
ああああ「そーなるねー。でも、……やや……怪しめ、かな?」
狂太郎「体毛、濃いめってことか」
薄雲「言わにゃいで!」
狂太郎「……ごほん。まあ、これがもし、盗品だとしても、――事件とは関係ない気もするし。追求はここまででいいか」
ああああ「そだねー」
薄雲「公衆の面前で露出させられた意味、にゃ!?」
狂太郎「話題を変えよう」
(狂太郎、先ほどテーブルに並べた証拠品の中から、革製の袋を取りだし、)
狂太郎「これは《においぶくろ》と言って、魔族を惹きつける効果があるらしい。なあグレモリー。――この”マジック・アイテム”、違法のものだと聞いたぞ。コレに関して、何か言い訳はあるかい」
グレモリー「何それ。私それ、知らない」
狂太郎「これについても、知らないのか」
グレモリー「……うん。まったく記憶にないわ」
狂太郎「ほんとぉ?」
グレモリー「疑われても仕方ないけれど、ないものは、ない」
狂太郎「ふーむ。それ言われると、なんとも言い返せんな」
グレモリー「……なによ。なんか文句ある?」
狂太郎「いいや? なにも」
(グレモリー、憎々しげに何か、ぶつぶつと呟く)
狂太郎「ぼくからはもう、他に気になるような証拠品はない」
ああああ「おっけ。そんじゃ、次に情報ある人、いる?」
万葉「……………そうだねえ。なあ、狂太郎。
狂太郎「ん? ぼく?」
万葉「そうだ」
ああああ「おや? ひょっとして二人は、らぶらぶなのかしら?」
万葉「餓鬼の様な事を言うんじゃ無いよ。仕方ないだろ。今の処一番、犯人から遠いのが、此の男なんだから」
狂太郎「いやあ。照れるなぁ」
万葉「褒めちゃいない。――さっさと行くよ」
狂太郎「うーっす。よろしくお願いします」
▼
(二人は再び、一号室へ向かう)
(この流れで、他の四人もそれぞれ密談を試す流れとなり、ああああは呉羽と、薄雲はグレモリーと、それぞれ2号室、3号室へ向かう)
(カメラは、狂太郎の様子を追いかける)
狂太郎「さて。それじゃ、前回の話の続き、しようか」
万葉「うん。――ええと、何処まで話したっけ?」
狂太郎「我々の目的を確認し合ったところまで、だ。――犯人を見つけ出し、”終末因子”を捕縛する。協力関係を申し出たのは、そっちが先のはずだぞ」
万葉「ああ、
狂太郎「おいおい、怪しいな。……本当はぼくを騙してるんじゃないだろうな?」
万葉「違うよ。こんな突飛な嘘、トツゼン思いつく訳が無いだろ」
狂太郎「まあ、それはそうだが」
万葉「其れより、――そっちの調子は
狂太郎「今のところ、なし。さっきみんなに話した情報が全てだ」
万葉「何だい。頼りにならないねェ。其れじゃ、呼び出した甲斐が無いじゃないか」
狂太郎「すまん。だが、手持ちの証拠を公開する約束は果たしただろ」
万葉「……むぅ」
狂太郎「それより、そっちこそどうなんだ? あんまり出し惜しみしているようだと、いよいよクロく見えてくるぞ。せっかくの協力関係なんだ。情報共有しようぜ」
万葉「然うしたいのは山々だけど。ぶっちゃけこっちも、途方に暮れてるってとこかしら。犯人はわからんし、”終末因子”の所在もわからんしで」
狂太郎「ん? 犯人と”終末因子”は同一人物ではないのか?」
万葉「違うだろ、如何考えても。木っ端人殺し風情が、世界に大きな影響を与えるとは思えない。貴男も”救世主”なら、何となく分かるだろ」
狂太郎「そりゃそうだが、……だとすると、かなり話がややこしくなりそうだな」
万葉「……犯人だけなら、目星がつきそうなのかい?」
狂太郎「そうだなあ。一応、
万葉「誰?」
狂太郎「……まず、グレモリー。次点で呉羽だ」
万葉「ふむ。何で?」
狂太郎「グレモリーのやつ、さっきの議論で、『記憶にない』と言ってたろ。それってわりと、犯人が使いがちな台詞……だと、ぼくのアドバイザーが言っていたからね」
万葉「只『記憶にない』だけなら、犯人かどうかはわからんよ。――呉羽の方は?」
狂太郎「それは……その。なんとなく」
万葉「なんとなく? 貴男、なんとなくで人を疑うのか」
(狂太郎、首元についたキスマークをぽりぽり掻いて、)
狂太郎「いや。ちょっとさっき、一悶着あってな。その関係で、彼女が怪しく思えている」
万葉「ふうん。……其れなら、妾が保障しておいてあげよう。――呉羽はきっと、犯人じゃない」
狂太郎「? なんでそう思う」
万葉「ふっふっふ。一寸、ね。妾には、秘密の業が在るのさ」
狂太郎「秘密の業、――それって、……その……」
万葉「妾自身が持ってるスキルさね。貴男がさっき見せた、――《すばやさ》と、本質的には同じモノだ」
狂太郎「……………………ふむ。それって、具体的には?」
万葉「おしえなぁい」
狂太郎「いいじゃないかそれくらい。教えてくれたって」
万葉「まあまあ。其の内、ね。いずれにせよお互い、何らかの秘密は抱えてる。そーだろ?」
狂太郎「ぼくの方は別に、何もないぜ」
万葉「どーだか」
(狂太郎、苦虫を噛みつぶしたような顔で、万葉を睨み付ける)
狂太郎「……まあ、それなら、ごちゃごちゃ言っても仕方ない。――他に何か、話せる情報はないか」
万葉「ある。……一個だけ。でも、小さい奴だよ」
狂太郎「構わない。なんだ?」
万葉「此れは、さっきグレモリーから聞いた情報だ。あの娘、念のためもう一回だけ、死体を捜査してみたんだってさ」
狂太郎「ほう。――それで?」
万葉「大した情報は出なかった」
狂太郎「……なんだそれ」
万葉「要するに、死体はもう出涸らしって事」
狂太郎「調べるだけ損をするってことか。……そういえばぼくも、さっき死体を調べようとしたら、村人に石を投げられただけに終わったな」
万葉「情報が一つ少ないのは、そういうことか」
狂太郎「まあね」
万葉「グレモリーの方は、一寸だけここの村人と話す機会が在ったらしい。……でも、事件の話をしたら、怒ってすぐ、何処か行っちゃったんだって」
狂太郎「何の話をしたんだ?」
万葉「さあ? ――ただ、サイモンのことを聞きだそうとしたら、『死んだのは、サイ・モンだ』って。それだけ」
狂太郎「サイ・モン?」
万葉「うん」
狂太郎「……”モン”の方が苗字だったのか」
万葉「如何だろ。”サイ”の方かも知れない」
狂太郎「っていうか、万葉。きみ、付き合いがあったのに、奴の本名も知らなかったのかい?」
万葉「………………別に、構わんだろ。仲間だからって、なんでもかんでも知ってると思ったら、大間違いだ」
狂太郎「えっ。そうかぁ?」
万葉「何れにせよ、ここは異世界だ。妙な名前の奴くらい、居るさ」
狂太郎「ふむ」
万葉「如何した? 何か気付いたかい」
狂太郎「いや、――特に、何も」
万葉「……………ちっ」
▼
(狂太郎と万葉が、会議に戻る)
(その頃には、一度密談に散らばっていた面々も戻っていて、それぞれテーブル上の証拠品を検分していた)
狂太郎「……いま、戻った。何か新しい情報は?」
ああああ「んー。いちおー、二つだけ。みんなが調べた、狂太郎くんの部屋の情報。《タバコ》と《小銭入れ》が出てきたよ」
狂太郎「そうか。……人気者だな、ぼくは」
ああああ「そういうことだねー。ハーレムじゃん」
狂太郎「はっはっは。ウケるわ」
ああああ「一応これ、どういうものか、説明してもらえるかな?」
狂太郎「《たばこ》は一服用、《小銭入れ》は帰りのジュース代が入っている」
ああああ「ふーん。……嘘は、吐いてないっぽい?」
狂太郎「もちろんだ。ぼくはごくごく普通の、”異世界人”だからね」
ああああ「普通の異世界人、ねえ。――おっけ。わかった。でも、ここまで調べて、何にもないとなると……ホントに狂太郎くん、事件と関係ないのかも」
狂太郎「と、いうか、他の連中の調査が進んでないのが怖い。みんな、無駄なところを調べすぎだ」
ああああ「そうだね。――でも……」
(と、その時である。
時計の鐘が再び、ごうん、ごうん、と鳴り響く。
どうやら、時刻は十時を回ったところらしい。
第二ラウンドの議論時間が終了する)
(GMの案内により、それぞれみんな、休憩時間を取ることになる。
なお、休憩中は前回同様、ゲームに関する話題は禁止。
休憩中でも、プレイヤーのあらゆる行動は監視されている。
ゲームに関する話題を口にした場合、即座に-1点になる、とのこと)
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